決着
アルバは両手を握り拳にして思いっきり床を叩いた。床にヒビが入る、アルバがもう一度叩くと床が崩壊してアルバとエルス・ネットマグは瓦礫と共に二階へと落下していく。アルバは首を絞める力が緩んだ事に気が付いた。アルバは体を反転させてエルス・ネットマグの体を蹴る。
アルバは蹴ると同時に言葉を発する。
「おら!」
アルバがエルス・ネットマグの腹を蹴ったことによって、落下速度が加速し、先に二階の地面に着地した。
エルス・ネットマグは落下しながら右腕を夜空に向かってかざして叫ぶ。
「斬斧よ!」
先程捨てた斧がエルス・ネットマグの元へ向かう。斧は壁を突き破りエルス・ネットマグの右手の中へと収まった。エルス・ネットマグは斧をアルバ目掛けて全力で振るう。
アルバは反撃の構えを取って言う。
「ライフで受ける!」
エルス・ネットマグが重力と共に振り下ろした斧がアルバの肩を切り裂き肉を抉る。斧がアルバの体を切り付けたその時、アルバの体は火花を放ち、赤い髪の毛は炎のように逆立つ。
アルバはエルス・ネットマグの顔面に拳を当てると、拳が顔面にめり込み、頬が波打った。
二階へ着地しようとしていたエルス・ネットマグは上空に吹き飛び、鉄骨に当たる。そして二階に自由落下した。エルス・ネットマグは痛みに耐えながらゆっくりと立ち上がる。
エルス・ネットマグは鼻から流れ落ちる血をポケットから取り出したハンカチで拭き取って言う。
「やはり強化系の霊力か」
アルバは先程の苦しそうな表情とは違う。今は自信と余裕に満ち溢れ笑顔を浮かべている。アルバは笑みを浮かべながら言う。
「強化系だけど、エルスさんが思っているような能力じゃないよ、ダイヤストレージ、受けたダメージを蓄積して一撃必殺を放つ、それが俺の霊力さ」
アルバがそう言うと、両手に炎を纏い、エルス・ネットマグに近づく為に力強く地面を蹴り加速する。
エルス・ネットマグは両手をアルバの方へ向けて叫ぶ。
「来るな!」
エルス・ネットマグは危機を感じ取ると、周りに落ちている瓦礫を引き寄せて投げるを繰り返す。エルス・ネットマグの焦りが行動に現れていた。アルバは次々と飛んでくる瓦礫を避けながら更に加速してエルス・ネットマグの懐に潜り込むとエルス・ネットマグと目があった。
アルバは右腕を引いて言う。
「龍拳!烈火の咆哮!」
そう言うと炎を纏った拳がエルス・ネットマグの腹を殴りつける。すると拳に纏っていた炎が拳と腹の間に一点集約する。そして一点集約した炎は、まるで爆発したかのように激しく燃えてエルス・ネットマグを襲う。エルス・ネットマグは勢いよく吹き飛び地面に倒れ伏した。
アルバは髪が元に戻り、左右の腕からは炎が消え失せた状態で、息を切らしながらその場に立ち尽くしている。エルス・ネットマグは倒れたまま動かず、咳き込み口から血を吐いている。アルバはエルス・てネットマグが生きている事を確認して落ち着いたのか呼吸の乱れが治っていた。
工場を模した部屋は元の白い部屋に戻っていく。
アルバは白い壁と床に覆われた部屋で、壁に背中を預け、脱力した右腕を左腕で抑えながら立っていた。アルバは見るからに満身創痍だ。アルバが着ていた白かったシャツには血と土によって汚れていた。アルバの体は傷だらけで厳しい試験だったことが伺える。
アルバは手を抑えたまま声を震わせて今にも泣きそうな顔で言う。
「もう耐えられない」
アルバは試験に嫌気がさしており、今すぐにでも逃げ出したいと思っていた。
試験が終わった事をアナウンスが告げる。
「今回の試験の結果はアルバの勝利です」
試験が終わるとアルバの後方にある扉が開き、アルバは部屋の外に出た。
部屋の外には義母が待ち受けていた。
義母はアルバに近づいて言う。
「よくやりました、私は用事があるので先に帰っていいですよ」
アルバは小さな声で返事をして研究施設を後にした。
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