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ツンデレ伯爵令嬢、転移してきた彼から奪い取ったスマホでライブ配信したらバズりました  作者: white
第3章 転移してきたツンデレ令嬢は、学校でも敵わない最推し様
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第51話  シンデレラ姫、そして狩野回収

「さっきは、ありがとな」


俺は素直にお礼を口にする。


「当然のことをしただけですわ。

 それよりも……本当はわたくしを怒りたいのではありませんか?」


ビビアンはこちらを

不安そうに見つめてくる。


「まぁ……探している間はそうだった。

でも、ロッソ伯爵に似たヴァンパイアのボス……

ボスパイアを見たら、その気持ちは失せたよ」


恥ずかしいような嬉しいような

そんな感情が湧き上がり、

はにかんだような笑顔をビビアンに向けた。


「それはなぜですの?」


ビビアンは不思議そうな顔で俺を見つめてくる。


「ロッソ伯爵が……君と俺を会わせてくれたような気がしたんだ」


そんなはずはない。

そんなこと俺にもわかってる。

でも、そんな風に感じてしまったのだ。


「そんなわけ……相変わらずおバカさんですわね」


ビビアンはどこか泣きそうな笑顔を見せる。


「ボスパイアには会えたのか?」


一応、確認のために聞いてみた。


「えぇ、でも別人でしたわ」


そりゃそうだよな。

伯爵までこっちに来ているはずがない。

ビビアンも当然わかっていたはずだが

確認せずにはいられなかったのだろう。


「そうか、残念だったな。

あ、これ落ちてたぞ。

お前のローファーだろ」


俺はリュックから、ビビアンの靴を取り出した。


「あら、ありがとう。

お昼前だったかしら?

乱暴な殿方にキックした時に、どこかへ飛んで行ってしまいましたの」


彼女はふふふっと笑みをこぼす。


「知ってる」


俺からの意外な返事に

ビビアンは一瞬なぜ?という顔をしたが、

黙ってドレスの裾を少し上げ、靴下だけのつま先を俺の前に突き出した。


「ん」


これは……俺に履かせろってことか?

靴ぐらい自分で履けるだろ。

俺はあからさまに嫌な表情をする。


「ん」


それでもビビアンは足を突き出す。


「はぁ~……」


俺はおおきな溜め息を吐きながら

跪いてビビアンの足に靴を履かせた。


「カボチャの馬車までは用意できないからな」


おっと、カボチャの馬車を用意するのは魔法使いだったな。

まぁここら辺はワンセットってことで。

ん?何だかビビアンの顔がほんのり赤い気が……


と、そこにタイミング良くボスパイアがやってきた。


「おや、シンデレラ姫。

王子様がお迎えに来たのですね」


ニコニコと笑いながら俺たちを交互に見てくる。

こりゃ、一部始終見られてたな。

俺が苦笑いを浮かべていると、


「この子が転んでケガをしたと救護室に来たところに

たまたま居合わせてね。

私の熱烈なファンだと言って、ダンスを完璧に踊って見せるから

思い出作りとして特別に参加させたんだ。

一日限りでも、こんなこと今までしなかったんだが、

彼女を見ていたらなんだか気に入ってしまってね」


と笑いながら事情を説明してくれるボスパイア。


「あ、ありがとうございます」


お礼の言葉と共に俺たちは頭を下げる。


「さぁ、王子様が迎えに来たのだから、

制服に着替えて彼と一緒に行くといい。

早くしないと零時の鐘が鳴って魔法が解けてしまうかもしれないよ?」


イタズラっぽく笑うボスパイアに

ビビアンは泣きそうな顔で


「お父様、感謝しております」


と伝え、再び頭を下げている。


いやいやいや、違う、違う。

ボスパイアはロッソ伯爵と違うからな?

何ならこっちの方がイケオジだぞ?


俺はチラッとボスパイアの顔色を窺う

笑顔で頭を傾げている。

この人はいつまでも笑顔な人だな。


 その後、ヴァンパイアたちに見送られた俺たちは、

猿橋に電話を入れて、ビビアンの無事を伝えた。

園内には修学旅行生の姿はすでになく、一般客のカップルが目立つ時間になった。


周りの雰囲気に気まずくなりながら、俺は歩を早める。

そんな思いを知ってか知らずか、ビビアンがそっと身体を寄り添わせてきた。


ドキッとしながら俺はさらに歩を早める。

ビビアンは、ほぼ小走りのようになっている俺に

必死に追いついてきて、またすっと寄り添う。

そして俺はさらに歩を早める。

こんなことを繰り返していると


「ちょっと!

歩くのが早いですわ。

足を怪我してるんですから、もっとゆっくり歩いてくださる?」


ビビアンがとうとう耐え切れなくなったようで

俺を追い越し、前に立ちはだかったかと思うと、腰に手を当て怒り始める。


足を怪我?

ボスパイアが、救護室で会ったとか言うから心配したら、

転んで少し擦り傷が出来たくらいだったじゃないか。

それに今……追い越すために走ったよな?


「それなら俺だって、殴られ踏まれて、大変だったんだぞ?」


俺は手当てしてもらった頬をさすって見せる。


「だったら、お互いに支え合いましょう?」


彼女はそう言って、腕を組んできた。

振りほどこうかとも考えたが

あまりの嬉しそうな笑顔を見て

そのままにすることにした。


まぁ、集合時間はとっくに過ぎて

学校の奴らはもういないだろうからいいか……今日くらいはな。

と思いつつも、念のため周囲を確認する。


「あ……」


いたよ、いやがったよ。


 俺の視線の先には見覚えのあるハンバーガーショップ。

そこには、愛されるべき変態・ストー狩野がいた。


まさか本当に、俺の言葉を真に受けて、

ビビアンに会えるかもしれないと、ずっとここで待ってるなんて。


「ビビアン、悪いんだけどさ、

この店の中に、俺らの学校の生徒がいるんだけど、

お前の限界オタクだから、ちょっと声かけてきてやってくれないか?」


俺は申し訳なさから、ビビアンに頼んでみる。


「まぁ、わたくしの?

 お話をするくらいなら大丈夫ですわよ?」


ありがたい。

むしろビビアンが行かないと、何があっても動かなさそうだからな。


「タイムリミットは五分で頼む」


猿橋に連絡をしている手前、そんなに時間はかけられない。

これが限界の時間だろう。


ビビアンが店に入り、狩野の席に歩いて行く姿を俺は店の外で見守った。

何か話し始めたが、盗み聞きするつもりはない。

まぁ五分だけだしな。大丈夫大丈夫。


ん?

でもよく考えたら、もう集合時間が過ぎてるのに

誰からも声をかけられず、ビビアンが来ると思ってここにいるのは……

いや…やめよう……

これ以上は、アイツが惨めすぎる……


スマホを取り出し、時計を見ながら五分経過するのを待った。

その五分は俺にとってとても長いものに感じた。


五分経つと同時に、俺も店の中に入っていき声をかける。


「はーい、お時間です。

ビビアン、狩野、行くぞ」


すると狩野が顔を真っ赤にしながら


「え?何で茂木までここにいるの?」


恥ずかしそうにしながらも

狩野は不思議そうにしている。


「さっさと集合場所に行かないと竜崎に殺されるぞ、お前」


俺は事情を先生たちに話しているが、狩野は全く意味の分からない理由だからな。

顔を真っ青にしている狩野を引き連れ、ハンバーガーショップを出る。


まぁ、相手はあの竜崎だ、俺たちもどうせ何か言われるんだろうけどな。

すんなり行くはずがないと思いつつ、集合場所の入退場ゲートへと急いだ。


お読みいただきありがとうございます。


「面白いなっ」


「このあとが気になる」


と思いましたら、ブックマークか

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どうぞよろしくお願いいたします。

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