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第24話 ドジな神様、そしてお約束

 テーゼが去った後、机の上を見るとスマホ画面が配信中になっている。

また切り忘れていたかしらと疑問に思いコメントに目をやると、

テーゼを責め立てる言葉で溢れていた。


「皆さま、わたくしまた配信付けっぱなしだったかしら?

ごめんなさいね。

 ところで、妹が何かしましたか?」


状況を飲み込めず、リスナーさんに問いかける。


(ビビアンだ!やっと帰ってきたぁ)

(アイツが勝手に配信始めたんだよ!)

(妹のテーゼってやつ、ムカつくなホントに!!!)

(優しい俺たちが、溢れる思いをプレゼントしてあげたんだww)

(俺たちの愛でテーゼの心をSO☆GE☆KIしたら感動して気絶しちゃってさw)


リスナーさんたちは、事の経緯を説明してくれる。


「なるほど、あの金タライの山はそういうことでしたのね」


話を聞いて私は納得し、

その気持ちも嬉しく思った。

でも……


(ひどい嘘つきだよね。ビビアンに頼まれて配信してるとか言ってた)

(あとは大切な男と家を出るとか)

(この配信はもう一か月以内に終わるなんてさ、ふざけた事を言い出したから頭にきた!)

(嘘も大概にしろってなwったく)


私は少し申し訳ない気持ちになり


「そう、そうね……」


と煮え切らない返事をする。


(……??なんか、ビビアン浮かない顔だな)

(テーゼが言ってたことは嘘だよね?)

(まさか、そこは本当とか……?)


私は大きく息を吐き、


「当たらずとも遠からずね」


意を決して伝えた。


(えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?)

(訳アリ発言じゃん!?)

(一体何があったの?教えてよ)


私はリスナーさんに促され、

食堂での出来事から今ここに来るまでのことを話し始める。



——三時間前


食堂を出た後

私は一か月以内にロッソ家を出ることになった話を、

彼に伝えるべく、使用人部屋へ急いだ。

そこへ、向こうから彼が歩いて来るのが見える。


「大事な話があるんだ」


私が話し始めるよりも早く

そう告げられる。

彼の方から話があるなんて……もしかして告白!?

そんなことを考えていると鼓動が早くなってくる。

胸に手を当てて落ち着かせようとするが

どんどん鼓動は加速していく。


「なんですの?急に改まって……変な人」


何とか平静を装うが声が上ずっているのが自分でもわかった。


彼はなかなか言い出せない様子で口ごもっている。

愛の告白だと思った私は

話を待ちきれずに、思い切って私の方から切り出した。


「もう!じれったいですわね!!

あなたの考えてることくらいお見通しですのよ?

バレてるのですから観念して話しなさいな。

もしかしたら同じ考えかもしれませんわよ?」


私はあなたの口から聞きたいんですの。

そもそも女から言わせるなんてナンセンスですわ!

そんなことを思っていると


「本当か!?それはよかった!」


彼は流れるように話し始める。

自分のことでいっぱいになっていた私は

その時、言葉とは裏腹に彼の表情に一瞬影が落ちたこと。

そんなことにすら気付かなかった。


「俺、実はさ、今日神様に会ってな?」


…………??

藪から棒に何を話してるんですの?

神様?

愛の告白は……?


「ギルドからの帰り道の話なんだが、

突然目の前が真っ暗になって

気が付いたら見渡す限り真っ白な雲の上のようなところに立っていたんだ。

そこには袖元が金色で縁取られた白い服を着た、変な爺さんが立っていて、

自分は人間の転生と転移を司る神だ、とか言うんだ」


ここで私は全てを察した。

彼の話の内容はこれっぽっちも理解できないが、

少なくとも愛の告白というのは、私の盛大な勘違いだった……と。

でも、勘違いしていたとは思われたくなかったので、しれっと話を合わせる。


「転生と転移を司る神様?か何だかわかりませんが会えてよかったですわね。

 その神様は結局、何の用だったんですの?」


話は合わせたが、先ほどまでの期待があった分

不機嫌そうに話す。

……まぁ私が悪いんですけれど。


「それがな?その神様が言うには、

俺がこの異世界に転移したのは、神様の間違いだって言うんだ」


私は耳を疑った。


「神様の間違い……?」


彼が私のいる世界に来たのは、神様の間違いだったというの?

私は一番最悪なシナリオを思い浮かべ、動揺した。


「そ、そうでしたの……ね。」


私は真実を受け止められず、上手く言葉が出てこない。


「違う人間を召喚するつもりが、座標の位置を間違えたとかで、俺になったんだと」


やめて、それ以上は聞きたくないですわ……。


「神様は『すまなかったね。お詫びと言っては何だが、スマホに魔法をかけて配信できるようにしたのはワシじゃ。多少は暇潰しになると思ってのぉ。』って言ってたよ」


何でそんなに楽しそうなの……?


「そして『そろそろ元の世界に戻りたいじゃろ?』って言われたからさ

『もちろんです』って即答してきた。

俺は帰れるなら帰りたいって思ってたけど

君は配信を楽しんでるみたいだったから渋ると思ったよ。

まさか同じ考えをしててくれたなんて思わなかった。」


あぁ……言われてしまった……


「えぇ……まぁ、そうね」


私への話って、元の世界に戻るっていう話だったのね……

冗談であってほしい、そう願うが

混乱している私のことなど気にも留めず、

神様とのやりとりを楽しそうに話し続けている彼の姿が

現実なんだと突き付けてくる。


「それを聞いて安心したよ。

神様によると

この羊皮紙にあるように魔法陣を描いて、クリスタルを持って真ん中に立ち

俺の純粋な気持ちを言葉にすればいい、それが呪文になる、という話だ」


彼の一生懸命な説明は、私の頭には半分も入ってこない。

元の世界に帰れる方法とか、どうでもいいわ。

そもそも、自分でミスったくせに偉そうな神様ですこと。

まぁ神様だから偉いんですけど……


「ところが、だ。あのドジな神様がまたやらかしてな?」


溜め息交じりに彼は呆れたように言う。


「あら、そうですの……」


私は気の抜けた返事をする。


「神様が俺に魔法陣が描かれた羊皮紙とクリスタルを手渡そうとした時……」


彼は頭を搔きながら苦虫を嚙み潰したような顔をした。


「クリスタルが神様の手から滑って、雲の間から落ちてしまったんだ」


へぇ、クリスタルが無ければ、元の世界に帰れないわよね。

それは、よかった……じゃなくて残念でした。

私は一瞬、安心して口元がゆるんだかもしれない。


「クリスタルは雲の上から、地上の高山へと落ちていった。

そこにたまたまドラゴンがいて、大きく雄叫びを上げているところだった」


私の頭にベタな展開が思い浮かぶ。


「まさか、ドラゴンの口の中にクリスタルが落ちましたとか言うんじゃないわよね?」


そんなことあるはずがないと思いつつ、一応聞いてみる。


「その、まさかだったんだ」


彼の表情は今までで一番曇っていた。


お読みいただきありがとうございます。


「面白いなっ」


「このあとが気になる」


と思いましたら、ブックマークか

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どうぞよろしくお願いいたします。

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