死にゆくものに冒涜を
本作品は『東方project』の二次創作です。原作に作者の発想、解釈を加えたものになります。その点ご了承ください。
「今からって…わかってんのか?西行妖の封印を解くなんて異変だぞ?!今はおろかいつだってやるべきではないだろ!」
「でも、こうでもしないと倉庫で何が起こったかわからない。妖夢の言う通り、仮説止まりになるわ」
「そりゃそうなるけどよ…こっちは異変を解決する側だぜ!異変を起こしてどうするんだよ!」
「別にいいんじゃない?」
「おい、霊夢。何で博麗の巫女が異変を起こす側に回ろうとしてるんだよ」
「回ったっていいじゃない」
「は?」
「ただ異変を解決するのが博麗の巫女の仕事じゃあないのよ。問題は白玉楼を誰が襲撃したのか、何が目的なのか、それと妖夢のとこの爺さんの過去改変の可能性。その謎が全て西行妖の倉庫に封印されているなら、異変だって起こすわ」
「けれど、封印を解かれた西行妖は近くにいる人妖の精気を吸い殺すんだろ?そこはどうするんだぜ?」
「…結界を使えばギリギリなんとかなると思う」
「そこまで危険を冒してやることなのか?」
「…妖夢の話を聞いてると、どうも犯人は陽炎、あるいはその関係者な気がする」
「勘か?」
「勘よ。でも、これだけは言わせて。はっきり言って陽炎の情報がなさすぎる。幻想郷を滅ぼしかねないやつだって言うのに。そして私達は奴らに遠く及ばない。これはもう歴然としているわ。せめて何かしてないと…何か動かないと…何だか焦って仕方ないのよ」
霊夢の目はマジだった。
「…私がやりましょう」
妖夢がそう答えた。
「結界何かよりも私の半霊を使う方がいいでしょう。半霊は精気がない上に分身もどきになれるので、遠隔操作にはもってこいです」
「妖夢…」
「私も知らなすぎる。ただおじいちゃんの武勇伝だけ聞いてそれで満足してました。けどそれと同時に見なきゃいけないことから目を背けてきた。もうこれ以上目を背けるのは終わりにしたい」
「…わかった」
魔理沙も納得した。
「確かにここまで来て何もしないと言うのもな!協力してやるぜ!」
「魔理沙は多分特にすることはないと思うわよ」
「ええ…」
「そういえばどうやって封印を解くの?」
「恐らく…血の匂いから考えて…あのしめ縄にこの障子紙を挟むみたいね」
「血の匂いって…」
「伊達に紅魔館のメイドやってないわよ?」
「褒めてねーよ!」
「茶番もほどほどにしなさい。…妖夢、じゃあお願いするわね」
「霊夢さん達はどこから見るんで?」
「そうね…じゃあ西行妖の枝のところから見下ろしておくわ」
「確かに精気を吸い取るのは根本かららしいですからね。そこなら霊夢さん達もよく見えるかと」
「妖夢は?」
「飛びながらの遠隔操作はできないので地べたに座ってやると思います」
「じゃあ、任せるわよ、妖夢」
「了解です!」
霊夢達が一斉に空に飛び立つ。
妖夢は半霊を分身に変える。
妖夢が霊夢達を見上げる。
霊夢達はもう枝のところに到達している。
半霊が西行妖に近づく。
地面に置かれた幽々子の血が付けられた障子紙を拾い上げる。
そのまま西行妖の根本に到達する。
妖夢と霊夢の目が合う。
しめ縄に障子紙を入れる。
締め方がきついのかなかなか入らない。
魔理沙がつばを飲み込む。
ガサッ
入った。
次の瞬間、西行妖の周りが暗くなる。
どんどん寒くなっていくのを感じる。北風が吹き付ける。
ヒュウ、ヒュウ
西行妖が笑っているようだ。
そんな中、西行妖はみるみる成長していく。
あっという間に蕾をつける。
次々と花が咲いていく。三分咲き、五分咲き、八分咲きー
「これが真の西行妖…美しいですね…」
満開。その妖艶な立ち姿はかなり離れているはずの妖夢でも見惚れてしまうほど。
「倉庫は?倉庫はどこなのぜ?」
魔理沙が我に返って問うた。
「あれ?…まさか…私の仮説が間違っていたの?!」
「いや、合ってるみたいね。根本を見て」
西行妖の根本を見る。
根っこがメキメキと音を立てて持ち上がる。
凄まじい土埃を上げながらー
ズンッ
大きな地響きを轟かせながら巨大な倉庫が飛び出した。
「そ、倉庫だ!」
「扉に穴がある!これで間違いない!」
半霊が倉庫のかんぬきを外しにかかる。
「あれ、このかんぬき…」
視覚を共有している妖夢が呟く。
かんぬきの上の方が少し壊れていて中が少し見えた。
そこから水色の着物がチラリとー
「それが何か何て気にしちゃダメよ、妖夢」
霊夢が忠告する。
「とことん前に進みなさい」
「分かってます、でも…」
妖夢が言葉に詰まる。
「でも、紫様ってこんな人なんですか?幽々子様のことをなんとも思ってないのですか?」
「…あいつは人間じゃない。妖怪よ」
「…そうですか」
半霊はかんぬきを優しく置いた。
扉をゆっくりと開ける。
ドサッ
扉に立てかけていたものが倒れる。
一体何かを確認しに行く半霊。
「おじいちゃん…」
落ちたのはやや大きめの体格の服を着た骸骨だった。
散らばった白髪。緑色の袴。胸のところには…魂魄家の家紋。
「おじいちゃあああん!」
妖夢は泣き叫んだ。
分かっていた現実とはいえ、その残酷さに目を伏せる霊夢達。
「我々をどこまで冒涜すれば気が済むのだ、紫はあああ!絶対に許さない、許してなるものか!」
激昂する妖夢。
「あら、許してくれなくて結構よ?」
妖夢がハッと後ろを振り返る。
「消すだけだから」
そこにいたのは紫だった。
小説研究に2日かけたので少しはよくなってることを期待したいです。
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