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第37話  手紙、そして花嫁修業?

親愛なる従者、セバスチャン

親愛なる侍女、マリア


突然いなくなってごめんなさい。

私は今、彼の生家、茂木家で暮らしています。

家族の皆さまはとても優しく

突然現れた私に、彼以上に目をかけてくださっています。


「これも何かの縁だしね。

住むところが決まるまで家にいなさい」


彼のお母様の言葉で、私は彼の家に置いていただけることになりました。

そこに至るまでにいろいろ揉めたりはしましたが……


——数日前


 私がこちらの世界に来た日。

彼のご家族が全員帰ってきてから事情を説明することになった。

もちろん異世界などの信じてもらえなさそうな話は避けて。

家族構成は彼を含め、お父様、お母様、弟様の4人家族。

テーブルに皆さまが座ってから話し始める。


 彼は異世界にいた時のことは、何も話していなかったようで、

急遽、神隠しにあい、気付いたら私の屋敷にいた……ということにして

今はその逆のことが起きていて、私はここにいる!

という設定で説明を進めていく。


「まぁ、ビビアンの両親は豚にはなってないし、

 毎日髪型も変えないけどな」


よくわからないことを言っていますが

何のことでしょうか?


そして彼のお父様は、私の話を聞いてずいぶんと心配してくださり


「警察に相談した方がいいんじゃないだろうか?」


と、おっしゃっていましたけど、

お母様は大反対の様子で


「あなた!何言ってるの!?ダメよ!

ビビアンちゃんはこんなに可愛いのよ?

普段の行いがいいから、娘が欲しかった私に

神様が遣わしてくれたに違いないわ!

そもそも神隠しなんかで警察は動かないわよ!」


なんて、嬉しいことを言ってくださいました。

でも、あの神様がそんなことをしたと言うなら

それはどうせただのミスですわ。


「うん……それはない」


どうやら彼も同じことを思ったみたいね。


「ほぉらね!

…え?それはない?なんでわかるのよ!

そうだわ!いいこと考えた!

マナブとビビアンちゃんをトレードしましょ!

これで解決よ!!」


お母様が何かとんでもないことを言い出しましたわね。


「何で俺を巻き込むんだよ!?」


彼の意見はごもっともですわ。

でも、実の息子なのにこの扱い……

さすがお母様!


「じゃあ何?マナブはこぉんな可愛い子を

追い出せって言うの!?

あんたをそんな息子に育てた覚えはありません!」


んー……これ以上、私のことで彼のご家族が揉めるのは困ります。

揉め事を回避するために何かいい手段は……

私は少し考えるとハッと気付きおずおずと手を挙げた。


「あの……少しよろしいですか?」


言い合いをしていた彼やお母様を含めた全員が

その一言でこちらを向く。


「わたくしは、こちらに頼れる方がいません。

なので行く当てもないのです……

もし、この家に置いていただけるなら

彼が、わたくしの屋敷でしていたように

働かせていただきたいと思っております。

お掃除、お料理、お洗濯など、あまり得意ではありませんが、

お母様に教えていただきながら、一生懸命がんばりますので」


私は懸命に説得を試みる。


「あなた、聞いた?なんていい娘さんなの?」


お母様は口元を両手で押さえ、目を潤ませている。

いい娘……ではないですが、彼の家族の役に立てるのなら、私も嬉しいですし

何より、向こうで彼がやってくれたことを私もしたいと思ったから。

ふと見ると、お父様の顔が先ほどの心配そうな顔から

少し力が抜けている様子だった。


「それは助かるが……」


ここで、彼が助け舟を出してくれる。


「働くって言ってんだから、やらせればいいじゃん。

 何かあったらフォローぐらいするよ」


こちらの世界でも私を助けてくれるのね。

私はニヤけそうになる頬を必死に抑える。

彼の言葉にお父様の顔が少し緩んだように見えた。


「まぁ、素敵な娘さんのようだし

このまま帰れなかったら、マナブの嫁になってもらってもいいかもなぁ」


あら、やだわ、嫁だなんて。

大歓迎ですわ。

末永くよろしくお願いいたします。


自分の顔が熱を帯び、今までにないほど赤くなっているのがわかった。


「あなた!」


お母様が突然大声をあげる。


「な、なぁんて、冗談だよ。冗談」


突然の大声に驚きビクッとなったお父様は

弱々しい声でそれだけ言うと、ハハッ…と震えた笑い声をあげている。

そんなことお構いなしにお母様は言葉を続ける。


「たまにはいいこと言うわね!

その案でいきましょう!」



…………という経緯で、私は家事にいそしんでいます。

今までは、セバスチャンやマリアがやってくれていた仕事ですが、

見た目以上に難しくて失敗ばかりです。


掃除は、掃除機という機械で埃を吸い取る。

これだけなので、何とか出来ました。


ですが、廊下に雑巾を置いて、四つん這いで拭いて行く【雑巾がけ】というのは、

修行かしらと思うほどキツイのです。


お風呂掃除では、シャワーからいきなり水が噴き出して、

大蛇のようにシャワーが暴れる事態に。


「なんですのこれー!お屋敷と違いますわー!

もしかしてシャワーに擬態した大蛇!?

成敗しなくては!」


その後、お母様が駆け付けシャワーを止めてくださった時には、私は全身びしょ濡れでした。


洗濯は、洗濯機という機械があって、たくさんのボタンの中から選んで操作するのです。

どれを押せばいいのか、など覚えることが意外と多く

ドラゴンよりも強敵かもしれません。

先日は、洗剤という物の量を間違えてしまったところを、彼の弟様が助けてくれました。


「母さーん、洗濯機が泡ふいてるよー。

カニみたいで面白いから見に来てー」


弟様には喜んでもらえた?けど、

お母様には迷惑をかけてしまいました。


そしてお料理。

これだけはマリアとよくお菓子作りしていたので、

今のところは無難にこなしています。


……って言うとでも思いましたか?

残念でした。嘘です。


この世界には電子レンジという機械があり、なんでも料理してくれるのですが、

これさえあれば私にも料理ができると思い、卵を入れたら、爆発しました。

恐ろしい機械です。


こんな感じですが

それでも私は元気に過ごしています。


いつもたくさんありがとう。

こんなにたくさんの難しいことをしてくれていたのですね。

本当に感謝してもしきれませんわ。


二人とも大好きよ。


ワガママなあなたたちの友

ビビアン・ロッソより


お読みいただきありがとうございます。


「面白いなっ」


「このあとが気になる」


と思いましたら、ブックマークか

ページ下部の[☆☆☆☆☆]をタップして評価をしていただけると大変うれしいです。


どうぞよろしくお願いいたします。

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