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第6話 ちゃんとした初配信、そして本当の私

 テーゼとお父様は、まだ帰ってこないはず。

特にテーゼ。

あの子にスマホが見つかったら、また面倒くさいことになる。

邪魔者がいない今こそ、配信するにはもってこいのタイミングじゃないの。

私は早速、ポシェットからスマホを手にし「 B 」のマークを押す。


「えーっと…確か……」


私は彼から教わったことを思い出し打ち込み始める。

ほぼ聞いていないと思ったが、意外と耳に入っているもので

ゆっくりではあったものの、全て入力することが出来た。


「そして…丸いボタンが配信スタートだったわよね……?」



誰に聞くでもなく声に出し、深呼吸して配信ボタンを押す。

少しすると入室の数字が1に増え、すぐに2に増える。


「あら、いらっしゃいませ。どうも皆さま、ビビアンですわ。

先ほどは、わたくしの初配信に来てくださりありがとうございました」


初配信はお礼も言えずにすぐに切ってしまったので丁寧にお礼を言う


(どもー、初見です。うっわ!かわいっ!)

(こんにちは、はじめまして。ドレスが素敵ですね)


褒められたことは嬉しかったが

それよりも私は、はじめまして、という言葉に疑問を抱く。


「あら、先ほどの方たちとは違うのかしら?」


もしかしたら、必ず同じ人が来るわけではないのかもしれない。


「もう一人の方は『初見様』って、お名前、ですの?」


私は何もわからずそう聞く。


(ん?俺は初めてここに来たよ?)

(初見っていうのはね?初めて見に来た人のことを言うんだよ)


「そうなんですのね。教えていただきありがとうございます」


私の聞いたことにちゃんと答えてくれたことを喜んだ。

令嬢として『知ってて当然』という世界で生きてきた私にとっては

嬉しいことだった。


(全然慣れてなさそうだね。配信のことあまり詳しくないのかな?)

(コメントの一番最初のとこに書いてるのがあたしの名前だからそれで覚えるといいよー)


まだまだ何も知らない私に丁寧に教えてくれる。

優しい方たちですわ。


(それと、せっかく可愛いのにスマホを手で持ってたら綺麗に映らないよ?)

(そうね。どこかに置いたりしてやったほうがいいかも)


確かにそうだわ。

手に持ったままだと疲れてしまってずっとお話できないし、

私が何かするたびに顔が動いて上手く映らない。


「ご親切にありがとうございます。配信というモノは初めてでよくわかりませんの」


こんな話をしているうちにいつの間にか入室数が5になっていた。


(ん?なになに?天然ちゃん?)

(なんかお姫様的なコス?)

(髪型とかドレスとか本物のお姫様みたーい)

(いやどう見てもコスプレだろw)

(お姫様の演技してる役者志望とか?w)


「あの、お姫様ではございませんわ。

わたくしは、ロッソ伯爵の娘、ビビアン・ロッソです」


(は?この子大丈夫?)

(演技の練習かな?なりきってるねぇw)

(ウケるww)

(ビビアンお嬢様って?w)

(ワロタンゴwwww)


なんだか信じてもらえてないようですわね。

なぜかしら?

それにしてもなかなか置けませんわね。


分厚い本を三冊重ねて、そこにスマホを立て掛けようとしたが滑って上手くいかない。

その状態でさらにカメラにちょうどよく顔が収まる距離や角度を探すのは、

やってみるととてつもなく難しい。

そうして何度もスマホを机にパタパタ倒していると、見ている人からアドバイスが届いた。


(前にも何か置くといいよ)

(マジで何も知らないなんて、本当にお嬢様なんだなw)


そのアドバイスをもとに

前にも本を置く形で、なんとかスマホを立て掛けることが出来た。


「これで、いかがかしら?」


(ちょっと部屋が暗いかなぁ)

(カーテンが閉まっているんじゃない?開けたら?)


配信のことで頭がいっぱいになりすぎて

着替えた時にマリアがカーテンを閉めていたのをすっかり忘れていた。


「あら、そうだったわ。ごめんなさい、今開けますわ」


私はカーテンを開けるために窓へと向かう。


(これで外がコンクリートジャングルだったら笑うわww)


というコメントを横目で見る。

こんくりぃとって何かしら?

そんなことを考えながらカーテンに手をかけ、

ゆっくりとカーテンを開けた。


窓から光が飛び込み

部屋にある本棚や鏡台、

天蓋付きのベッドからシャンデリアまで

綺麗に画面に映り込む。


(おおぉーーーーーーー!!!)

(ほんまもんのお嬢様みたいや)

(ロココ調のインテリア!超豪華!)

(いや、どこかの高級ホテルの高層階かもしれない!)

(確かに!!ホテルの可能性はあり!外、外の景色見せて!)

(そうだ!窓の外見せろよ。電柱映ってたら笑ってやる)


窓の外?彼もそうでしたが、

異世界の方は変なところが気になるんですわね。

窓の外なんて何も面白いとこなんてないのに。

などと考えつつ


「スマホを持って窓まで移動すればいいんですの?

それでよろしいかしら?」


と確認を入れる。


(よろしい、よろしいw)

(うむ、苦しゅうないw)


私の部屋から見える景色なんて中庭だけですが、問題ないわよね。

立て掛けていたスマホを手に取り窓辺に持って行く。

ゆっくりと庭の端から端まで見えるように、

カメラを動かすとそこには、

中心のガゼボを飾るようにバラが咲き誇る

庭師によって美しく手入れされ整った様相の

庭が映し出される。


庭の向こうには緑の田園風景、近くの町の小さな教会。

その奥の山脈を越えたところには霊峰ヘブンズ・ドアがそびえている。


(ちょ!?何これ…見たことない景色…もしかして……本当に異世界?)

(まさか!?本当に異世界だとしたら、どうしてスマホ持ってるん?)


コメントにある異世界という言葉を見て

彼のことを思い出す。


「あら、そういえば異世界って、彼も言ってたわね」


(彼?)

(もしかしてお嬢様のいる世界に、その彼が転生か転移してきたってこと?)


「彼のお話を聞くと転移ということみたいですわね。

それと、お嬢様じゃなくて、ビビアンと呼んでくださいな。

せっかく出会ったんですもの皆さまにはそう呼んでいただきたいわ。

ちなみにわたくしから、あなたたちのことは何てお呼びすればいいのかしら?」


お嬢様、令嬢、そんな堅苦しい呼び方ではなく

ここでは私もただの『ビビアン』でいたい。

今までのように窮屈で苦しい日常から逃げるように、私は思い切って伝える。


(異世界って驚きの話題から、いきなり呼び方の話題ww)

(入室した時にも言ったけど、あたしたちの名前はコメントの一番最初のとこに書いてあるよ)


しかし、そう教えてもらったが、聞いたことのない単語は読みづらく

つっかえて上手く読めなかった。


お読みいただきありがとうございます。


「面白いなっ」


「このあとが気になる」


と思いましたら、ブックマークか

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どうぞよろしくお願いいたします。

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