第41話 人気者、そして隠し事
モブの最推し様であるビビアンは、同じ学校に入学してきました。
人気配信者であるビビアンとの関係を隠しつつ、うまく友人とやりとりするモブ。
そんな学校生活で、最大の思い出作りイベント修学旅行がやってきます。
ツンデレ伯爵令嬢の最終章の、はじまり、はじまり。
やったな母さん、弁当をビビアンのと間違えやがった。
弁当箱の大きさを見て、俺は愕然とした。
「なぁ、茂木。
君の弁当箱小さくね?
見ないうちにずいぶんと少食になったな。
ってか、弁当箱が花柄って趣味まで変わった?」
後ろから覗き込み
ニヤニヤしながら言う友人A、狩野。
俺の後ろをとるとはやるじゃないか。
「うるさい、母さんが間違えたんだ」
誰とは言わずそう答える。
まぁ狩野程度、あしらえない俺ではない。
「誰と?」
これであしらえないとはやるじゃないか。
お前も成長したんだな。
「……妹と」
しかし、貴様の記憶力は把握している。
俺の家族構成など覚えていないだろう。
架空の妹を召喚してターンエンドだ!
「君んち、弟じゃなかったけ?」
何でこういう時だけ覚えてるの?
そんなに俺のこと好きなの?
え?無理だよ?
「ごめんなさい」
素直に口から出てしまった。
「は?」
狩野は意味わからないと訴えるような
面白い顔で俺を見つめている。
「あ、いや、そうそう。
弟が花柄好きなんだ」
すまん、弟よ。
兄の学校生活での平穏を守るため、生贄になってくれ。
全ては母さんと狩野が悪いんだ。
「ま、男でもピンクとか、可愛いのが好きな人もいるしな。
好みは人それぞれだよな」
ふう、ようやく誤魔化せたか。
この友人Aの狩野は、俺の数少ない友達で、
他のグループにハブられて落ち込んでた時に、
初めて話しかけてくれたから俺になついていると本人は言っていた。
俺は先生からの伝言を伝えただけなんだが……
まぁ、悪いやつではないが、あまりダル絡みされると面倒くさくなってくる。
ちなみに『友人A』と言っているが、
俺に『友人B』がいるかは怪しいところだ。
「すっげ、ニンジンが花型に切ってある。
君の母さん器用だな。
タコさんウインナーとか久々に見たよ。」
勝手に蓋を開け、中身をジロジロと見る狩野A。
狩野A?友人Aと混ざったな。
こんな奴が複数いたらキモいわ。やめてくれ。
「見るな」
可愛すぎる弁当の話題を
これ以上続けられないように、さっさと口に運ぶ。
「茂木ってさぁ、推しとかいる?」
俺の前の席に座り、総菜パンを食いながら狩野は聞いてくる。
「何だよ藪から棒に。
いねーよ、そんなもん」
狩野の口から『推し』なんて言葉が出てくるなんて初めてじゃないか?
いつも内気で、アイドルの話なんかしたこともない。
せいぜいゲームのキャラの話をするだけで、
その時ですら「好きなキャラ何~?」くらいなもんだ。
「僕の携帯の待ち受けなんだけどさ……
茂木にだけ見せるよ。
茂木なら見ても笑わないでいてくれるだろうし」
まぁ、見るくらいならいいか。
強制的に、お前も蠟人ぎょ……ファンにしてやろうかー!!
とかだったらお断りだが。
そんなことを思いながら
量の少ない可愛らしい弁当を完食し、口の中の残りもお茶で流し込む。
「ほら、僕の推しのビビアン・ロッソちゃん。
可愛いでしょ?」
ブーーーー!!!!!
思わずお茶を噴き出した。
「きったないなぁ!
僕のビビアンちゃんにお茶かけるなよ!!」
スマホの画面を制服の袖で拭きながら
キッっと睨んでくる狩野。
「わりぃわりぃ。
でもビビアンって転校してきたばっかりだろ?
なのに突然、推しとか言うもんだから」
そう、ビビアンは俺と同じ学校に転校?編入?してきたばかりだ。
なんでも、向こうの世界では家庭教師がおり、
学園生活を送る機会がなかったらしく、
学校生活をしてみたいとセバスチャンに懇願したんだとか。
困ったセバスチャンがビビアンの希望を叶えるために
なんとかなりませんか、と俺の親父に頼み込んできた。
ビビアンたちは大量の金貨を換金したため
だいぶ懐に余裕があるようで
お金に糸目はつけないとのこと。
たまたまこの学校の校長が親父の知り合いで、この話を伝えたところ、
経営も傾いていたため喜んで飛びついてきたそうだ。
俗にいう裏口入が……winwin入学とでも言っておこう。
……この学校、大丈夫か?
そして俺も、この世界に不慣れなお嬢様を助けて欲しいと、セバスチャンに頼まれている。
陰では支えるが、関係性は必要最低限の人にしか明かさないという条件で承諾した。
こんな経緯がありビビアンは無事に同じ高校に入学してきた。
しかし、ルックスが良く、
『人前では』お淑やかで人当たりが良い、可愛らしい性格のビビアンは
まさにThe お嬢様!という雰囲気を醸し出し、登校初日から大人気。
数人から告白されたり、
本人に隠れてファンクラブや親衛隊なんかも出来ているらしい。
「僕さぁ、実は異世界にいた頃から
ビビアンちゃんの配信見てるんだよ」
俺の顔は引きつった。
「へぇ……ビビアンって異世界から来てたのかぁ
知らんかったわー」
俺の聖剣ダイコンカリバーが炸裂してしまった。
見よ!この演技力の無さ!
「昔はドラゴンと戦ったりもしてたんだけどねぇ。
その頃のビビアンちゃんを知ってるのが自慢なんだぁ」
やべぇ、ドラゴン戦を見られてたのか!?
でもこの様子だと俺には気付いてない?
「そ、そっかぁ。
ド、ドドド、ドラゴン戦ねぇ」
余計なことを言わないように
上手く受け流そうと試みる。
「何?その反応。
僕の言うこと信じてないの?」
ダメだ。
ダイコンカリバーが
俺の手から離れてくれない。
「そんなことねぇよ。
あるわけないじゃん。
推しの事で嘘なんて吐くはずないもんな!
それはとても良いことだ!」
ビビアンが転校してきてからわかったことだが、
学校には意外とリスナーさんがいた。
まぁリスナーさんじゃなくとも
彼女が廊下を歩くだけで、男女問わずみんな振り返るほどの人気者なのだが。
しかし、俺はあくまでも他人を装い知らないふり、興味のないふりを貫いている。
理由は、ビビアンとの関係が、もしバレて、
付き合ってる付き合ってない等を聞かれる……だけならまだしも、
狩野みたいな奴のオタトークに付き合わされたり、
全校生徒を敵に回すようなことになったら
俺の高校生活が終わりを迎えるからだ。
それだけは避けたいからな。
まぁ、もうすでに狩野の手により
オタトークには付き合わされているが……
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