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第13話 期待、そして企画会議

——彼と私は森の中を歩いていた。


「腹減った」


彼のその言葉に小さくため息をつきながらも

私は少し嬉しくなりながらバックを漁る。


「しょうがありませんわね。

少し休憩にしましょう。

こういう時のためにサンドウィッチを持ってきましたわ。」


近くにある大木の下に移動し

取り出した少し大きめの箱を手渡す。


「お、気が利くな。

料理も上手いし、

こんなに素敵な君はきっといいお嫁さんになるね」


彼は地面に腰を下ろし

箱を受け取りながら満面の笑み。

そんな彼の笑顔と言葉に照れる私。


「あら、いやですわ。

あなた以外の誰のものにもなりませんわ」


自分で頬が赤くなるのがわかるくらい気持ちが高揚する。

私が幸せな気持ちに浸っていると

ガサガサッという音とともに突然大木の影からモンスターが現れ彼に襲いかかる。


私は剣を抜きモンスターの懐へ一瞬のうちに潜り込み

その勢いを活かし流れるようにモンスターを

斬り上げる。

川の流れのような華麗な一撃にモンスターはその場に

ゆっくりと倒れ動かなくなった。


その動きを見て驚いた表情の彼。


「ありがとう、ビビアン。

君は強さも兼ね備えているんだね」


その感謝の言葉に私は再び気持ちが高揚する。


「貴方を襲う輩は、

このわたくしが絶対に許しませんから」


彼の手が私の体を優しく引き寄せてくる。


「僕にはやっぱり君が必要だ。

こうして君といつまでも冒険して、

ずっと二人で一緒にいたい。

僕も君を守るから」


……あら?なにか助ける立場が逆のような?


***



ハッと我に返る私。

今のは……。


「登録してきますわ!!」


次の瞬間、私の口から出た言葉は決意に満ち溢れていた。


(え?w唐突!?ww)

(いやいやwそれは小説の話だからわざわざ合わせなくていいんだよ?w)


冗談だと思っているリスナーさんたちに、


「いいえ!わたくしがやりたいんですの!」


と私は鼻息荒く宣言する。

リスナーさんからの提案に、私の妄そ……好奇心が爆発した。


確かにいつも彼がクエストに行く姿を窓から見ているだけじゃなくて、

冒険者になって一緒に行けば、ずっと彼のそばにいられるわね。


(でも貴族のご令嬢がやることじゃないんだよね?www)


確かに令嬢のやることでないのは事実。

だけど私にはそんな世界どうでもいいんですの。


「いえ!貴族だとか令嬢だとかいう立場は関係ありませんわ。

 先ほど言ったようにわたくしがやりたいからやるんですの。

それに例えばですが…

わたくしが戦う場面を配信すると言ったら…

皆さま見たいかしら?」


そう、私には配信もある。

話のネタにもってこいの

こんなイベント放ってはおけませんわ!


(え?マジ?w)

(本気で?www)

(まぁモンスターも見たいし、ビビアンの戦う姿も見てみたいけど……)


かなり乗り気な私に、リスナーさんも押され気味になっている様子。


「本気も本気、本気と書いてマジですわ!

 それなら決まりですわね!

ということで、冒険者になってクエストに行ったら

わたくしが戦うシーンを配信いたします!

皆さま、応援してくださるかしら?」


こうして強制的に決めたものの


(応援するする!!)

(絶対見に来る!!!)

(もしかしたらさ、戦闘になったら投げられるアイテムも武器とかに変わるんじゃね?)

(確かに!今までも話の内容次第で、投げられる食い物の種類も変わってたもんな!)

(ナイス!考察厨!!)


ちゃんと応援してくれようとしてくれるリスナーさんに

私は嬉しくなった。


「では、アイテムを投げていただき、それを使ってモンスターの討伐をする!

…なんて企画はいかがかしら?

皆さまが投げてくださるなら

やってみたいと思うのですが……」


私は反応を伺うように提案してみる。


(その企画、面白そうですね!)

(それなら全然投げるわww)

(俺たちのビビアンにケガ一つさせないために全力で投げる!!!)

(ならアイテムについて、もう少し把握しといた方がいいよね?)

(じゃ、実験が必要だ)

(それからもう一つ、クエストでモンスター退治って、

ギルドで冒険者登録しなくちゃいけないでしょ?出来るの?)


そういえばそうでしたわね。

忘れていましたわ。


「そうですわね…とりあえず実験は後日やるとして

冒険者登録に関しては彼に聞いておきますわ。」


こうして私の初めての企画会議は幕を閉じた。


その後は、リスナーさんたちが知っている異世界での冒険者登録の仕方で話は盛り上がる。

魔法やスキルを調べるとか、自己申告だとかいろいろあるらしい。

小説やアニメ?テレビ?なるもので異世界の知識を幅広く知っているとのことらしい。

この世界に住んでいる私よりも詳しいリスナーさんたち、本当に頼もしいですわね。


(まぁ実際にどうなのかは、モブに聞いてからだね)


そうですわね、会いに行くいい口実ができたわ。

親切に教えてくれるかしら?

いつも私には怒ったような態度だし……


そういえば、彼はいつでも腹ペコさんだった。

マリアに頼んでお菓子でも準備して持って行けば、

案外素直に教えてくれるかもしれない。


まるで、犬に餌付けしているみたいだけど……

あっ、出会った頃からそうでしたわ。


「そうですわね。聞いておきますわ。

今日は皆さまのおかげでいろいろ勉強になりました。

後のことは、実際にギルドに行って仕事している彼が詳しいと思うので確認しておきます。

この企画…絶対に成功させましょうね!

アドバイスなどたくさんありがとうございました。」


そう言い配信を終了する。

一週間前まで心を覆っていた雲が晴れたように、

私本来の明るい声で今日の配信を終えることができた。

その後、再びスマホに目を落とし

このリスナーさんとの大切な居場所を守っていきたい。

そう思った。

私の『配信』という名の冒険は、まだ始まったばかりなのだから。


お読みいただきありがとうございます。


「面白いなっ」


「このあとが気になる」


と思いましたら、ブックマークか

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どうぞよろしくお願いいたします。

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