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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。3  作者: こーの新


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21/52


 着々と素材採取をしながら、ジェマたちはソルトの街へ向かう途中にある合宿所に到着した。



「こんにちは。少しこちらで滞在させていただきます。それから、こちらに馬車が届いていると思うのですが」



 シヴァリーが余所行きの笑顔で合宿所に常駐している騎士に声をかけました。その騎士は訝し気にシヴァリーを見て、淡々と業務をこなしていった。



「馬車はそこの倉庫。宿泊は?」


「いえ、少し休んだらソルトに向かいます」


「そうか。ボアレットを出てから休まずに来たと聞いたから休んでいくかと思ったのだが」



 その騎士はそう言うとシヴァリーの後ろにいるジェマとメンカルを見て変な顔をした。



「そっちは、連れの人?」


「はい。こちらは私たちの護衛対象の方と、その連れの方です」


「そうか」



 シヴァリーはジェマの警護任務については話さなかった。騎士同士の情報戦だ。身内同士で争って何になる、なんて綺麗事だが、ジャスパーはじっとりと視線を向けざるを得なかった。



「それと、魔物の解体がしたいのですが、部屋を借りられますか?」


「ああ、馬車を置いてある倉庫なら構わない」


「分かりました。お借りします」



 シヴァリーは第8小隊の面々の方に身体を向けた瞬間にげんなりした顔をしていた。第8小隊の騎士たちは吹き出しそうになるのを堪える。そして全員で倉庫に向かった。


 倉庫には馬車が置かれ、すぐ傍の厩には馬車を引いていた馬たちが繋がれていた。ナンが馬たちの様子を確認し、カポックが馬に何か魔道具が付けられていないか確認する。合宿所の騎士たちが情報収集のために何かしていないとも限らないからだ。



「問題ありませんでした」


「そうか。ありがとな」



 シヴァリーはホッと息を吐くと、ジェマとメンカルを見る。



「馬車を少しずらすから、空いたスペースで解体作業をしてくれ」


「ありがとうございます」



 騎士たちが馬車をずらして、スペースを空ける。そしてキャメルスに積み込んでいた荷物を馬車に積み直す。


 一方のジェマとメンカルは【次元袋】から素材を取り出して解体を始めた。あまり量はないものの、ジェマは必要なものを必要なだけ採取していた。



「まとめて見ると凄いな。1日でこんなに採取するなんて」


「遠慮した方ですよ?」



 ジェマはシヴァリーの言葉に首を傾げた。そのやりとりを見ていたメンカルは顔を引き攣らせた。それを見ていたハナナは、ほうっと息を吐いた。



「そうですよね、すっかり慣れていましたけど、普通はこう反応するんですよね」



 ハナナの言葉にシヴァリーは苦笑いした。ジェマは不思議そうに目をぱちくりする。



「自覚していないのが良いことなのか、どうなのか」



 ジャスパーが呟くと、ジェットはくりんっと首を傾げた。シヴァリーはそれを見て小さく笑う。



「ジェマ、解体が終わったらすぐに出発しても大丈夫か?」


「私は大丈夫ですけど、皆さんは?」



 陽射しを避けて夕方に出発した一行。昼前にここに到着するまで、騎士たちは警戒態勢を崩さなかった。休憩もたった1度。



「大丈夫だ。うちの小隊にそんな軟なやつはいない。それに、移動しながら交代で休むこともできる。だから安心しろ」


「でも」



 ジェマは躊躇う。けれどシヴァリーは妹を諭す兄のように優しく微笑んだ。



「大丈夫だ。ジェマが存分に街で時間を過ごすことができるように、私たちは協力したいんだ。ついてきたからには、ジェマの邪魔にはなりたくないからな」



 シヴァリーの言葉に、積み替えの作業をしていた騎士たちが顔を上げて頷く。


 ここまで、旅程には遅れが出ていた。オレゴスの街で想定外に長居をしたからだ。このままのんびり行けば、3週間を予定していた旅が終わらない。そうなれば〈チェリッシュ〉の開店にも影響してしまう。


 ジェマがジャスパーとジェットと1人と1柱と1匹で旅をしていれば、移動の時間はさらに短縮されていた。人数がいれば、それだけそれぞれの動きに時間が掛かるのは当然のことだった。合宿所への立ち寄りや荷物の積み替えもその1つ。それにいくら精鋭揃いの第8小隊といえど、規格外のジェマの動きについていくことは難しい。


 シヴァリーたち騎士は、ジェマの旅の足枷になってることを理解していた。それでも第2王子の命令は絶対だ。シヴァリーたちが任務を放棄することはできない。それならば最大限、ジェマの支えになることを全員が心に誓っていた。



「ジェマは私たちに遠慮する必要はない。私たちは得意分野であるはずの戦闘ですらあまり役に立っていないんだ。これくらいのことはさせてくれ」



 申し訳なさそうに眉を下げたシヴァリーに、ジェマはぶんぶんと首を横に振った。



「そんなことありません! 私だって助けられているんです。街の方と話したり、情報を集めたり。それに出会いも。私たちだけで旅をしていたら得られなかったものがたくさんあります。お店を長く閉めてしまったとしても、それを超えるくらいの収穫があります。だから、そんなに卑下しないでください」



 ジェマも眉を下げて言うと、シヴァリーはくしゃりと笑みを浮かべた。



「ジェマが、そう言ってくれるなら。ありがとな、ジェマ」


「こちらこそ、ありがとうございます」



 ジェマとシヴァリーは改めて握手を交わした。二人の姿を見ていた騎士たちは、互いに肩を叩き合った。



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