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アオハル魔導ログ  作者: 鈴木成悟
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根っこは日本人

ノープランで書いたらよくわからない方向に。

何でこうなった? ←ノープランだから

 魔導センターを出た面々は、ファミレスに集まっていた。


「……今日は上手くいきませんでしたね。もっとこう、簡単だと思ったんですが……」


「アトラクションを一つ置くのも大変だったね。思った通りに仕掛けが動かなかったり、難易度が理不尽になったり」


「理不尽なのはアレです。パイセンが楽々とクリアするから、ちょっとムキになったと言いますが、反省してます。――でも、二回目で完璧に対処されたのはどうかと思います!」


 山盛りのポテトを摘まみながら、コーラで口を洗う。


「南雲くんは人間離れしてるけど、魔導を一切使ってないからね。むしろ、私達の方がズルしてるのに、まったく勝てないからね。剣聖の凄さというか、人間ってあそこまで動けるんだなって感心するよね」


 吐き出す鬱憤に比例するように、山盛りのポテトはかさを減らしていく。

 またたくまに半分になってしまい、タブレットで追加のポテトを注文する。


「……そうなんですよね。スペックではあたし達の方が上なのに、とっさの判断力とかで負けるんですよね。――ってわけで、誰よりも低スペックなのに人間離れなパイセンは、その辺をどう思いますか?」


「どう思う、か――まずは野菜も食べるべきだな」


 話を振られた悠太は、タブレットを手にサラダや野菜系の一品料理を注文した。


「油と炭水化物だけではダメな太り方をするぞ。まあ、二人とも全体的に肉付きを良くした方が健康的には成るだろうが、ただ太るのでは体型から何から崩れるぞ。何が足りてないかは計算をする必要があるが、希望するなら組み立ててやってもいいぞ」


「体型の話題なんて誰も振ってないんですよ!! セクハラで訴えますよ!?」


「肉体のスペック関係なく上手く動く方法に語ったつもりだぞ?」


 タブレットを元の場所に戻しながら、成美に向き合う。


「素人は反射神経が重要だと考えるだろうが、そんなのは一要素に過ぎん。重要なのは全体視と、数手先を読んで行動する思考力だ。初見殺しの対処に関しては、動揺を抑える胆力や、いち早く正常な精神状態に持って行く冷静さも必須になるがな」


「それがどうしたらセクハラに繋がるんですか!?」


「精神的な鍛錬がすぐに実を結ぶはずがないからだ。魔導師なら魔導でカバーした方が良いに決まってる。その上で俺に出来るアドバイスとなれば、全ての基礎である肉体の管理以外にあると思うか?」


 納得するしかない合理的な理由であった。


「加えて、基礎がしっかりしている方が魔導によるサポートも効果を発揮しやすい。仮に一〇%の効果があるとして、一〇〇の肉体と一五〇の肉体なら、一五〇の方が効果が大きいだろう? 首から下は飾りと言われる研究職であっても、超一流なら身体にも気を配ってるぞ」


「……仮にですが、パイセンにアドバイスをもらうとして、必要なものなんですか?」


「身長、体重、体脂肪率、アレルギーの有無は必須。可能なら一週間分の食事内容と、食べ物の好き嫌いや好みの調理法だな」


「…………体重とか、必須なんですか?」


「当たり前だろう。カネを取るなら加えてオートクチュール作るレベルの採寸データも欲しいところだ。現状を知らずにどうやって改善案を出せと言うんだ」


 言ってることはまっとうなので、うなり声を上げながらルーズリーフを取り出す。

 シャーペンをノックし、顔をしかめながら記憶する限りの情報を記載していく。


「………………スリーサイズまで書きましたので、絶対に人に見せないでくださいね。あと使い終わったら燃やしてください。絶対ですからね! これはフリじゃないですよ!!」


「分かった。明日部室で渡す。――牧野先輩はどうします?」


「え? えー……っと、…………一晩、考えさせて欲しいな。最近、体重計乗ってないし」


 注文したサラダが到着する。

 ライカと成美の二人は、それを小皿に取り分けた。


「パイセンは食べないんですか、サラダ?」


「夕食分は最初に注文済みだからな。それに、サラダはあまり好みではない」


「もしかして、好き嫌い? 南雲くんはそういうのないと思ってたけど」


「毒でなければ、どんなにマズいものでも食べれますよ。食べるモノがなければですが。――まあ、サラダに関しては量の割に栄養素が取れないことと、ドレッシングをかけると脂質や塩分過多になるって方が大きいですが」


 ドレッシングをかける二人の手が止まる。


「脂質と塩分過多って、どういうことなの? 野菜なんだから、ビタミンたっぷり取れるんじゃないの?」


「ビタミンはもちろん取れますが、問題は野菜の水分です。ほうれん草に火を通せば分かりますが、半分以下になりますよね? サラダだとその半分を食べなければいけませんし、お腹も膨れるので量が取れません。なので、野菜の栄養素を取りにくいんです」


「ドレッシングはどうなんですか!? かけなきゃ草なんて食べてらんないんですけど!?」


「酢と油と塩コショウがドレッシングの基本だ。ゴマだのイタリアンだのはそこに色々と加えていくから――あとは言わなくても分かるよな?」


 脂質も塩分も人体には必須の栄養だが、現代人は取り過ぎる傾向にある。

 取り過ぎるとどうなるかと言うと、肥満や高血圧などの成人病に繋がってしまう。


「じゃあ、なんでサラダなんて頼んだんですか?」


「逆に聞くが、サラダ以外を食べたか? 少なくとも、今の話を聞く前に」


 返答がないのが答えである。


「過多と言っても、一食や二食なら誤差だから今日は気にするな。ちゃんと一品料理も頼んでるから気になるならそっちも食べればいい」


「ちなみにだけど、サラダ以外で注意する食べ方とかあるのかな?」


「野菜で言うなら、温野菜ばっかりとかですね。ビタミンは水溶性なので、茹でると栄養がゆで汁に流れます。煮物なら煮汁を飲めば問題ありませんが、温野菜はゆで汁を捨てますからね。ちなみにビタミンを残したいなら、油で炒めるのが正解ですよ」


「なら、野菜炒めとなら……でも、油を使うと脂質を取り過ぎになるんじゃ」


「調理に使う分も計算すれば問題ありませんし、使いすぎなければ問題ありません。そっちよりも塩分とかですね。外食すると基本多めですから、酢を使ったり薄口醤油に変えたりして、薄い味付けに慣れるのが良いです」


 海外で、和食が健康食に分類される理由に薄口がある。

 出汁から抽出した旨味を中心に味を組み立てるため、塩が薄くとも満足感が出る。

 また、天ぷらなどの揚げ物を除けば、調理の過程で油を使う機会も限られるので、脂質も少なめとなる。

 問題があるとすれば、旨味を好まない人からすればただ薄いだけの料理になるということ。

 若者が和食よりも洋食を好むのは、旨味を中心とした繊細な味付けよりも、パンチの効いた味付けを好む傾向があるからである。


「南雲くんって、自分で料理してるんだよね? もしかして、その辺をコントロールするためにやってたりするの?」


「ええ、そうですよ。さすがに管理栄養士ほど厳密にはやってませんが、調理法まで指図する手間を考えると自分でやった方が楽ですからね」


「管理してるのに、ファミレスでハンバーグとか食べてもいいの?」


「先輩はもしかして、俺のことを仙人か何かだと思ってませんか? 俺だって今時の若者なんですから、偶にはジャンキーな料理も食べたくなりますし、食べることを娯楽にしたくもあります。……自分で作ってると、どうしても味が似かよるんで、飽きるんですよね」


 なお、同じ味に飽きるというのは日本人の特徴だったりする。

 欧米などでは三食全て冷凍食品というのも珍しくなく、その冷凍食品も代わり映えしないことが多い。

 剣聖の名に恥じないストイックな食生活を送っているが、根っこは日本人なのである。


お読みいただきありがとうございます。


執筆の励みになりますので、ブックマークや評価、感想などは随時受け付けております。よろしければぜひ是非。

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