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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

拝啓、寝れない貴女へ。 幽霊も寝れません。

作者: 一色ONLINE
掲載日:2022/10/14

寝れない夜ってありますか?


寝れない時は何をしますか?


教えて下さい。


音が聞こえなかったらどうしますか?


目の前が真っ暗になったらどうしますか?


教えて下さい。


もし、全てを感じ取る事が出来なかったらどうしますか?

私は自殺しました。


何があったと聞かれても、何もかもあったが、何にも無かった、と答えるでしょう。


自殺とはそんなものです。


世間では死ぬ事に対して、とやかく口を出す大人が多いですが、そんな事は子供の私には理解出来ません。


もちろん、生きたいと思っている方が、殺されるのは違うと思っています。


私も、死ぬ事が最善だとは思っていません。


ただ生きる事よりもマシだと感じたからです。


昔、地獄絵図で見た事があるのですが、賽の河原。


子供が親より先に死に、石を積むのですが、詰んだ石を鬼が崩すのです。


親に会いたい、とかは私にはありません。


別に会いたい人もいません。


私が賽の河原をしても、石を積もうとはしないでしょう。


私はそんな良い子じゃありません。


だけど、そんな楽をしようとしている事が、神様には御見通しだったのでしょう……


だからでしょうか? 私は、私が生きる事よりも、死ぬ事を選んだきっかけに、なった人物の前に現れたのでしょう。


彼女は私と同じクラスメイトです。


クラスメイトと言っても私と彼女では天と地の差、鶴とスッポンです。


もちろん彼女が鶴で、私はスッポンです。


でもスッポンって美味しいらしいですよ? コラーゲンたっぷりで……


今はこんな話はどうでも良いですよね。


今、私がいるのは、そんな鶴の様な彼女の部屋です。


おかしいですね。 私が死んだ場所とは違うのに、どうして私はここに、いるのでしょうか?


いわゆる、幽霊と言う奴ですか。


私は、彼女の事をはっきり認識出来るのに、音も聞こえなければ、匂いも分からない。


分かるのは彼女が、机に向かって勉強をしている事です。


彼女も同様に、私には気付け無いようです。


彼女の部屋は、とても女の子らしい部屋だと思います。


少なくとも私の部屋よりは、可愛い物が沢山あり、清潔で、私には似つかわしく無い様に感じます。


私の部屋はありませんでした。


部屋と言うより、普通に廊下です。


我が家が引っ越す前は多少お金があった家だった様で、一等地とまでは言いませんが、静かで周りの方とも簡単にコミュニケーションが取れるくらいには、治安が良い場所でした。


その時には、私の部屋はありましたが、だからと言って彼女の部屋に勝ってるとは思いません。


どちらかと言うと無機質に近いのでしょうか、程々の勉強机に何冊かの参考書。


後はお気に入りの小説と、ベットがあれば私の部屋は再現可能です。


お金を持っていた時は、都内のお金持ちが通う様な、立派な学校に通わせてもらいました。


在学中には、友達と言える人も何人か居ましたし、クラスメイトもみんな優しく、程々に楽しい毎日でした。


だけど、父の仕事が失敗して、高い学校には通えなくなってしまった為、安い公立に編入する事になりました。


幸いにも、日頃から勉強をしていたからでしょう、勉強は問題無くついて行けました。


ただ友人と呼べる方には出会う事が出来ず、私は彼女と彼女のグループによって、酷いイジメを受けていたのでした。


例えば、毎朝上履きを隠されたり、鞄を捨てられていたり、着替えの中に虫を入れられたり……


だけど、その時は証拠も無かったですし、担任に相談しようにも、聞く耳をもって貰え無かったのです。


それに私は他人より、コミュニケーションが取るのが下手です。


何を言うのにも、直ぐに返事が出来ないですし、必勝の爆笑トークを持っている訳でも無かったです。


それに、見た目も良くて中の上か、中の下です。


オシャレをしている同級生を見ても、何がどうなって、色々な化粧やネイルが出来るのか、摩訶不思議でした。


唯一、人並み以上に出来たのが、勉強だったのです。


多分、コレが原因な気がします。


そんな事を考えているうちに、時刻は深夜一時を回りました。


彼女は布団に入いるなり.電気を消して、スマホをさわり初めました。


スマホと言えば、実は、持って無かったのです!


本当に私は、現代っ子だったのでしょうか……


私は、この時代に携帯電話を持って無かったのです。


とは言っても、昔は持ってましたよ? ガラケーを。


あ、今はガラケーじゃなくてガラホ? でしたっけ? まぁ、そんな事はどうでも良いんです。


当時、父も私にスマホを買うと言ってくれましたが、私がガラケーを選んだのです。


別に操作が出来ないとか、そんな理由ではありません。


もっと、シンプルな事です。


興味が無かったのです。


友達が多い方は友達と連絡をとったり、写真が好きな人は簡単に撮影出来たりと、色々あるでしょうが、私はそのどれも興味が無かったのです。


前の学校の方達とも、基本的には学校内で全て連絡を取っていましたし、何かあった時の緊急用として、携帯を買って貰ったのです。


ただそれも、お金が無くなった事で解約してしまい。


死んだ時にはお気に入りの小説以外は全て無くなりました。


ところで、彼女はずっとスマホを触っていますが一体何をそんなに見る事があるのでしょうか?


少し覗いてみましょう。


私が死を選んだ原因になった方です、別に罪悪感とかは一切ありません。


…………


年頃の彼女が見ていたのは、完全にアッチ系の卑猥な画像です。


なるほどなるほど、ここはこうなっているのですね。


学校の保険の時間に習った事はありますが、些かこれとは違うようです。


おやおや、彼女の方も盛り上がって来た様で、顔を真っ赤にしながらスマホの画面を必死に見ています。


もし生きていたら、これで揺すりを掛ければ、虐めを辞めてくれたかも知れません。


まぁ、私に、そんな事を言う勇気があればですが……


おおっと、終わった様ですね。


部屋を出て手を洗いに行きました。


どうやら私の身体は彼女の、周辺を漂うらしいですね。


廊下に出たり入ったりしました。


もちろん身体もスっと壁を通り抜けます。


おや? そろそろ寝るようですね。


とは言っても私は全く眠たく無いですし、幽霊は寝れるのでしょうか?


…………


無理そうですね。


目を瞑ってみたりはしましたが、意識が無くなったりもしません。


困りましたね。


どうやら私は彼女の周辺をただ、漂う事しか出来ない様です。


先程までは辛うじて、彼女のスマホで照らされていたのですが、それも今は無くなってしまい、真っ暗です。


本当に暗いです。


私が寝ていた廊下も、同じ位暗かったですが、時折、聞こえた足音や、微かな灯りもあったので、今より幾分かマシです。


それに、今は私には何も聞こえません。


そして真っ暗です。


嫌でも色々考えてしまいそうです…………


そう思っていましたが、やれば出来るものです。


気合いで彼女の方に近寄り、顔を凝視していると、微かに顔が見えるのです。


本当に微かです、私が僅かにでも動くと、何が何だか分からなくなってしまいます。


さぁ、こんな時こそ努力するのです、私。


ただでさえ、ぼんやりしがちのお顔。


輪郭を捉え、顔のシワを数える勢いで、凝視するのです。


と言っても、彼女の若くて綺麗なお顔には、シワの1つもないんですけどね。


シワと言えば、私はどうだったのでしょうか?


私の顔は、特別目鼻が整っていたりはしなかったですけど、シワはあったのでしょうか?


…………


ありました。


昔、ニキビが初めて出来た頃に、痛くて鏡で見た事がありました。


その時に頬や、おでこにあった気がします。


普段、全くと言っていいほど、表情筋を使わないからでしょうか?


ニキビを見ようと眉間に力を込めたら、元に戻らなくなったのです。


あの時の顔と言ったら…… 自分で見てもツボってしまいそうです。


私は普段から、無表情の事が多いのですが、自分でも見た事無いくらいに、原型を留めていない変な顔でした。


ふふ、私も一歩、成長出来た様ですね。


自分の面白い一面を、見つけてしまったのです。


おや? 外が明るくなって来ましたね。


こんな事を考えている内に、朝になってしまいました。


暫くすると、彼女が起き始めて、1階に降りていきました。


時刻は六時ですね。


彼女は確か弓道部でしたね。


あまり、早起きをするイメージはありませんが、運動部全般で見れば早起きは必須なのでしょう。


私の場合、部活にも入っていなかったですし、学校も近くだったので、決して早くは起きなかったですね。


むしろ、遅刻ギリギリ登校の遅起きです。


何と言うか、朝は苦手です。


こう、キラキラとした日差しが私には不釣り合です。


まぁ、だからと言って夜行性でも無いのですが、夜遊びも夜更かしも特にした事は無いですし、する意味もありませんでした。


あまり、夜のギラついた雰囲気が私には合わなかったのです。


むしろ早寝遅起きの私は、どちらかと言えば、超健康優良児でしょうか。


実際、私はかなり健康だったと思います。


風邪も引いた事がなければ、体調不良も無かったですし……


強いて言えば生理くらい、だったと思います。


それでも、私は軽い方で、プール以外の体育は別段休まなかったのです。


と、そんな事を言ってうちに、彼女の支度が終わってしまいましたね。


彼女は片親なのでしょうか? 優しそうなお母様がお見送りをしてくれてます。


もしかすると、お父様はもう会社に行かれたのか、まだ寝ていらっしゃるのでしょう。


何方にせよ、私には関係無いですね。


ちなみに、私は片親でした。


片親、と言っても、元々は両親が揃っていましたが、お金が無くなった事をきっかけに、私の母は家を出て行ってしまいました。


私も、どちらかに、付いて行かなければなりませんでしたが、父の方がマシだと思ったのですが、死んだあと思うと、別にどっちに行っても同じだったかも知れませんね。


でも手続きとかは父の方が得意だと思うので、やっぱり父で正解です。


こんな事を思っている内に、学校に着いてしまいましたね。


驚きです。


運動部の皆さんはこんなにもいらっしゃったのですね。


グラウンドや体育館が人で一杯です。


高校生になれば、部活は自由のはずですが…… あれですか、青春と言う奴ですかね?


私には関係無いですが、皆さん楽しそうですね。


おやおや、彼女も着替え始めましたね。


昨日も、今朝も色々な所を見てしまいましたが、この和装はいい感じです。


どうやら、髪も縛るみたいですね。


彼女は元々髪を長くしていた、私とは違いかなり短い髪型です。


髪型と言えば私は三つ編みなら出来ます。


こう、三本の束を交互に重ねると出来る髪型です。


私は髪を切るのが面倒だったのです。


ですが、同時に髪が邪魔でもあったのです。


そこで、白羽の矢が立ったのが三つ編みだったのです。


よく考えてみると、あれが唯一、私がやって来たオシャレに近い物だったのかも知れないですね。


それにしても、髪を結んで、弓を構えて居るだけで、ここまで様になる者なのでしょうか? やはり生まれ持った顔で、変わって来そうですね。


それに私が例えで出した鶴ですが、弓道をする彼女にはまさにピッタリの例えでしたね。


それにしても、上手いものです。


私には弓道の知識も経験も有りませんが、彼女の矢は遠く離れた的を正確に貫いています。


真ん中ばっかりです。


普通に凄いと思います。


ん? もう終わりですか? 私はこれならじっくり見て、暇潰しが出来ると思ったのですが……


またしても、着替えをした彼女は程々に片付けを行い、教室に向かっていきます。


凄いです。


死んだ後、学校に来ても何も感じません。


まぁ、本当に何にも感じ取る事が出来ないのですが…… いつも、私は真っ直ぐ教室に向かっていたので、こうも暇だと、辺りをキョロキョロしてしまいます。


綺麗に掃除をされている窓は、その年季を感じさせながらも、幾年も生徒達を雨風から守って来たのでしょう。


どの窓から見る景色も全て、殺風景で私は無駄に親近感を覚えてしまいました。


それじゃあ窓に失礼ですかね? この学校がいつからあるか分かりませんが、もしかすると私よりも年上かも知れませんからね。


おや、どうやらこの間ぶりの、私が通っていた教室です。


あ、思い出しました。


確か、転校してきて何日かたったある日、1番最後に来た私は、ここで、ドアの間に引っかかっていた、黒板消しを朝から落とされたのでした。


そうです。 これが私が初めて受けたイジメだったのです。


そんな事を思っていると、無音のまま、生徒は席に付き、担任が入ってきます。


先生はどうやら、かなり深刻そうな怪訝な表情で話しているそうです。


おおっと、皆が私が居た席をみています。


声は聞こえませんが、どうやら私が死んだ事が、クラスメイトに伝わった様です。


「嘘、でしょ……」


嘘では無いのですよね。


?? ん?? 今、声が聞こえた様な気がします!


久しぶりに聞いた声でした。


こんな無音状態なら、どんな些細な音も聞き漏らす事は無いのです。


「嘘よ、○○が死ぬなんて……」


今度ははっきり聞こえました!


おーい! おーい! 聞こえますか? 聞こえたら手を上げるか、振り向いて下さい!


どうやら聞こえない、みたいですね……


「事故…… どうして……」


ブツブツ俯きながら、言葉を漏らす彼女には、不覚にも少し、親近感が湧いてしまいました。


所で事故とは?


私の自殺が事故になっているのでしょうか?


この場合考えられるのは三つ。


一つは私の死後に、どうやら偶発的に本当に事故にあってしまった。


…………


これは無いですね。


私は森で首吊りをしたのです。


あるとすると、猟奇的変態が、私が死んだ直後発見して、何かしていた場合ぐらいでしょうか? 流石にあの森でトラックが突っ込むとかは考えにくいですし、どう考えても首の跡は残ってしまいそうです。


そして二つ目は、父が学校に事故として説明した事。


唯でさえ、忙しいはずの父です。


面倒な事を避ける為に言った可能性がありますね。


そして、三つ目は学校側には本当の事を言ったが、学校の判断で事故と説明したかですね。


普通なら、この三つ目を学校が、やったのであれば、大きな問題になりそうですが、ぶっちゃけ、私の遺書の内容であれば、そうなるのも納得です。


ここで、私の書いた内容を思い出してみましょう。


拝啓、御家族様や、この遺体を発見した方へ、私は〇〇と申します。


大変お手数をお掛け致しますが、私は自殺を行いました。


私の住んでいる周辺では、自殺に向いている場所が無く、こちらの周辺がうってつけであった為、選ばさせて頂きました。


私の実家のご連絡先は×××-×××-××××です。


父が不在の場合がありますが、その場合は×××-××××-××××までにご連絡して下さい。


この度は、発見者の方に多大なご迷惑をお掛けしました。


敬具


だった様な気がします。


普通の遺書とかと大分毛色が違うのは分かっているのですが、途中で書くのが面倒くさくなってしまったのです。


だとすると、やっぱり二つ目でしょうか?


私はあまり、父の事を理解が出来てなかったと思います。


父も私と同じで、あまり話す事が得意では無いようで、お互いが常に無言です。


殆ど業務連絡の様な会話しかして来なかったのです。


まぁ、育てた娘が途中棄権をしてしまった訳ですから、せめてもの配慮として、あの遺書を書いたんですけどね。


それにしても、案外見つかったのが早かったですね。


もっと時間が掛かるかと思っていました。


まぁ、そんな事はどうでも良いのです。


今は、彼女の声が聞こえた事の謎を解き明かしましょう。


あまり、ミステリーとかは好きではありません。


どうして、楽しい読書の時間に考え事をしないといけないのでしょうか?


唯でさえ、日常生活では考えぱなしなのに……


ですが、こう言う時の為に読んでおいても良かったかも知れませんね。


ですが、今回のケースだと、私が幽霊ですので、むしろオカルトや、SFを読むべきでしょうか?


まぁ、そんな事を言っても後の祭りです。


と言っても、ここまで、落ち込む事なのでしょうか?


あれですか、そこまでは思わなかった。


まさか死ぬなんて思わなかった。


虐めてるつもりは無かった。


軽い弄りのつもりだった。


そうやって俯いているだけの貴方には悪いですが、別に私は何にも恨んで無いんですよ?


これは本当に本当なんです。


そうですよね? 普通死んだら、死んだ時の理由を考えますよね。


そうですね。


どうして死んだかと言えば、本当に大した事は無かったのです。


本当の事を言えば、虐められていても、気にならなかったのです。


まぁ、簡単に言うと飽きてしまったのです。


私のお気に入りの小説に。


私のお気に入りの小説は、ファンタジー作品です。


かなり古い作品ではあるのですが……


ある時、町娘の少女と森を守っていた番人が恋に落ちてしまうお話です。


少女は薬を採取する為に、森に入りますが、そこで森の番人と出会ってしまいました。


この時、森の番人の顔は醜く、声も汚かった様です。


森の番人は何年もこの森を守っています。


少女は親を助けたい一心で森の番人を説得します。


森の番人は少女に要求するのです。


嫁に来るのなら薬を分けてやると。


少女は悩みましたが、家族の為にとあっさり結婚する事を了承するのでした。


そうして、少女に薬を分けた番人は、薬を届けに町に戻った、少女を待ちました。


何日も待ちます。


雨の日も、風の日も、雪が降って木々から葉が落ち、やがて若葉が生えて来ましたが、待ちます。


何回も何回も繰り返し行われる間、番人は待ちます。


やがで、一人の少女が荷馬車を引いてやってきます。


その少女と一緒に、藁の上に横になっていたのは、悪臭と共に、しわくちゃな顔をした、酷く醜く老いた、あの少女がいたのです。


荷馬車を押してきた少女は悲しみの顔で、門番に語りました。


彼女は貴方の為に、貴方と同じ顔、そして匂いを付けて来ました。


全て貴方の為にやった事です。


どうか、大切にしてください。


それを聞いた門番は、嬉しそうに荷馬車ごと、連れて行ってしまったのです。


終わり。


私はこの話が大好きでした。


好きな人の為に自分がやれる最大限を尽したのが、評価が高いです。


私に好きな人はいませんが、彼女の事は好きになってしまいそうです。


だけど、ある日、私は悟ったのです。


彼女は所詮フィクションなのだと。


そして、万が一実在していても、私の気持ちは届かないと……


だから、それを理解してからは小説を読む事辞めてしまったのです。


そうすると、どうでしょうか? 唯でさえ、ぼんやりしていた、私の世界は完全に、色褪せてしまったのです。


人間という生き物は、やり甲斐や、生き甲斐が無いと、いけない見たいです。


そう考えると、私はその生き甲斐が無くなってしまったのです。


多趣味の方であれば、別の事を生き甲斐に出来るでしょうが、この小説以外に、興味が無い私には、世界が色褪せてみえるのです。


でも、今、私は新たなる生き甲斐を見つけました!


あ、死んでいるので、死に甲斐です!


そうです! 彼女という女性の観察です。


以外にも彼女をみていると、飽きない事に気が付きました。


それに、少しですが、声も聞こえました。


であれば、もっと聞こえる様に頑張れば楽しみに変わるんじゃないでしょうか?


どうでしょうか? と言ってもそれ以外やる事がありません!


それでは、改めて……


おーい、おーい、聞こえますかー? 聞こえたら振り向いて下さい。


おーい、おーい、聞こえますかー? 聞こえたら振り向いて下さい…………


………………


…………


ん…… 駄目の様ですね。


声掛けの内容が良くないのでしょうか?


それとも声が小さいのでしょうか?


声量に関して言えば、結構頑張っているのですが、何せ自分の声も聞こえないので、確認の使用がありません。


本当に困ってしまいますね。


外はもう、夕暮れですね……


彼女が部活をしている間は、ずっと声掛けているか、黙って見ているかのどちらかしか、していないのに、もう終わってしまいました。


今はもう、着替えて彼女は自宅に向かっています。


やはり、話し掛ける内容が、良くないのでしょうか?


良い弓でしたよ! ナイスアタックです。


やはり聞こえてないみたいですねぇ。


私は幽霊ですので、もっと幽霊ぽい事言えばどうでしょうか……


おや、もしかして私は冴えちゃってますかね?


では早速……


「うらめしやぁ」


どうでしょう? 結構幽霊ぽい感じで語尾を強調してみましたが……


おおっと? 立ち止まったと思ったら、耳を抑えてこちらを振り向きましたよ。


では、改めてもう一回。


「うらめ「やめてぇぇぇ」


どうやら、幽霊ぽい事を言えば聞こえる様です。


恐怖の余りしゃがみこんでしまった彼女に私は話し掛けます。


「あ、あの、だ、だい、大丈夫でしょうか?」


私も幾分か緊張してしまい、生きていた時と同じ様に、どもりながら話し掛けてしまった。


「松永さんなの?」


おおっと、ここで私の名前が出てしまいましたね。


秘密という訳では無かったのですが、少しばかりミステリアスな雰囲気を作り出したかったのですが、バレてしまいましたね。


ですが、バレたのは名字だけです。


名前はまだです。


「そうです。 お久しぶりです」


ん、故人が久しぶりと言うのは表現として正しいのでしょうか?


些か疑問です。


「本当に、松永さゆりさんなの?」


おおっと、フルネームな全部バレてしまいましたね。


残念でした。


私の名前は対して珍しくも何ともない普通の名前です。


「ど、どうして、私の前に現れたの?!」


いつも私に、直接絡んで来る時はもっと高圧的な態度の彼女ですが、さすがに幽霊にはビビる様ですね、声が震えて、大きな声が出ています。


どうして、と言われても私もどうしてと言う気持ちです。


死んだらこうなるのか、それとも自殺だからこうなるのか、はたまた他殺なら違ったのか。


そんな事まで、私にはわかりませんし、正直興味も無いのです。


「特に理由も無いですよ」


えっ、と唖然とした表情を見せてくれました。


彼女のリアクション芸は豊富そうですね。


とっても面白いです。


「じゃあ、私の前にどうして現れたの?!」


話がまた振り出しに戻ってしまいそうだったので、私は今までの経緯を簡単に話しました。


死んだ後、何故か彼女の前に姿を現した事、それに音も聞こえなかったのに、何故か彼女の声だけははっきり聞こえる様になった事。


「なるほど…… そう言う事だったんだ」


私と彼女は経緯を話しながら彼女の家へと帰ります。


彼女の帰りは毎日、御夕飯時の様です。


彼女が帰宅後、手を洗いに行った際に、彼女のお母様らしき人が準備をしていました。


その後も私は彼女の観察を続けていますが、基本的には彼女が御家族の方と話をしていても私には聞こえないみたいですし。


私の一人言も一切聞こえて無いようです。


生まれて初めて、いや、死んで初めてですね。


人間観察がこんなにも楽しいと感じたのは、今までは特に意味も無かったので、そもそも他人に興味が無かった私ですが、こうやって、彼女の仕草を一つ一つ見入っていると、はっと気付く瞬間があるのです。


これが、俗に言う見蕩れていた。


と言う事なのでしょう、彼女が箸を持ち、野菜をそっと挟みそれを口に運ぶ仕草ですが、彼女の唇が妙に艶やかで、色っぽく感じてしまいます。


どうして、キャベツの千切りを食べて居るだけなのに、私のある筈が無い胸の鼓動を感じています。


彼女は学校に居る時と同じ様に、家でも楽しそうに笑ったりしていますが、これが彼女の二面性なのでしょうか、学校ではクラスの中心人物である彼女は目を輝かせて御家族の方とお話しをしています。


突然、目線がキョロキョロと聞こえる様な仕草で、辺りを確認しています。


ここで私は、はっ、としたのでした。


恐らく彼女は私を探していたのでしょう。


という事は、私と会話をしていないと私を認識出来ないという事なのでしょうか?


そして、あっという間に終わってしまった至福のお食事シーンは舞台をお風呂場に移しました。


別に意地悪や、自身の欲望の為では無いのです。


仮にそうであったとしても、実験を兼ねていたのでセーフです!


彼女と私は会話する事によってお互いに認識出来ると過程するならば、会話をしなければ認識出来ずに見えないのでは無いでしょうか?



顔を真っ赤に服をもじもじと脱ぐ彼女の問に答えてしまうと、私の至福の瞬間が奪われてしまいそうなので、ここは心を鬼にして、全力で無視します。


私の名前を小声で必死に呼ぶ姿は悩殺物です。


ですが、もっと過激だったのが、家の中であるのにも関わらず、羞恥の表情を浮かべ、局部を必死に隠してる姿は、幽霊の身で在りながら昇天しそうでした。


ここから先は完全に見蕩れて居た私の不徳につきます。


記憶が曖昧です。


「松永さん」


些か、のぼせていたせいで、せっかく名前を呼ばれたのに、覇気のない返事をしてしまいました。


「え、大丈夫なの?」


大丈夫は大丈夫ですが、これが毎日見れると思うと、楽しみが増えた気がして舞い上がってしまいます。


「松永さんが、私の前に現れたり消えたりするのは意味があるのかな?」


まぁ、有るには有るのですが…… 今の所この体質? の様な幽霊現象も日に日に変わるので、私自身も正しくは理解していないのです。


「消えてる時ってどうしてるの? 何か見えてるの?」


この質問の返答を誤れば、私の楽しみは無くなってしまいそうです。


「どうでしょう。 今の所は真っ暗の中に居ますね。 これが罰なのでしょうか?」


やってしまいました。


シンプルな嘘です。


本当は全部見えています。

「そっか真っ暗なんだ…… 所で罰って何?」


おかしな事を聞きますね、私が自殺した罰の事ですよ。


まぁ、これも仮説にしか過ぎないのですが……


「え…… 自殺って何? 事故って聞いたよ……」


完全に忘れていました。


そうです、私は事故死をした事になっていたのですが……


「そう…… だよね…… 自殺なんだよね…… そっちの方がしっくり来る……」


マズいですね。


このままだと、私の楽しみが奪われてしまいそうですね。


「安心して下さい。 別にイジメが原因で死んだ訳でも無いですし、私が自殺をしたのは貴女のせいでも無いんですよ」


えっ、と言う声と共に彼女は固まってしまいました。


まぁ、冷静に考えれば、虐めていた女が幽霊になって現れれば誰だって驚きますよね。


現に初見では驚いていましたし。


「ちょっと待って、私は松永さんを虐めて何か無いよ」


えっ


彼女に釣られて変な声を出しそうになってしまいました。


これまた、冷静に考えれば分かる話です。


いじめっ子は皆が皆、よし虐めようと、息巻いている訳では無いのです。


結果的に虐めになっているだけ、という場合もあるのです。


「そうじゃないよ! 奴らから庇ってたじゃんか!!」


やや、強めの言葉で私に抗議してくる彼女の表情が余りにも必死だったので、当時の事を振り返ってみます。


学校で、私の靴が隠された日の事。


(あ、靴が無い……)


(やれやれ、少し寒いですが、このまま教室に行くしかないでしょうね)


いつも遅刻ギリギリの私は、足が冷えていくのを感じながら、教室に向かいます。


いつも最後に来る私はさながら、不良生徒と言った所でしょう。


教室に入れば、注目されがちなのです。


いつも通り、遅れて来た私を皆が横目て見ていきます。


ですが…… そうここで彼女がやって来たのです。


「ねぇ、靴は?! 何で履いて無いの?!」


(何故と言われても、無いからしょうがないとしか思えないのですが……)


「とにかく席に座って待ってるんだよ」


そう私に告げると教室を出て行ってしまいました。


(何でしょうか、朝から大きな声で威嚇をされるだけされてしまいました)


暫くすると、担任と彼女が教室に入って来ました。


先生は来賓用のスリッパを私に渡して、自分の靴が見つかったら返しに来てとだけ言って、教卓に戻り、朝のHRを始めました。


見つけたら返しますが、何方が探してくれるのでしょうか?


むしろ新しいのを買った方が早いのでは……


いけないいけない、私の家はもう、貧乏になってしまったので新しく買う余裕は無かったのです。


その後は特に無かったですかね?


あ、後日ボロボロになった靴が私の机の上にありました。


回想はこんな物ですかね?


「え、今の話で私が本当に虐めていたって言うの?」


「違うんですか?」


「全然違うわよ! あの靴はゴミ箱の中に捨てられていたのよ」


ふーむ、特段ミステリーは好きではない私ですが、こんな感じの凡ミスで全てが、バレるって言うのは良くある話ですよね。


「どうして、靴の場所を知っていたのでしょうか?」


やはり、幽霊になったことで、私も強気になってしまったのでしょうか?


この関係が成立しないかもしれない発言。


もう、彼女と会話する事すら出来なくなって仕舞うかも無い発言。


だけど、それは余りにも必死に私に語る彼女がイケナイのです。


私に訴え掛けるならば、私の中心に居るあなたに私は返さなければいけないのです。


「どうして、靴の場所を知っているの?」


ですが、私の不安や消失感、更にはこの胸のざわめきまでもが、全くもって無意識であったのです。


耳や目頭まで真っ赤にした彼女の唇は小刻みに震えています。


「私が探したからに決まっているでしょう!!」


そう恥ずかしがる姿に私は困惑しています。


何か、思っていたリアクションと違う……


それに探してくれたと言う事でしょうか?


私はココ最近の人間関係で主に彼女を観察していたのですが、その彼女が見せる羞恥の表情と同じなのです。


正確には耳を真っ赤にさせる時は決まって恥ずかしいと感じているのです。


本当に私を虐めていた訳じゃ無いんですか?


彼女は怒った表情を見せて否定します。


なるほど、やってしまいましたね。


これは私の勘違いと言うやつですね。


「ご不快な思いをさせて本当にごめんなさい」


私は彼女に対して深くお詫びしました。


彼女は少し拗ねた様な表情を見せていましたが、私の知らなかった、私の周りについて教えてくれました。


私に問題児という認識は無くて、家が大変な子だという事、だからこそ、学校では皆が私に優しくしようとしていてくれた事。


だけど、どうしても心無い人がいるから、そんな人から守る為に私に度々話し掛けていてくれたことを。


なるほどですね。


確かに、不思議に感じる瞬間はあったのですが、いじめの事を含めて、私も特に気にしてなかったのが、勘違いの原因だった様です。


「誤解が解けたみたいで良かったんだけどさ、じゃあどうして…… その……」


私は先の事でしっかり学習したのです。


察しは付きます。


「私が死んだ理由ですよね?」


どうやら、察する事に成功しました。


彼女は気まずそうではありながら、コクリと頷いています。


私は、私のお気に入りだった小説の話を彼女に教えました。


「あ、知ってる! あれでしょう? あの童話集に出てくる話の一つだよね!」


なんと、何と彼女は私のお気に入りだった本を読んだ事があるらしいのです!


これは驚きと云うより、嬉しい事です。


これが読書仲間というのでしょうか?


私は私が好きだった物語の特にお気に入りの場面を理由も含めて話してしまいました。


迷惑だったのでしょうか?


彼女は私の説明では納得出来ていない様で、若干困惑気味です。


「えっと、こんな事言いたく無いけど、森の番人のお話は松永さんが言う様なラブロマンスじゃないよ。 どっちかと言えば教訓とかに近い内容だよ」


なんて言う事でしょうか、ここで私は彼女とまた対立してしまいました。


本当に困ってしまいます。


彼女と同じく、私も困惑していたのでしょう。


彼女は私の顔を見ると何処が教訓になっているのかを教えてくれました。


あの話での登場人物は全部で四人です。


森の番人、少女、お母さん、そして荷台を持って来た少女。


彼女が教えてくれた森の番人はこんな感じです。


ある日森に来た少女は病気の母の為に薬草を取りに来たのだと、だが、森の番人が居たので薬草を貰えない。


条件として言われたのが、結婚する事。


ここからが私と彼女で解釈が変わります。


少女は母を助ける為に森の番人を騙しました。


そうして薬草を手に入れた彼女は、母を癒し数年後に別の男性と結婚して子供を授かりました。


ですが、少女はやがて病に侵される様になりました。


それはあの時、自分の母親がかかった病気だったのです。


その病気を治すにはあの森の番人に会いに行く必要があったのです。


少女は病気の原因を探る為に母親を訪ねました。


話を聞いて少女はびっくりしました。


母も同じ様に森の番人と結婚の約束をして薬草を分けてもらって居たのです。


少女は悩みましたが、理解しました。


この病は呪いだと。


森の番人と約束した者は必ず呪われる。


であれば、私で終わらせなければと……


そうして、病が進行した彼女はろくに動く事が出来なくなり、顔は醜く変化し、悪臭を放つようになったと。


そうして、彼女は森の番人と約束を果たすべく身を捧げると……


感想だけ言えば彼女の話では、確かにラブロマンスでは無さそうだった。


むしろ、教訓というより、ちょっとした英雄譚の様にも聞こえた。


所でどうして彼女はそんな事まで知っているのだろうか?


「言ったじゃない、あの話は童話集の中の一つだって、つまりは元ネタがあるのよ」


元ネタと言われても、私はその元ネタを知らない訳で、あの本を読んだだけでは全ては理解出来ない。


「いい? すっごい簡単に言うと、デ○ズニーとかでの話は、凄く美化されてるけど、本当は怖い話だったみたいな感じなのよ」


なるほど、しっくり来た。


テレビがあった頃に見た事があった様な気がする……


「松永さんとこうしてちゃんと話すのは初めてだけど、凄く不思議な感じだね」


前の学校では、天然やドジっ子、おっとりしているとは良く言われたが、不思議は初めてた。


私はここに来て彼女に惹かれている理由に気が付いた。


私が行ってきた当たり前は彼女にとって全部違う。


私が知り尽くしたと思っていた事は、まだまだ未知で溢れていた。


私が出来ない事を楽しそうにこなす姿。


私が似合わない服を着こなす姿。


私が持てない興味を知っている姿。


色んな姿が私とは違った。


でもどの姿も、彼女の可憐な姿を見る事によって幻想から希望。


そして憧れに変わったのだろう。


私は彼女が好きになったのだ。


産まれて初めてだった。


心の底から友達になりたいと思ったのが、私は他の人と違って良かった。


何も気にならなかった。


だけど、彼女を見ていると飽きない。


もっと見ていたい。


私はそう思っていた。


だがらこそ、私は聞いてしまったのだ。


「それじゃあ、私を本当に虐めいていたのは誰?」


私の知らない私に教えてくれる彼女に聞かずには、いられなかったのだ。


「…… ごめんね…… そこまでは私も分からなかったの……」


意外にも彼女にも知らない事はあったのだ。


だけど、彼女は約束をしてくれた。


絶対に探すと。


そうして、私がどうしてこうなったかを調べると……


だけど、その日は訪れる事は無かった。


私は私が初めて好きになった彼女の身体を操っているからだ。


分かりやすく言おう。


身体が入れ替わったのだ。


だが、私の身体は既に無い。


一体彼女は何処へ言ってしまったのでしょうか?


小さくではあるが深い溜息を付いて私は呟いた。


困ってしまいましたね……



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[良い点]  面白いと思います。設定は今までも、読んだことありますけど主人公の性格がオリジナリティあると思いました。主人公の語り口が、コミカルで可愛らしいですね。  タイトルも、いい感じだと思いました…
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