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小さな輝星  作者: 翠雨
3/6

 ヒヤッとした空気に、身震いし、辺りを見渡す。落ち葉に埋もれたまま眠ってしまったようだ。土や泥、葉っぱまみれになっていた。

 昨日は何とか乗りきったけれど、これからどうしよう。あんな剣を持った兵隊が向かってくるなんて。家に帰れば、ばぁちゃんまで巻き込んでしまう。ばぁちゃんを危険にさらしたくはなかった。

 どこも同じように見える森のなかでも、いつも通っている場所なら見分けがつくのだが、辺りを見渡しても、見覚えのある場所はなかった。太陽のある方向が東だから、大体の方角で、家から離れるように歩いた。ばぁちゃんを巻き込まないためには、家を離れるしかないと思っていても、寂しくて、悲しくて、一歩踏み出す度に涙が溢れた。

 昨日よりは穏やかな光を、放つ流れ星を見ながら考える。昨日のお願いが通じたのかな?暗闇では目立ちすぎたから、あまり光らないようにお願いした気がする。…まさかね。



 家から離れるように歩いていたら、森の途切れる場所まで来ていた。広い草原が広がり、畑や水田も綺麗に作られていた。絶景の田園風景のなか、立派なお屋敷が見える。どこを見てもきれいで、王都のごみごみとした景色との違いに呆然としていた。王の治める領域を抜けて、隣の領域に来てしまったようだ。

 太陽がのぼり、昼の暖かさが心地よい。のどかな田園風景にホッとして、木に寄り掛かって座っていたら、だんだん眠くなってきてしまった。状況はなにも改善していないけど……ちょっと疲れたかな。



「君!大丈夫かい?」

 はっ!!しまった!眠ってしまった!!

 目を開けると、若い男性?整った顔に、綺麗な服装。っていうか、高そうな服ね。

 そんなことをしか考えられずに、ぼーっと見ていると、私の目の前、声をかけてきた人との間を、流れ星がフワフワ、フワフワ~。

 あっ!ダメ!見つかっちゃう。また逃げないと!!

 ところが、彼は表情を崩すことなく、

「優しい光だね。」

「え?」

 流れ星も噂を知らないわけではないと思うのだけれど。思っていた反応と違っていた。

「ん?大丈夫かい?」

「え!えぇ。大丈夫。眠っちゃったみたい。」

 害意はないのかもと、少し安心する。

「君はどこから来たんだい?」

「あの、その。王都の回りの方にあるごちゃごちゃした町から。」

 なんだか、貧民街の入り込んだ道や、無理やり建てられた家々が思い出される。なんとなく、貧民街出身だとは、言えなかった。

「王都からこんなところまで歩いて?困っているなら助けになるよ。」

 困っているなら…。そうよ!星を誰かにあげないとならないんだった!!

「あっ!じゃあ、私の星、もらってくれない?」

「ん?どういうことだい?」

 彼は、すごく困ったような、悩んでいるような。

「この星があると、家に帰れないの。剣を持った人に狙われるから。星は誰かにあげてしまわないと。あなたは、星を見ても表情一つ変えなかったし、声をかけてくれたし、優しそうだから、あげてもいいかなって。ほんとはベイズおじさんにあげようと思ったんだけど、このまま町には戻れないから。」

 とにかく説明しないとと、思っていたら余計なことまで話してしまった。

「まだ、そんな風習が…。んー。じゃあ、君は、働く気はあるかい?」

 働く??働きたいと思っていたけれど、いざ聞かれると、ビックリしてしまって、不安にも思ってしまって、即答できなかった。

「え?仕事をしたいと思っていたの。私でも、働けるかな?」

「君がやる気なら大丈夫。ついておいで。」

 そういえば、仕事の話になってしまって、星をもらってくれるか聞き忘れていた。

「あっ!でも星が…。」

「相当怖い思いをしたんだね。大丈夫。それで、君に危害を加える人はいないよ。」

 誰でも星は欲しいものだと思っていたのだけれど、もらってくれないということだろうか。



 彼について歩いてくと、森の端から見えていた綺麗なお屋敷の前だった。

「セレナ、この子を頼む。仕事を探しているんだ。」

「あらカイ…」

「シっ!」

 なぜかセレナと呼ばれた女性が名前を呼ぶのを遮ったので、カイから始まる名前だとしかわからなかったが、彼もここで働いているのだろうか。

「あなた、名前は何て言うの?」

「カ、カンナです。」

「カンナちゃんね。私はセレナよ。よろしくね。」

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