13
少し進んだ先に、不思議な家を発見した。
小さな可愛らしい家だ。おとぎ話に出て来るドワーフが住むようなところ。
そこだけが不気味な森から解放された神聖な場所のような気がした。植物が生き生きと茂っており、空気が新鮮だ。
思わず「綺麗」と言葉を発した。
私は好奇心に負けて、どんどん家の方へと近づいていく。それと同時に心が癒されていることに気付いた。
暖かい空気に包まれていく。その瞬間、どこからか声が聞こえた。
『誰か来たよ~~』
『人間!? こんな所に来るなんて珍しいっ』
『追い出す?』
『ここは神聖な場所だから、穢れた人間は入ることが出来ない。……もう少し様子を見てみる?』
いくつもの可愛らしい声が聞こえてくる。
だが、彼らの様子は見えない。私のことを「人間」と呼んでいるってことは、この声の者たちは人間ではないのだろう。
やっぱり不思議な世界に来たんだ、と再認識する。
これ以上、あの木で出来た家には近づかない方が良いのかもしれない。
『うわ~~、見て、琥珀色の瞳っ!』
『ほんとだっ! 珍しい!!』
目の前にいきなり掌に収まりそうな羽の生えた小さな人間が視界に入り込んできた。
「え!?」
私は目の前で起こっている状況に理解出来ず、思わず声を出してしまう。
可愛らしい男女の妖精のようなものがいる。……妖精のようなものっていうか、きっと妖精。絶対妖精!!
確かにファンタジックな世界だと思っていたけれど、本当に目の前に妖精が現れるなんて思いもしなかった。
私の反応に驚いたのか、妖精たちも『え』と目を丸くした。
どうしてお互いにビックリし合っているのだろう。可愛らしい顔だな、と思いながら私は彼らを見つめ返した。
『僕たちが見えるの?』
『嘘でしょ……。そんな人間いないはず……』
妖精なんて存在しないと思っていたけれど、今までの考えは捨てよう。
妖精は存在するんだ……。
勝手に妖精はもっとスレンダーで大人っぽくて、話さないものだと想像していた。けど、目の前にいる妖精たちは特別に細いわけではない。それにどちらかと言えば話し方も見た目も子供っぽい。
てか、なんで妖精の言葉が分かるんだろう。
そもそも、妖精が見えている時点でおかしいのかもしれない。……この世界の常識をまだ知らないから何とも言えないけど。
『これって見えている人の反応だよね?』
『うん、だって私たちと目が合っているもん』
その言葉に反応したのか、どんどんと私の周りに妖精が増えてきた。
私を物珍しそうに観察している。どんな反応をするのが正解か分からないまま、とりあえず口を開いた。
「えっと、こんにちは?」
何故か疑問形で挨拶をしてしまった。