白玉楼事件の真相
本作品は『東方project』の二次創作です。原作に作者の発想、解釈を加えたものになります。その点ご了承ください。
ー数時間前、白玉楼
「幽々子様ー、本日のお昼は何になさいますかー?」
返事がない。ただの屍のようだ。
「決めて頂かないと精進料理にしちゃいますよー!」
台所から幽々子のいる床の間に向かう妖夢。
ガラッと障子を開ける。
「何だ…居眠りしていらっしゃるだけか…」
幽々子は机に突っ伏していた。
「みょんなところで寝てたら風邪をひきますよ!寝るなら横に、起きるなら食事に、…アレ?」
妖夢が幽々子を抱き起こそうとすると違和感に気づいた。
幽々子の背中が濡れている。
背中を抑えていた手をどけると…手は青みがかった血が付いていた。
「く、曲者!」
妖夢は楼観剣と白楼剣を抜く。
「どこだ!幽々子様をやったのは!」
「ここだよ。あなたが来るのを待っていた」
背後から声が聞こえた。
「そこかっ!」
しかし、妖夢は振り向けなかった。
背中を伝う生暖かい液体。急に感じる背中の鋭い痛み。刃物を引き抜かれる脱力感。
「…馬鹿な…この私が背後を取られる何て…」
意識が遠のく中、曲者が再び幽々子に近づいていた。
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妖夢が目を覚ますと布団に寝かされていた。
近くには紫の藍が荒れた白玉楼の後片付けをしていた。
「…幽々子様は…」
妖夢は口を開いた。
「幽々子様は永遠亭で治療を受けている。5、6箇所刺されていたからな。お前は1箇所だけだったから白玉楼での治療で問題ないとの紫様のご判断だ」
「幽々子様はご無事ですか?」
ガバッと跳ね起きる。
「手負いがそう急に身体を動かすな。…命に別状はない。もっとも幽々子様は亡霊なのでな」
「そうですか…よかった…イテテ」
「ほら、そうなっただろうが。まだ横になっときなさい」
大人しく横になる妖夢。
「ところで…刺されたところを見るに鋭利な刃物ってところだったが、間違いないな?」
「はい、間違いないかと」
「襲撃者の特徴は?」
「残念ながら姿を見る間もなく倒されたので…」
「情報なし…か。それでも剣士なら気配とかでわからないか?」
「…少なくとも今まで戦った相手ではないとしか言えないです」
「…わかった」
藍は取り出していた手帳を引っ込める。
「妖夢。幽々子様の従者として伝えたいことがある。紫様からの伝言だ」
「はい。何でしょう」
妖夢は起きてかしこまる。もう怪我は大丈夫のようだ。
「この事件のことは一切隠せ」
「何故です?」
「幽々子様、ひいては幻想郷の名誉のためだ」
「…?」
「幽々子様には首脳という幻想郷を守護する役目がある。首脳とは幻想郷中で種族関係なく最強のものを紫様が選び、守護者としたもの。しがない曲者にやられたとあっては白玉楼が、いや首脳全体が軽んじられることになる」
「幽々子様が…軽んじられる…」
「そうなってしまっては幻想郷はおしまいだ。秩序も力の均衡も崩壊し、ただの弱肉強食の、野生動物のような世界になってしまう。それだけは避けなければならない。…武士道では辱めを受けるくらいなら死ぬのだろう?もしこのことが明らかになってしまうと幻想郷中の笑いものになるぞ」
「幻想郷中の…笑いもの…それは避けたいですね…」
「そういうことだ。わかったならそれでよろしい。ではもう大丈夫そうならここをお前に任せるがそれでいいな?」
「はい、もちろんです」
妖夢は藍に深々と頭を下げた。
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「それがあなたが持つ情報の全てね」
「はい…」
霊夢に全てを話した妖夢。
「でも…これで本当に白玉楼は笑われる何てことには…
「ならない!」
霊夢が強く言い切る。
「白玉楼の襲撃を行動に移せる胆力がある時点でそいつはかなり強い。あんたらが弱いんじゃない。向こうが強すぎなのよ。そして…仮に笑うやつがいるなら私がぶっ飛ばす!」
「…ありがとう…霊夢…!」
霊夢は妖夢の手をしっかり握っていた。
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「おー!咲夜!見つかったか?穴の空いた倉庫っていうのは」
西行妖のところにいた魔理沙が近づく咲夜に声をかける。
「なかったわ」
「はー?じゃあどこにあるって言うんだぜ?探し足りないんじゃないか?」
「だからここに来たんじゃない」
「え?お前、まさか…」
「そうよ。西行妖…これこそが倉庫なのよ!」
できたら今日もう一作投稿します。
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