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あの夏に僕たちは恋をした。
この物語は、詐欺師が一人の人間として、生きていたことを残した物語です。
情報過多で仮想空間に生きる男女が出会い、悩み、そして愛とは何か、
その二人の問いかけを見届けてもらえると幸いです。
これは、詐欺師と恋に落ちた、私の恋物語です。
夢の中にいるような、
彼と私との、仮想空間での、出来事でした。
私の名前は、大木春奈、37歳の法律事務所で働く弁護士。
夫は上場会社に勤務し、朝早く出かけ、夜遅く帰ってくる。
家に帰れば暇で、特にすることもなく、
シャワーを浴びて、ビールを片手にスマホでネットサーフィンか、SNSをチェック。
特に楽しいことなんて何もない。
夫との体の契約も切れ、残るのは家事と紙切れの契約のみだった。
つまんない。
私の心の隙間に、いつもその言葉が浮かぶ。
考えることは、相談者と被告人の人生と感情ばかりで、
自分の人生相談は誰にもできていない。
なにか面白いことが起こらないかと、毎日思うばかりだった。
そんな初夏の6月下旬、珍しく私のSNSにダイレクトメールが届いた。