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小さな輝星  作者: 翠雨
2/6

 夜風が気持ちいい。今日買ったばかりの米と、キノコのソテー、木の実をデザートにして、十分満足のいく食事だった。そうだったとしても、そろそろ働いて、私も家計を支えられるようになりたい。いつまでも子供扱いされているようで、自分を認めてもらえてないようで、悔しいと思うのだ。

 ばあちゃんに、明日の仕事についていっていいか聞こうとして、寸前のところでやめる。

 今日の帰りが少し遅くなったことで、心配されたのだ。今聞いても、逆効果だ。機嫌のいいときにしようと思う。

「いつまでも窓を開けて、外を見ていないで!」

「あぁ、はいはい。」

 あまり長い間外を見ていると、文句を言われるのはいつものことだ。

「流れ星が落ちてきてくれればなぁ。」

 幸運を運んでくるという流れ星。もし、私のところに星が降ってきたら、ばあちゃんは、仕事をすることを許してくれるだろうか。

「そんな子供みたいなこといってないで、早く窓を閉めなさい。」

「わかったよ。」

 後ろ手に窓を閉めたとき、夜空にひときわ明るい一筋の光が走った。


 今日も森のなか、一人いつもの採集ポイントを回っている。

 今朝、ばあちゃんに仕事を教えてくれと頼んだのだが、そんな簡単ではないと怒られてしまった。ばあちゃんは、貴族の家を訪問して、庭の掃除をすることでお金をもらっている。最近、腰や肩を痛がることが増えた。手伝わせてくれてもいいと思うのだが…。

 一人ブツブツと愚痴をこぼしながら歩いていたら、いつもは立ち入らない森の奥までやって来てしまった。

 しまった。帰り道がわからなくなる前に戻ろう。

 すると、目の前にフワフワと光るものが飛んできた。

「これはなに?」

 光るものはそのまま私の回りを飛び続けている。

 もしかして、これが地上に落ちてきた流れ星ってやつ?幸運を運んでくるっていう。私のところに来るなんて、夢のようね!!

 しばらくフワフワと飛ぶ流れ星を見ていたが、夕方になっていることに気がついて、急いで家に戻った。暗くなるにつれて、流れ星の光が目立ち、人目も気になってきたので、途中から家まで走って帰った。

「ばあちゃん。ただいま。見て!!流れ星が私のところに来たの。」

 振り返ったばあちゃんは、嬉しそうな顔をしていると思ったのに、青くなって慌てていた。

「カンナ!流れ星は誰かにあげておいで。貧乏人が持っているとロクなことがないよ。」

「え?せっかく幸運をはこんでくるのに??」

「貧乏人には、逆だよ。お金や権力のあるやつらが、星を奪いにくるんだ。それで殺されちまうこともあるんだから。」

 早く誰かにあげておいで。と家を追い出されたが、誰にあげたらいいのかわからない。せっかくの流れ星だから、あげるのは誰でもいいとは思えなかった。

 星が似合う人。いつも優しくて、色々教えてくれるベイズおじさんの顔が浮かぶ。ベイズおじさんなら、流れ星を持っていても大丈夫そうだ。ベイズおじさんには、いつも世話になっているし、星をあげてもいいと思えた。

 米屋の方に向かおうと通りを曲がったとき、騒がしい集団が近づいてくる。

「いたぞ!!こっちだ!!」

 明らかに私の方へ向かってきている。え??なんで??

「星持ちがいたぞ!!その星を渡してもらう!」

 若い兵が、剣を抜いてこちらに向かってくる。逃げないと!!頭ではわかっていても、足がすくんで動かない。あぁ!!殺されちゃう!!

「おい!やめろ!!殺したら星が消える!!」

 初老の兵が追い付き、若い兵を諌める。

 その瞬間、背を向けて走り出していた。

 どこか隠れられる場所!!毎日通っている森の中なら土地勘がある。

 森の木々の間を走り抜けていく。足場が悪い。月明かりだけではちょっとしたでこぼこまではわからず、何度もつまづいて転びそうになった。

 あまり、入ったことのない森の奥まで来てしまったが、まだ後ろからおってくる声が聞こえる。

「あの光るのが目印だ!!追え!!」

 そうか、暗闇で光っているから目立つのか。とにかくどんどん森を進むしかなく、もうどこにいるのかわからない。

 あっ!

 つまづいて転んだら、洞になっていて、落ちてしまった。

 落ち葉がたまっていたので、思ったほど痛くなかった。落ち葉に隠れていれば、光る星も少しは目立たなくなる。

 お願い!そんなに光らないで!!

 このまま見つからなければいいと身を丸めていた。

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