第21話 リスナーの奮闘、そしてクエスト完了 ~スマホ視点あり~
ビビアンが駆け出した後、スマホ側では大変なことが起きていた。
カンッという音と共に
画面がクルクルと回転し天井を向く。
(ん?何が起きた?)
(画面……松明しか映ってないけど……?)
先ほどまでのゴブリンが映る画面ではなく
壁に設置された松明だけがゆらゆらと揺れている。
「やぁぁぁぁぁぁーーーですわ!!」
ビビアンの声が聞こえる。
音声だけは生きているようだ。
(なぁ?画面変じゃね?)
(何かがぶつかってスマホが吹っ飛んだ?)
(布団のように?)
(え!?ビビアン大丈夫かな!?)
(何も見えないぃぃぃぃぃい!!!!)
(音声を聞く限り、戦闘が始まったみたいだな)
(見事なまでのスルー……)
状況は見えないが、戦闘音だけは生々しく届いてくる。
―ギャッギャッ、ギャッギャッ
―カン!
―キン!
(相手ゴブリンだよな?)
(この状態でビビアンに何かあったらどうするんだ?)
(どんな状態だろうと配信アイテムでサポートするに決まってるだろ!)
「キャッ…!!」
ビビアンの短い悲鳴が聞こえる。
苦戦している様子が伺えた。
(音的にゴブリンの持つナイフで防がれてる……?)
(反撃もされてるみたいだし、見えないの心配すぎる!!!)
心配の声が上がる。
(モブがいるとしても俺らのサポートなくて人数不利だろ?)
(もしかしてヤバいか!?)
(くっそ!もう何でもいい!アイテム欄の物投げまくれ!!!!)
その一言で一斉にアイテムが投げられ始める。
「あら!鎧が…これは…重くて動けませんわぁ!」
(誰だ!ガッチガチの鎧投げたの!)
(ビビアンには軽装備だろ!!)
(危ないと思ってフルプレートのをつい…)
ビビアンの言葉を拾って、どんな装備が送られたのか予測しつつ
リスナー同士でコメントを交わしながら
どんどんアイテムが投げられる。
「キャッ!?この剣なんですの!?
剣……にしては刀身の幅が広…
重い……ですわ……!」
ドスンという音とギャッというゴブリンの悲鳴と共に、ビビアンの声が聞こえる。
(おい、誰かバスターソード投げたろ?)
(なんでわかった!?)
(幅広い刀身でみんな知ってそうなのはそれしかねぇだろw)
(でも一体やれたんじゃね?)
(まぁ結果オーライだが、まじめにやれよw)
一体倒せたことでリスナーの雰囲気に
多少の安堵が伺えるようになった。
「盾ってどう構えればいいのかしら?」
戦闘中のビビアンの呑気な一言が聞こえてきた。
(お願いだから、盾の構え方ぐらいモブに教わっててよ、ビビアンw)
その瞬間、ゴン!っと鈍い音がする。
「あら、盾も武器になるんですのね!」
ビビアンの声にも少し余裕が伺えた。
(絶対盾で殴ったなww)
こうして残りはモブと戦っている一体となったゴブリン。
リスナーたちも少し遊び心を加え始める。
「この鎧、露出多くありません!?!?」
恥ずかしそうに叫ぶビビアン。
男性リスナーたちも口を揃えて叫ぶ。
(((……!?どんな!?)))
こうして戦況がわからないながらも
ビビアンの声や戦闘音を聞きながらアイテムを投げ続けた。
見えない分、心配は強く出たが
戦い方が安定してきた様子が声や音で分かった。
戦闘センスが良いと褒められたと話していたビビアンは
リスナーが思っている以上に強くの飲み込みが早かった。
(よかった。何とかなってるみたいだね)
(一時はどうなることかとww)
そんな安堵の声が漏れ始めた時、
「彼を傷つけるのは、このわたくしが許さなくってよーーーー!!!」
という声が聞こえてくる。
(リア充爆発しろぉ!)
(モブは爆ぜるべき!)
(爆裂魔法撃ち込みたい……)
(お前ら……普通に祝ってやれよwwその爆裂魔法が祝砲なら許すw)
などの妬……祝福のコメントが流れた。
「やった!!やりましたわ!!!」
その後、すぐにビビアンの喜びの声が聞こえてくる。
(あっ終わったみたい。)
(どうやら勝ったみたいだな。)
一呼吸おいて思い思いの言葉が呟かれる。
(冷や冷やしたw)
(ところで露出多めの鎧ってなんだ!?!?)
(それな!気になるわぁw)
(バスターソード的なのを投げたやつ誰だ?貴様とはいい酒が飲めそうだ)
そんなやり取りをしていると。
「やった!!やりましたわ!!!」
ビビアンが、初めての勝利に興奮している声が響き渡る。
「皆さま見ていまして!?
わたくし勝ちましたわ!!
…あら?スマホはいずこに?」
どうやらスマホを探している様子だ。
(ここだよー!)
(ビビアーン!ケガとかしてないー!)
とコメントが流れていく。
当然ビビアンに聞こえるはずはない。
しかし、みんな心配しているのだ。
「あら、こんなところにスマホが……。
これってわたくしの戦いが映ってなかったってことかしら……?」
心配そうに覗き込むビビアンの顔が映る。
(あ、ビビアン!ようやく見つけてくれた!)
(何が起きたか見えなかったけど、心配してたんだ!)
(悲鳴が聞こえるたびに、ヤバいかと思ってアイテム送りまくったw)
(俺は聞こえなくても送りまくった!(ドヤァ))
(くっっっそ迷惑で草)
リスナーたちはいつもと同じように次々と声をかけていく。
(とりあえず無事でよかった!)
(やっとビビアンの顔見られて安心した!)
(戦闘は全く映ってませんでしたw)
(音声だけでも、結構迫力はあったけどね?)
しかし、コメントを見て残念そうな顔を見せるビビアン。
「ありがとう、皆さま。
楽しみにしててくださったのに、
戦闘をお見せできなくてごめんなさい。
次回戦う時は気を付けますね。」
暗くなるビビアンとは裏腹に
コメント欄は盛り上がる。
(次回!?またやるの?)
(ビビアンはやってくれるでしょ!!)
(いい運動にもなるしねww)
期待の声が上がり、
暗い表情から、安堵の表情に変化するのが見て取れた。
(まぁ、モブが協力してくれれば実現可能だと俺は見た)
(なんだかんだで協力してくれるでしょww)
(モブだもんねw)
(モブも戦ってくれたんだよね?)
戦闘中は武器がぶつかり合う音、ビビアンの声しか聞こえず、
宣言通りモブは声出しNGを貫いていたため活躍がわからなかった。
「えぇ、彼は二匹を相手に頑張ってくれていましたわ。
あとは、わたくしも必死だったのでわからないですけど」
モブは二匹を相手取るという
意外な戦闘センスを見せたようだ。
(いいなぁ、オレも異世界に転移したい!)
(転移しても俺、絶対ステータス低いからなぁw)
緊張の糸がようやくほぐれてきたのか
表情が少しだけ緩んだように見える。
「でも、戦っている場面が見えていなかったなんて、
本当に不覚でしたわ。初の企画は失敗ね」
溜め息をつきながら反省の言葉を口にするビビアンに
(失敗した分、次にどうすればいいかわかるから、よかったじゃん)
(それはそう!超ポジティブ思考でいこうZE☆)
(だっさww)
(でも次までにスマホ用の三脚が必要だね)
(そうだなぁ、そのうち送り付けるわww)
アドバイスや優しい言葉をかけるリスナー達。
話をしていると
「彼が焚火を用意してくれましたわ」
モブが気を利かせて一息つけるように
準備をしてくれたらしい。
(モブ意外と優しいw)
(一休み、一休み)
(とんち小坊主おったなぁww)
ビビアンは焚火まで移動し腰を下ろす。
そして戦闘中の話をしてくれた。
見えなかった間どのように戦っていたか、どんな装備が出てきたかなど
彼女は、リスナーの質問に答えてくれた。
「露出多めの鎧?……記憶にございませんわ」
鎧に関しては本当に恥ずかしかったようで、
それだけはどんな鎧だったか教えてはくれなかった。
(でもビビアンのカッコいい姿見たかったなぁ)
(装備が変わる瞬間を見たかった)
(音声だけでも迫力あってドキドキしたけどねw)
初めての戦闘で疲れているはずなのに
リスナー達が送った感想コメントを、ビビアンは全て読んでくれた。
「では今日はここまでにしますわね、皆さまごきげんよう」
洞窟の外まで戻ったところでビビアンは、
初の企画配信を、名残惜しそうにしながら終えた。
◆◆◆
——配信終了後、
私たちはクエストの結果をギルドに報告しに行き、
そのまま寄り道もせず屋敷に帰る。
セバスチャンの配慮で、
人目に付かないように、と屋敷裏の少し離れたところで馬車から降りる。
馬車から降りて、彼と私は中庭までしばらく歩きながら、
「今日はご苦労様でした。ゴブリンって意外と怖いモンスターですのね」
その一言に彼は呆れたように溜め息をつく。
「はぁ……今頃わかったのかよ。俺はそれを二匹も相手にしたんだぞ?」
しかし、その言葉はどこか少し得意気だった。
「あら、あなたがピンチの時に助けたのはわたくしですわよ?」
自分が無我夢中すぎて口走ったセリフを思い出し、少し恥ずかしくなった。
「何言ってんだ。
あんなへなちょこな攻撃効くわけないだろ?
ゴブリンをちょっとふらつかせた程度で、
結局俺がほとんど戦って倒したじゃないか。」
確かに二匹を相手にしてくれていたのは助かりましたが
あなたを助けるために私は必死で……
「何をおっしゃってるの?
わたくしの一撃がなかったら、あなたはやられてましたわよ?」
そんな気持ちから
彼の言葉に少しムッとしながら答える。
「俺だって君を何回も守ったぞ!
君が危ない状況にならないように
どれだけ必死に……何でもない!」
はっとしたように彼は途中で言うのをやめる。
え、私を守るために?
あなたも必死になってくださったの?
よろしいのかしら、よろしいのかしら、こんなうれしい言葉をいただいて、
顔が耳まで赤くなっていくのがわかる。
よかった、配信を切っておいて。
この瞬間だけは私と彼だけの時間がいい。
私にだけ向られた彼の言葉を噛み締めた。
そんな時、どこかから誰かに見られているような気がして
私は振り向いた。
が、誰も見当たらず、
ゴブリンと戦ったせいで疲れているんだろうと思い、気にしないことにした。
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