朧げの中の光明
本作品は『東方project』の二次創作です。原作に作者の発想、解釈を加えたものになります。その点ご了承ください。
(そんな馬鹿なっ…結界が破れるなんて…!)
瞬槍「リベンジオンザゴット」にぶっ飛ばされながら霊夢は思った。
(こんなの有り得ない…)
そのまま祠に突き刺さる霊夢。
「しっかし、、、ヤバいわね、これ」
(服の色がなんか変ね…)
そっと服を撫でてみる。そして服の下の無機質な感触に気づく。
「ああ…」
どうやら祠の壁の板が胴を貫通してしまったらしい。服の色だと思っていたのは血の色のようだ。
(魔理沙はどこへ行ったのかしら…)
あたりを見渡してもどこにもいない。おそらくどこかでくたばったか逃げたのだろう。
まあ知ったとこでって話なのにねと自嘲してみる。
ゆっくり謎の女が近づいてくる。
「陽炎様ー!大丈夫でしたかー!」
「大丈夫に決まっておる。不覚をとるお方ではない」
遠くで見守っていたのか取り巻き達がやってきた。
(あいつ、陽炎って言うんだ…)
ぼうっとする頭でそう考えた。
(ああ、こんなふうに死ぬのかな…)
走馬灯だろうか。霊夢は昔のことを思い出していた。
霊夢には親がなかった。ただ気づいたら博麗神社に住んでいた。妖怪総括者の紫の言葉を借りるなら「いつのまにかそこに存在していた」。誰も霊夢が博麗神社に入るところを見ておらず、神聖かつ重要な場所である博麗神社に幼子が住み着いたという事態に幻想郷首脳は騒然となった。が、ちょうど博麗神社の管理を行う博麗の巫女の座が空席であったため、霊夢を博麗の巫女に任命し、巫女として一人前に成長するまでは紫が補佐するということで決着がついた。そこから霊夢は厳しい修行を強いられた。博麗の巫女としての立ち振る舞い。博麗神社の管理。博麗大結界の管理。そして博麗の巫女としての強さ。全てを求められた霊夢は半分親のような存在の紫に対しある種の情愛と厳しい修行を強いられる恨みの間でごちゃごちゃになりながら日々を生き抜いていた。
ある日、ついに霊夢は自力で異変を解決して戻ってきた。同行した紫の式神の藍も目を見張るような圧倒的な勝利だった。
「倒してきたわ」
「そう。藍から聞いたわ」
「…褒めてはくれないのね」
「これぐらい当たり前になってもらわないといけないからね」
「はあ…」
「…手を出しなさい」
「は?」
「いいから」
恐る恐る手を出す霊夢。
その上に紫は自分の手を重ねる。
次の瞬間ー
「ま、眩しい…!」
2人が光に包まれる。そしてゆっくりと弱まっていった。
「何…これ…?」
霊夢が薄ら目を開けながら言った。
「霊夢、あなたを13代目博麗の巫女に正式に任命する。これ以降は博麗霊夢と名乗るように」
紫がそう宣告した。
「え?でもまだまだ力量が足りないって昨日も…」
「実はまだ博麗の巫女としての能力を部分的にしか渡してなかったの。万一あなたが博麗の巫女になれるほど強くなかったらって危惧してね。けれど、あなたは今日部分的な力でも異変を解決できると証明した。だからその残りも今全てあなたに渡した。もう私がいなくても十分あなたはやっていけるわ」
「…でも…」
「そんなに怖がらないの。もうれっきとした博麗の巫女なのよ?」
紫が霊夢の頭をそっと撫でる。
「でもこれだけは忘れないでね、霊夢。異変は博麗の巫女だから解決するのではないのよ」
「?」
「異変はね、博麗の巫女として幻想郷を守るために解決するの。今まで私は何人も目的を見誤って誤った手段を選び、身を滅ぼしたやつを見てきたわ。覚悟はいい?これからはあなたがこの幻想郷を守っていくのよ、霊夢。」
その時始めて霊夢は紫に抱きしめられた。
そのあと紫達は博麗神社を去りー今に至る。
(こんな時になに思い出してんだか…)
ふっと我にかえる霊夢。
(でも悪くはないな…)
ズンズンと近づいてくる4人の敵の面を眺めても恐怖すら感じられない。痛みすらわからない。
それでも。それでも。それでも。
『これからはあなたが幻想郷を守っていくのよ、霊夢。』
そうだ。私は守らなきゃいけない。この幻想郷を。うっとおしい人間のためにも。めんどくさい妖怪の連中のためにも。あいつらはあいつらでいいやつなんだから。
霊夢が身を起こす。敵が止まる。次の瞬間、満身創痍の霊夢が叫んだ。
「全ては幻想郷のために!!」
【博麗大結界】幻想郷全体を覆う巨大かつ強力な結界。これにより、外の世界と幻想郷の行き来を不可能にしている。
成立は明治17年、幻想郷の妖怪が集まって幻想郷の主神たる龍神に許しを乞うたとされているがあくまで伝説である。管理は博麗の巫女と妖怪総括者の八雲紫及びその式神が行っている。
【式神】もともとあった妖怪に術をかけて眷属化したもの。
いいねやブックマークをして下さるとニャーゴが喜びます。