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2話


ガキはあっさりと見つかった。

ボロボロのガキという事で、取り敢えず夜に残飯や余り物が集まる、屋台街のゴミ捨て場に行ったら……

ええ、もうむっしゃむっしゃと貪っていましたよ。



「止まれクソガキィ!!」

「ギャッ!グケケッ!!」

赤髪、角と尻尾、背中の小さな翼を見るに龍人。で、恐らく念動力の異能持ちか。

器用にゴミの中から硬い缶や小さいナイフを取り出し、

ランセツの体にぶつけているが……

まあ、最高級サイボーグであるランセツ相手に通じるはずも無く。


彼……男だよな?まあ、彼の引っ掻きやパンチ、龍人特有のブレスや雷撃は一切ランセツに通じていないものの。

念動力を使い宙を小さい体で飛び回り、蹴り、避ける様にランセツは大変イライラしている。


まあ確かに、あの速度と火力、奇襲性は並の人間じゃあやられるだろう。



年頃は恐らく4,5歳。可愛い盛りで……目がガン開きで口からヨダレを垂らしてなければ可愛い顔をしている、か?

よく見ると体は傷だらけで、痛々しい。来ている服、服?はぼろ布だけ。

流石にあの年頃の子を殺りたくはないし……

相手しているのもランセツだし、大丈夫だろう。

アイツは冷酷、無慈悲ぶりたがるが……根が子供と老人に優しい時点で似合わないんだよな。





案の定、30分もすれば、子供はランセツに捕まった。

「ゲピャァァァァ!ケヒャッケヒャッ、くぴぃぃぃぃ」

先程まではキマッた笑顔で戦っていた癖に、捕まった途端泣き出しやがった。

ヤバいぞ、別に悪い事はしていないのだが、警官や近隣住民が来たら説明が面倒くさい。

ウチは信頼を大事にしているタイプのマフィアなので、

悪評には注意したいのだ。

ガキが泣き止む物……飯?

丁度俺の手元には、長くなることを想定して持ち込んだそこそこ多めの食料がある。



試してみる価値はある、か。

ランセツに首根っこを捕まれ、バタバタとしている子供に、

まだ熱々の肉まんを半分に割って、暴れている口元に差し出す。

するとーーー



パクっ、と食いやがった。一口で。

「はふっ、はふっぐぴゃ……」

モグモグ、たまにはふはふと熱気を逃そうと口を開け、

美味そうに平らげて…


こちらを、ジッッッ…と見つめてきた。

クパッ、と、口を開ける。

……え、入れろと?

恐る恐る、肉まんの片割れを入れると……

「……けひゃぁ」

美味ぇぇ、という声が聞こえた気がする。

止まると分かるが、夜中でも分かる中々の可愛い顔をしている。

で、また口をパカッと開ける。

適当な食料を突っ込む。子供、食べる。

突っ込む、食べる。突っ込む、食べる。

これを8回ほど繰り返すと、動きが完全にピタリと止まる。

そして、こちらを見つめ……




バッ、と手を広げた。

………脇を抱えて、持ち上げてみる。

「ランセツ、首根掴まんでもいいよ。離してみて」

「おう」

ゆっくり、離してもらうと、



「おうっ!?」

翼で勢いをつけて、飛びつかれた。

で、足でガッチリ胸元をホールド。視界が汚ねえ布切れで埋まる。あと、臭い。子供特有の甘い体臭と放置された布特有の臭さが最悪のマリアージュ。

頭に手が回され、さわさわと撫でられている。

これは……懐かれた、のか?










色々あったが、何とか家に子供を持ち帰って来た。

ファミリーの本拠地に連れ帰ろうかとも思ったが……ボスが仕事中だし、コイツは小さな火やら雷を吐くせいで書類を燃やしかねない。

俺の家には特に大事なものは無いので安心?だ。防火もしっかりしてるしな。

持ち帰る途中でも、飲み屋やら食い物屋の匂いを嗅ぎ付けてギャーギャー騒ぐものだから大分に金を使ってしまった。


家の中で、自分以外の足音がするのは何時ぶりだろうか。

どたどたと2階と1階を行き来し、きゃーきゃーと小さく叫んでいる。

一応、夜は何も無かったら大声を出さない程度の常識…は、あるのか?


で、階段を降りてきた所を確保。

能力を使っていない俺じゃあ、子供とはいえ龍人の膂力に敵わないが……

バタバタはしても、持ち上がってくれる辺りやはり懐かれ?たのか。

服をササッと脱がせ、バスルームに放り込む。

で、その勢いで熱々のシャワーを……は、流石に可哀想なので。

下の蛇口からぬるいお湯を出して、風呂桶に溜める。

その風呂桶に、ガキ……ガキって呼び続けるのもアレだな。後で名前決めるか。

暫定ガキの手を、ぬるい水に誘導。

触れた瞬間、一瞬肩がビクッとしたが……暫く漬けさせると、ちゃぷちゃぷと手であそび始めた。

そろそろ、肩からかけても大丈夫かな。

風呂桶から、ゆっくり、ゆっくりと肩に水を流してやる。


「……クェヒャー」

意訳すると気持ちぇぇ……って感じかな?

次は、頭に流してシャンプーを大量に付ける。

わしゃわしゃ。わしゃわしゃ。

数分かけて、ボサボサの赤髪から大量の汚れとフケを流していく。


また、ぬるま湯で頭から流す。






体も洗い終わると同時に、風呂が溜まった。

脇の下を持ち上げ、足先からゆっくりと風呂に漬けていく。

「ぴっ!」

なんて声を出したが……顔を見る限りは、悪くなさそうかな?


肩まで入れてやると、

「くぴっ……けひょ……」

トロン、と蕩けた表情で、完全に風呂を満喫している。



……うーん。やっぱり子供は可愛いなぁ。


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