決別
本作品は『東方project』の二次創作です。原作に作者の発想、解釈を加えたものになります。その点ご了承ください。
「やっぱりあなたがかんでたのね、霊夢」
紫が霊夢を睨む。
「黒幕登場ってとこね」
霊夢が煽る。
「そうね、全くもってその通りだわ」
「妖夢を消すつもりなの?」
「当然でしょ。知ってはならないことを知ってしまったんだから」
「よほどあの倉庫には知られてはならないものが入っているようね、ますます気になるわ」
「霊夢…どうしてここまで反抗するのかしら?」
スキマを開いてしめ縄から障子紙を引き抜く。
「博麗の巫女として知らなければならないと思ったからよ」
「知らなくていいものを…」
西行妖の桜の花びらがみるみる落ちていく。倉庫が根本に吸収されるように封印されていく。
「幻想郷を守るためなんだからいいでしょう?」
「守りたいならなおさら知ってはならないわ」
「何を…」
「あなたはただ我々首脳が解決すべきと判断した異変を解決すればいい。ただそれでいいのよ。その方が楽でしょ?」
「確かに楽ね」
「ならそれでいいじゃない」
「でもね…いつまでもレールの上に乗ってられる事態じゃないのよ。例の集団にしかり、今回の事件にしかり…幻想郷はこのままじゃ阿鼻叫喚の地獄絵図と化すわ。もはや楽とか言ってる場合じゃないのよ」
「ほほう…レールの先は地獄行きって言いたいのかしら?」
「地獄じゃまだ生温いかもしれないわよ」
「ふん…まあでもそれはそれ、これはこれよ。妖夢には死んでもらうわ」
「…それで本当に幻想郷を守れると思ってるの?」
「少なくとも今の幻想郷は守れるわ」
「…今だけじゃあダメね」
霊夢が大幣を構える。
「そんな考えじゃあとてもあいつらに敵うわけない!」
霊夢の殺気がヒリヒリと伝わる。
「今を生きていられたら、それでいいとは思わない?人間のくせによっぽど欲が深いのね」
「どうせ今でもいつでも後悔して生きるんだから、せめて少しでも後悔し甲斐がある未来にしようってだけよ!人間は欲深い生き物なもんでね!」
「未来を考えるな、おこがましい。我々の作る未来で十分よ」
「未来を考えない人間なんて人間じゃないわ。妖夢は守るわよ」
「ならば対価を出すことね」
「対価…?」
「妖怪は人間よりも現実主義者なもんでね。妖夢を殺さずに済む対価を出せるならそれでいいのよ」
(どうせ出せないでしょうけど)
紫はほくそ笑んだ。
霊夢は足元の妖夢を見る。
死んではいないが、被弾したのだろう。意識がもうない。
「妖夢はただ私達に従っただけ…だから記憶はとってもいいとしても命までは取らないで欲しい」
「ほう、してその対価は?」
「首脳による博麗の巫女の保護義務の撤廃」
「…何ですって?」
「堅い言葉じゃ伝わらないかしら?博麗の巫女が首脳のしがらみとは永遠におさらばだって言ってんの!これでこっちもそっちも思い切った行動を取れるでしょ、対価には十分すぎると思うのだけど」
「自分の生死ですら危うくなるわよ。それでもいいの?」
「最近のあんたらについて行っても、ただの権力闘争で終わってあいつらに滅ぼされる運命しか見えないわ」
「そこまで我々のことを…いいでしょう。対価は受け取った!」
霊夢に近づき、妖夢を抱き抱える。
「約束通り、妖夢の命までは取らない。記憶は消させてもらうけどね。あなた達は勝手に動いて、勝手に死んでいるがいい!」
「決別よ、紫」
「ええ…さようなら」
スキマを開き、その中に消えていく。
「妖夢を殺すなら、片っ端から首脳を襲うからね」
「流石に約束は守るわ…これ以上反抗してくる敵は作っても意味はないし」
スキマはゆっくりと閉じていった。
書いた後って大体こんな展開でよかったのかなと後悔してる気がする。
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