紫の闇とフランのいたずら
本作品は『東方project』の二次創作です。原作に作者の発想、解釈を加えたものになります。その点ご了承ください。
「ではなるべく隠密に頼むわよ」
「誘拐や殺人ならともかく…盗むなんてお茶の子さいさいだよ?そこまで気にする?」
「この作戦には私のわがままとはいえ我々一門の命運が掛かっている。その第一歩…ここでしくじっては困るのよ」
「はいはい、心配性なんだから、全く…じゃ、行ってくるよ」
部屋を出て扉を閉じる。緑色の目が怪しく輝いて…消えた。
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「白玉楼に不穏な動きあり、ですって」
「へー…え、マジ?」
あれから特にこれという情報も得られずに手持ち無沙汰になっていた霊夢と魔理沙の元に咲夜がやってきた。
「わざわざ神社までありがとね。ところでそれ誰情報?」
「文屋よ。文文丸新聞を買ってるから何でも話してくれるわ。数少ないお得意様ってことでね」
「アイツの新聞そこまで人気なかったの?!…まあ、いいわ。一応事実には基づいてそうね」
「何が起こっているのかは分からなかったそうだけど、白玉楼に入った瞬間にいつもより空気が冷たく感じたそうよ」
「単純に冷えてただけじゃないのかー?」
魔理沙が口を挟む。
「文屋の勘は半々よ。当たる時もあるし当たらない時もあるわ」
「駄目じゃねーか」
「でも言わないに越したことはないでしょ」
「うーん、確かに…霊夢はどう思う?」
「…行こう。上手くいけば何か手がかりが見つかるかもしれない」
「そうだな!それじゃ白玉楼へ…
「ちょっと待った」
「わっ!ゆ、紫?!」
いつのまにか開けたスキマから身を乗り出す紫。
「紫!一体の用?私達はこれから出かけるのだけど?」
「簡潔に言うわね。悪いんだけどねえ…当分の間、白玉楼には近づかないで欲しいの」
「何で?」
「何でもよ。とにかく白玉楼及びその周辺への侵入を禁ずる。これは首脳総代命令よ!」
「理由もないのにそんなの受け入れられないぜ!」
魔理沙が反発する。
「もう既にこの博麗神社、紅魔館、魔理沙の家にはスキマをいつでも開けるようにしといたわ。下手に動けば私自ら貴方達を始末することになる…もう貴方達は監視下にあることを忘れないことね!」
「だから理由は一体何なんですか!」
咲夜が尋ねる。
「理由?…強いて言うなら幻想郷のためよ。それと霊夢…これ以上陽炎のことに首を突っ込まないように。自分が起こした火で自分を焼くことになるわよ」
「…紫…」
紫はスキマの中に消えていき、スキマも閉じた。
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「おかしいぜ、あんなの!白玉楼に何かあるって言ってるようなものじゃないか!」
魔理沙が怒鳴りながら壁を殴る。今霊夢達はスキマの監視を少しでも減らそうと監視下の対象のうち一番広い紅魔館に来ている。
「とはいえ…紫の命令よ。諦めなさい」
「そんな!霊夢!お前は幻想郷を支配しようとか言ってる奴らを野放しにする気かよ!」
「それはそうなっちゃうけど…じゃあスキマの監視網をどう潜り抜ける気よ?」
「確かアイツのスキマは元々設置したところにしか出現しないんだろ?じゃあその場所を把握しとけば…」
「駄目でしょうね」
咲夜が割り込む。
「どこにもいないとなればまずすぐに白玉楼を固めるでしょう。そこさえ守っておけば紫様としては目的は達せられたのだから」
「うーん…なるほどねえ」
「だから紫には歯向かわないのが得よ。これ以上は何も出来ないわ」
「あのなあ、霊夢!そういうところが…」
魔理沙が言いかけた言葉をはっと飲み込む。霊夢がこの上なく悔しそうな顔をしていたからだ。歯で唇を噛んでさえいる。
「…ごめん、霊夢。少し言いすぎた」
魔理沙が謝る。すると…
「あ、霊夢と魔理沙と咲夜だ!今日はメイドじゃないんだね!」
フランがやってきた。
「あら、フラン。今日は何というか…その…ただのおしゃべりをしにきただけよ。メイドじゃないわ」
「妹様。まだ朝ですので昼食はまだまだ先でございます。お部屋にお戻りを…」
「霊夢、咲夜…誰に向かって喋ってるのぜ?フランはここに…あれ?」
霊夢の前にもフラン。咲夜の前にもフラン。魔理沙の前にもフラン。
「「「フランが3人?!」」」
「4人だよー!」
ドアの影からもう1人フランが飛び出す。
「何なんだぜ?!陽炎の部下の襲撃か?!」
「慌てないで、魔理沙。これは妹様の…」
「禁忌『フォーオブアカインド』!」
4人のフランが同時に叫んで1人に戻った。
「どう?何か暗そうだったからちょっと驚かせてみようと思ってね。面白かった?」
「面白いも何も…ただ驚いたわ」
「妹様…咲夜は面白かったです!」
「驚かすのがどうやったら面白いに繋がるのよ!この紅魔組め!」
「キャハハッ!それでこそ霊夢だよ!」
フランの笑い声を聴きながら魔理沙は深く考え込んでいた。
「魔理沙…どうしたの?」
フランが覗き込んで尋ねる。
「…霊夢、咲夜。白玉楼に行くぞ!」
何とか日付が変わるまでには間に合った…ふう。
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