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第4話 冷たい態度、そして動かされ続ける心

「ったく、いきなり配信するなよ。

押すなよって言っただろ。

俺の話ちゃんと聞いてた?

聞いてなかっただろ?」


大きく溜め息を吐きながら

彼は私の方を睨む。


「聞いていましたわ。

……大体は」


そんなに怒らないでほしいですわ。

確かに好奇心に負けて話も聞いてないのに衝動的に動いたのは悪かったですが、

こんなに心動かされるモノなんて初めてなんですから

もう少し大目に見てくださっても……


彼がいた国では、これが普通なんですの?

ここら辺ではありえない服装と技術ですものね。

違いがあって当然なんでしょうけど。


……まぁ配信を教えてくれた時の近さは幸せでしたので辛くはないですが。


「ごめんなさい。

スマホに夢中で聞いていませんでしたわ。

お詫びに、夕食後にデザートを追加させます。

先ほどはプディングを付けましたわね。フルーツタルトがいいかしら?

あっ、そうだわ。

セバスチャン、今日のお父様のデザートは何?」


「ティラミスでございます」


彼は生唾を飲み、一呼吸おいて言った。


「配信するなら、俺がいないところでしてくれ。

俺は顔出しも声出しもNGだからな。

やるならおひとりでどうぞ」


ずいぶんと冷たい言い方をなさるのね。

一緒に配信したい!とまでは言いませんが、

もう少し慣れるまで付き添ってくれるとか、

「俺は配信には参加しないからね?」くらい優しい言い方は出来ないんでしょうか。


ここまで冷たい態度をとるのは、自分がいた国とは明らかに違うところに来て、

戸惑い、周りに合わせられていないからかもしれないですが。


「ここは、あなたのいた国とは違いますわ」


私は思わず口にしていた、冷たい態度が自分で感じてる以上に悲しかったのだと思う。

すると、彼の口から聞こえてきたのは


「国?国どころか世界が違う。

なぜか突然この異世界に転移してしまったんだ」


という言葉。

私は驚かなかった。

うすうす気付いてはいた。


神秘的な雰囲気も

不思議な服装も

そして…なぜか惹かれるこの気持ちも

今まで、この世界で感じたことのない特別なモノだったから。


「そうでしたのね…。

でも、あなたから見たら異世界ですが、わたくしにとってはここが現実世界ですの。

お互いの認識や考え方なんて、なおさら違いますわね。

そうだわ!

せっかく来たんですもの、お互いの世界の情報交換をいたしません?」


それを知ることで何かが変わるかもしれない。

そう思い提案してみる。


「それはいいな。俺にこの世界のことを教えてくれ」


彼は私の話に乗ってきた。


「まず、ここはロッソ領で、わたくしのお父様が治める領地。

お父様は成金で……」


とりあえず、ここら一帯の話を始める。


「いや、そういう情報じゃなくてだな」


彼に言われて、私はぴたりと話を止めた。


「異世界に来たからには、冒険者になって成り上りたいじゃん。

転移して才能が開花してモンスター退治で俺TUEEEなんて王道だからな。

もしかしたら勇者になれるかもしれない。

ってことで、ギルドとか?モンスターはいるか?とか

そういう情報が知りたい」


転移したら俺杖ー?杖で勇者?

先ほど頭をぶつけた時おかしくなったのかしら?


「よくわかりませんが、とりあえずは両方ともございますわ」


彼は、ギルドがあると知った瞬間に、目を輝かせて言った。


「今すぐギルドに連れて行ってくれ!」


そのキラキラした瞳は子供の様で

私は目が離せないくらい吸い込まれそうになった。


それにしても転移してきた人って、そんなことがしたいのですか?

意外だわ、伯爵令嬢に拾われたんですもの、

もっと欲にまみれたようなことを言うかと思っていた。


それがギルド?モンスター?

そんなものに興味があるんですのね。

彼は私が今まで関わってきた汚い人たちとは

やはり違うんですのね。


「連れて行くのはいいですが、

わたくしは、配信がしたいのでこのスマホは預かりますわ」


「勝手にどうぞ。そんなことより俺は冒険者になるんだ!」


勝手にしていいらしい。

それなら、そうさせていただきます。


「セバスチャン、屋敷に着いたら私だけを馬車から降ろして、

彼をギルドに連れて行ってちょうだい。

 それと、この件はお父様には内緒にしておいてね」


殿方を拾って屋敷に住ませるとか

何を言われるかわかりませんもの。


「かしこまりました。

お嬢様、ひとつだけよろしいでしょうか?

侍女のマリアには伝えておく方がよろしいかと

許可をいただければわたしの口から伝えておきますが」


「そうね、マリアには知っておいてほしいわ

 お願いできるかしら」


セバスチャンという忠実な従者は、私をいつも守ってくれる。

彼とスマホの件もうまく取り繕ってくれるでしょう。


「かしこまりました」


セバスチャンからの返事を受け取り

私は彼に向き直る。


「ギルドへはこの者が案内します。

帰りもこの馬車で屋敷に帰ってくるように」


無事に話がまとまり

これで屋敷に戻ったら

誰にも邪魔されずに配信できる!と胸を躍らせていると。


「あの……」


彼のか細い声が聞こえる。

ようやくお礼を言う気になったのかしら?

そうよね。

ここまでしたんですもの。


「あら、お礼はよろしくってよ」


私は得意気に言い放った。


「じゃなくて、夕飯には間に合うんだろな?」


え、そこ?



お読みいただきありがとうございます。


「面白いなっ」


「このあとが気になる」


と思いましたら、ブックマークか

ページ下部の[☆☆☆☆☆]をタップして評価をしていただけると大変うれしいです。


どうぞよろしくお願いいたします。

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