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第39話  その後のロッソ、そして再会

「ところで、テーゼは結婚したのかしら?」


たくさん話をして落ち着いた頃

ふと思い出したのでテーゼの侍女セシリアと仲の良いマリアに聞いてみる。


(盛大な結婚式でございました。旦那様もお喜びでしたよ)


まぁ無事に結婚したならいいですわ。


「それは、よかったわ」


いろいろあったけど、

性格はあれでも、幸せになれるならなってほしい。

カルロはともかく、テーゼは妹ですから。


(ビビアンお嬢様がいなくなってから、

張り合う相手がいなくなって寂しいご様子だと

セシリアから手紙が届きました)


あれは……張り合っていたにしてはやりすぎな気はしますが……


私は複雑に思いながらも


「テーゼは、カルロ…様とは仲良くやっていて?」


と心配になり聞いてみる。


(カルロ様の性格に手を焼いているとは書いておりました。

どうやらセシリアによく愚痴をこぼしているようです)


カルロは本当に自己中でワガママで自信家で

ナルシストで自意識過剰のどうしようもないバ……

これ以上はやめておきましょう。


「ふーーん、ま、そうでしょうね。

お父様は元気かしら」


カルロのことなんてどうでもいいですわ。

考えるだけ時間の無駄ですから。

テーゼ……強く生きて!神話になるのですわ!


そう思いながら話題を変える。


(旦那様は、お嬢様に出ていけと言った事を、ひどく後悔していらっしゃいました)


マリアからの意外な言葉に私は驚いた。


(テーゼお嬢様が結婚してから、少し余裕ができ

領地をより知るために噂話など、以前よりもっと深く住人の声に耳を傾けたところ

そこで領内のテーゼお嬢様の評判や

【悲劇の演技派 テーゼ】という二つ名を知ってしまったようで、

ビビアンにはすまないことをした、と繰り返しおっしゃっていました)


まさか、そんなことになっているとは思いませんでしたわ。

私がテーゼからの嫌がらせや、そういう噂話が、

お父様に伝わらないように上手くかわして黙っていたから

このまま気付かれることはないと思っていた。


(テーゼお嬢様はヴィスコンティ家に嫁がれ、

ビビアンお嬢様とはケンカ別れのような状態で行方知れず、

今やロッソ家は、まるで火が消えた暖炉のようです)


マリアは現在の状況を

事細かく説明してくれた。


お母様という優しい火種がいなくなった時から

少しずつ、よく燃える暖かい暖炉では

なくなっていってしまったのかもしれませんわね。


「お父様……」


私は少し心配になったものの、

何も信じてもらえなかったあの時を思い出し、

さらに複雑な気持ちになる。


(このようなことになってはいるのですが……

先日、旦那様から呼び出され渡された物がございまして)


それだけ重要な物だったのかしら?

セバスチャンが呼び出されて何かを渡されるなど今まで一度もなく、

必要があればお父様に仕える執事が私の部屋に持ってきていたのに。


「渡された物って?」


私は不思議に思い聞き返す。


(旦那様が今にも消え入りそうな声で

『ビビアンがどこへ行ったか知っているか?知っているのであれば渡してほしい……』

とのことで

わたしが責任をもってビビアンお嬢様に必ずお渡しすると伝え

実はそのまま、わたしたちはロッソ家を出たのです)


セバスチャンがそう言うと、


(追従いたしました)


マリアがその言葉に続く。

本当に仲が良いですわね。


「そうなのね。

でも、まさか私が異世界にいるなんて思わなかったでしょう?

何を渡そうとしたのか気にはなりますが、受け取れませんの。

残念ですわ」


受け取れないものを確認しても

もうどうにもなりませんから。


寂しい気はしたが、深くは聞かなかった。

するとセバスチャンから


(お嬢様。

わたしは約束を守る人間です。)


という一文が送られてくる。


突然どうしたのかしら?


(本当はご自身で渡したかったと思うのですが、

 合わせる顔がないとお思いになったのでしょう。

申し訳なさと悔しさの入り混じった表情をしておられました。

だからこそお嬢様の従者であるわたしが、

旦那様に『責任をもってビビアンお嬢様に必ずお渡しする』とお伝えした以上

 何があっても渡しに行きます)


セバスチャンの文章から決意が伝わってくる。


「嬉しいですが……

異世界に来る方法なんて……」


その時、スマホ画面が急に光り輝き、

光の上に先ほどのようなメッセージが表示される。


『転送サービスを実行しちゃってもいいんじゃないかの? by 神』

『承認しますか?』

『はい・いいえ』


神様からのサービス?

うーーん、転送サービスとか何のことかちょっとわからないわ。

でも、とりあえず神様のやることだし利用してみましょうか。


『はい』をポチッと押した瞬間、部屋中が光に包まれた。


この光、見覚えがあるわ。

確か……ヘブンズ・ドアで神様が転移の魔法を使った時の光。


私はその時のことを思い出しつつ

あまりの眩しさに目を閉じる。


数秒で光は収まった。

誰もいなかった部屋に人の気配を感じ

何が起きたかわからないまま、恐る恐る目を開けると、

目の前には今までやり取りをしていたはずの

懐かしさすら感じる二人が立っていた。


「セバスチャン……マリア……」


二人も驚き、目を見開いている。


「転送サービスって二人をこちらに転送するってこと?」


私は涙が溢れそうになる。

そしてそのままセバスチャンとマリアを抱き締めた。


「セバスチャン!マリア!」


マリアも私に抱きついて涙を流している。


神様……珍しく成功しましたわね。

ドジな神様から少しだけランクアップして差し上げますわ。

……ありがとう。


「これこれ、はしたないですよ、お嬢様」


セバスチャンはそう言いつつも頭を撫でてくれている。


しばらくそうしているとセバスチャンの上着に

何かが隠されていること気付く。


「セバスチャン、これは?」


ずいぶんと大きく膨らんだ上着は

不自然なくらいにごつごつとしていて

外から見ても何かがあると気付くほどだった。


「あぁ、これですよ。

わたしが旦那様から託されたものは。

無くしたり盗られたりしないように

肌身離さず持っておりましたが

重くて、重くて……老体には堪えます。

ここで外してもよろしいでしょうか」


セバスチャンはそう言って、上着の内側から袋を三つ取り出した。

その一つを開けてみると、中身は大量の金貨だった。


「お嬢様がどこへ行かれても生活できるようにとのことです」


お父様が、そこまで私のことを心配してくれていたなんて。

今さらどうやって、感謝の言葉を述べればいいのかしら。

でも…お父様のあの時の言葉は……


私が戸惑い、複雑そうな表情をしていたからか

穏やかな表情でセバスチャンが言った。


「子どもが幸せに過ごせるように。

それを願わない親はいません。

旦那様は取り返しのつかないことを言ってしまった。

だから少しでもお嬢様の助けになりたいというお気持ちがあるのです。

罪滅ぼし……と言えば都合がいいかもしれませんが

反省なさってるんです。

それを受け入れて

お嬢様がこの国で、幸せに生きていくこと。

それが、今のお嬢様に出来る感謝だと

私は思います」


セバスチャンからの言葉を聞き終わると


「そうかもしれないわね……

よし!わたくし決めましたわ!」


大きな声と共に、私は顔を上げた。


お読みいただきありがとうございます。


「面白いなっ」


「このあとが気になる」


と思いましたら、ブックマークか

ページ下部の[☆☆☆☆☆]をタップして評価をしていただけると大変うれしいです。


どうぞよろしくお願いいたします。

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