第16話 閑話:実験、そして投げ銭の限界
彼に冒険者登録の話を聞きに行った次の日。
私はリスナーさんからの提案で、いくつか実験を行うことにした。
「では皆さま、今アイテム欄に何が表示されているか
教えてくださいますか?」
そう、
冒険者登録やクエスト受注前に確認しておかなければならないことがある。
それはアイテム欄の仕様の把握。
【リスナーさんと一緒にモンスター討伐企画!】なんて言っても
投げてもらえるアイテムが、食べ物だけではお話になりませんから。
「今までのスタンプはハンバーガーやハンバーグ、カレーライスなど
食べ物ばかり。
先日の一件を例に挙げると、
お腹が空いたわたくしに必要な食べ物という分類で
ハンバーガースタンプが表示されて
それを押したリスナーさんが月見バーガーを思い浮かべたから
月見バーガーが送られてきた……
このことからリスナーさんの考察的には
わたくしに今必要なものがアイテム欄にスタンプで表示され
それを贈ったリスナーさんの想像力で内容が変化するんじゃないか?
ということでしたわね」
先日の配信での考察が本当かどうか
武器や防具になるかは確かめられなくても
アイテム欄が変化する条件や、リスナーさんが投げた時にどう変化するかを
しっかりと確かめておいた方がいいということで
今日一日使って試してみようということになりましたの。
(そうだねー)
(その後もハンバーグはチーズin、カレーはバターチキンとか
元の料理をアレンジした物になって送られてたしなぁ)
(可能性は全然あるよね!ビビアンのお腹が空いてた時に話してた料理だったし!)
少しずつ意見を出し合い、確認していく。
「確かアイテム自体は配信が盛り上がってくると投げれるのですよね?」
(まぁ今までの感覚的に入室者数、いいね、コメントが増えて
注目のランキングに載ったらかな?)
(ビビアンは普通にしててもランキング常連だからそこは大丈夫だとして)
(とりあえず今のアイテムを見ると……ブランケット? 枕? お昼寝マット?
……ビビアン、もしかして眠い?w)
「正解ですわ!
アイテム欄はわたくしに
今必要な物に変わるという考察の
真偽を考えていたら、
眠れなくなって夕べ遅くまで起きていましたの!」
私は口元に手を当て、ふわぁ~と欠伸をした。
(わざわざww)
(お肌に悪いよ?w)
(配信のことだとひたむきに頑張るよねぇww)
どうやら私に眠気があることで
眠るのに必要なものに変化したようですわね。
「でもこれでわたくしに今必要な物に変わるという考察は
間違っていないことがわかりましたわ!!」
私は口元を隠しながらもう一度大きな欠伸をした。
(いくら口元隠してるからって伯爵令嬢が、人前でそんなに欠伸してww)
(まぁビビアンだからw)
(伯爵令嬢ってことを鼻にかけないからこそ俺たちのビビアンだろ?)
(それはそうww)
リスナーさんは今の私を受け入れてくれる。
伯爵令嬢という肩書付きのビビアン・ロッソではなく
何もないただのビビアン・ロッソとして。
それが、私も頑張ってみんなに恩返ししたい!という気持ちにさせる。
(ん?ビビアンどうかしたの?)
「なんでもないですわ!」
そんなことを考えて、少しウルッとしてしまった私は
リスナーさんからの問いにハッとして話題を元に戻す。
「それでは次ですわね。
リスナーさんの想像力でアイテムを贈った時に変化するかどうか。
これはアイテムを投げてもらうことになりますが……
お金がかかるのでしょう?
皆さまよろしいのですか?」
(何言ってるの!ビビアンにだから投げたいんだよ!)
(そうよ?ビビアンだから協力するの)
またそんな優しい言葉をくださる。
私が喜びに浸っていると、
(んー……この中だと枕が一番わかりやすいかな?)
(じゃあ私は大きめの抱き枕を想像するね!)
(俺は低反発のやつを。弾力とかも違う方がわかりやすいだろうし)
(私は何かキャラ物のビーズ枕!)
(そんじゃ、想像できた人から順番に投げていこかー)
リスナーさんの間で話がまとまり枕のアイテムが投げられる。
抱きつきやすい長めの枕や、薄い枕、手触りのいい黄色いクマの枕が目の前に現れる。
「これは皆さまの想像通りの枕ですか?」
枕をそれぞれ画面に映し反応を伺う。
(そうそう!想像通り!!)
(まさかこんなに正確に想像通り出てくるとはww)
(すごいな!)
どうやら実験は成功したようね。
考察は間違っていなかったことが証明されたわ。
「皆さま、ありがとうございます。
状況を変えて、もう少し試したいのですが、
お付き合いいただけますか?」
(もちろん!)
(ビビアンのためなら朝までだって付き合うよ!)
(お前……この前寝落ちしてたやんww)
(……記憶にございません)
(wwwww)
その後も、いくつかの実験をした。
川に行き、釣りの話になると釣りの道具が表示され
それを投げてもらうと、釣り竿は手元に、
釣り用のベストは着ている服と入れ替わるような形で
自動で装備された。
着せ替え人形になった気分ですわ。
猫を撫でていると猫の餌や
ブラシが表示され
投げてもらうとリスナーさんの
想像通りに、
ちゅーる?という餌や
豚毛を使ったブラシが送られてくるという結果が出た。
これならクエストでも
私に必要な物がリスナーさんから送られてきそうですね。
無事に考察は実証されたわ。
「皆さま今日は、長い時間ご協力ありがとうございました。
これで心置きなく冒険者登録しに行けますわ」
実験が終わり、リスナーさんへ感謝を伝える。
(これくらいどうってことないよ!)
(まぁ俺が一番役に立ったな!ドヤッw)
(あら?何を言ってるの?一番は私よ?w)
(寝言は寝てから言ってくれ…諸君、おはよう)
(やめて!!俺のために争わないで!!!)
(( いや、お前のためではねぇよww ))
(1人寝起きの奴おったなぁww)
ふふっとみんなのやり取りに笑ってしまう
私の配信には
いつも笑顔が溢れ暖かな言葉が流れる。
そして少しずつ私の心が満たされていくのを感じる。
彼にもいつか紹介したいですわ。
私の大切なお友達を。
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