ショートショートファンタジー
「地下アイドル物語」
「私、有名になるまで この家に帰るもんか!おかんは今日も他の男の人と不倫してるようだし オトンは 昼間っから酒浸りだし!」
高校を卒業したばかりの須田美音は問題ありありの両親と決別するために 大阪へ春から行くことにしたのだ。
無謀にも大阪に文無しで行くわけじゃない。
関西では名の知れた敏腕プロデューサー若林元気(42歳)に 夏に路上パフォーマンスした時にスカウトされたのだった。
若林曰く 類稀な美音の才能に惚れ込み
1ステージ5000円、アパート代とか出すから大阪の新世界で暮らさないか?と 美音をスカウトしたのだった。
夏の段階では 美音は 有名なプロデューサーの元でのスカウトとは言え母親に猛反対されていた。
しかし 年末に路上パフォーマンスする時には母親は毎晩のように 不倫相手の元に行くようになり 家に帰ってこないことも多くなった。
怪我の功名なのか? 母親は美音が大阪で暮らすこと アイドルとして稼ぐことに 今年になって急に賛成しだした。
それは 母親自身も 夏に知り合った彼氏と不倫してる負い目を感じているからだろう。
「どうでもいい あなたの好きなようにやれば!? それに こんな岡山県真庭の田舎より大阪の方が あなたは自由に羽ばたけるでしょ。 士郎(父親)は 呑んだくれだしね」
そう 言って 約10万円を 美音にカンパして 美音の大阪行きを なぜか後押ししてしまったようだ。
2019年3月6日に 大阪の新世界の あるアパートで暮らしはじめた。
501号室だ。
5階の部屋からは通天閣とか新世界の賑やかなお店の様子も眺めることができる。
本来なら1ヶ月家賃は45000円だが これがアイドル活動することにより 無料になるなんて なんて若林プロデューサーは 太っ腹な方なのだろう!
502号質の お隣さん「マミ」って子も 若林プロデューサーに最近スカウトされ ここで住みはじめたそうな。
大阪に引っ越して若林プロデューサーにマミを紹介されたが、ピンクの髪が トレードマークで 常にハイテンションな年上の女の子だった。
元宝塚のスターになる夢を持ってたが 今は そのキャリアを活かして立派なアイドルを目指してるそうな。
しかし宝塚を辞めた理由とか なぜ 髪がいつもピンクなのか それは若林曰く聞くのはタブーらしい。
2019年3月9日。
若林プロデューサーの最初の お仕事。
お仕事ミッション
「日本橋ストリートフェスタ2019で 合計100人の人に写真撮られたら ギャラ5000円支払う。
100人以下だとノーギャラにします。
200人以上だと10000円のギャラを支払います
私は 用事があるから 君たちに ある人物を紹介したら帰らなくちゃいけない。 だが、その子が 君たちが累計100人の人と写真撮らせてもらえたかどうか計算してるので 御心配なく!
明日の朝10時に 心斎橋にある「喫茶アメリカン」の入り口で 詳しくはお伝えします。
君たちが多くの人に認知される事を願ってます。」
若林元気
新世界から環状線に乗って 衣装を入れたケースを持った 美音とマミは 若林プロデューサーの 初ミッションについて朝から熱いトークを繰り広げていた。
「マミのところにも若林プロデューサーから 同じLINEが入ってたんだ。初ミッションなので ぜひ このミッション成功させたいわ〜 」
「よーーし!やったろうじゃないかーー美音ちゃん!
このクエストを超絶いい感じに クリアしたろうよ!
この日のために わちきは魔法少女まどマギの コスプレ衣装をメルカリで買ってきたのだよん」
「まどマギの主人公って 髪がピンクだよね!?って おい! マミの今の髪色と 同じじゃない〜 ウケるぅ〜」
「だろーーっ プププっハート咲き乱れるピンクガールマミで〜す なんちて〜」
歩くと遠いけど環状線だと あっという間に 千日前駅に到着したので やや重い衣装ケースを持ったマミ達は喫茶アメリカンに 余裕を持って10時前に到着した。
そして 早々と到着してる若林の横には着物姿の女の子が立っていた。
「美音にマミに おはよう!」
美音「おはようございます」
マミ「おっはよーー 」
着物姿の女の子「お初ですぅ〜 あっしは京都から来ましたアイドル目指してる 嵐山伏見子といいまする〜
敬語とか 使わんでええけん 気楽に 話しかけておくんやし〜」
シャイな性格なのか 目を見て話す事はなく うつむきながら 美音達に 挨拶した伏見子。
だが京都出身だけに 上品なオーラが漂っていた。
若林プロデューサーは 賀来賢人をまじめにしたような ちょい賀来賢人を老けさせたような見た目だ。
物腰の柔らかい感じが若林のプロデューサーとしての役割を引き上げているようにも思えた美音だった。
「さあ、皆さんお揃いのようですね。 では こちらのお店にマミから 入ってね」
マミは若林に言われるより先に喫茶アメリカンの中へ入った。
うわーーっ、なに コレ 超ヤバイんですけどぅ〜
シャンデリアに螺旋階段に 映画のワンシーンか!
ヤバターーン いい意味でーー」
騒々しいマミの声が 入り口の外から 聴こえてくるので若林は 苦虫をつぶしたような表情をしていた。
若林は アメリカンだけ頼んだようだ。
マミはプリンとレモンスカッシュを頼んだ。
プリンアラモードを頼んだのは 伏見子
ホットケーキを頼んだのは 美音。
美音「すごーい!この分厚くてふわふわな ホットケーキが この世にあったなんて 超美味しい。」
伏見子「ホットケーキも良いですが こちらのプリンアラモードも ほんまに 美味しい」
人見知りがちな伏見子も プリンアラモードを食べ進めるうちに 笑顔になっていった。
若林プロデューサーは 彼女らに 喫茶アメリカンのスイーツなどをご馳走し、彼女らのテンションが上がったのを確認して 伏見子にあとは任せたようだ。
若林「では 私は これで失礼します。みんなー 頑張ってね。 もし200人以上だと 君たち三人で 何かめっちゃ稼げる企画も 遂行しようと思ってます。うふふふふ
なんだろうね まあ コスプレフェス、楽しんできてね
それではーー」
なにやら意味深な言葉を言って去っていく若林。
日本橋コスプレフェスストリートの更衣室に到着したのは12時過ぎだった。
その時間帯には まるでアニメか映画か 撮影かと 言わんばかりのハイクオリティなコスプレイヤーさんが ウロウロしていた。
また 多くのコスプレイヤーさんは レイヤー同士で写真を撮ってたようだ。
伏見子は和装のままだが、マミは「魔法少女まどか」
美音は「fate」のセイバーの衣装に着替えた。
マミ「どうじゃーーい わちきの まどか☆衣装〜 超 イケガールだろーーっ?」
美音「確かに似合ってます。マミさん 不思議キャラだから ある意味 魔法使いみたいなもんかな〜」
マミ「それ どういう意味よ〜」
伏見子「まぁまあ 落ち着きなはれ マミ殿〜」
るろうに剣心のコスプレした人一座「拙者 とのツーショット きっと素晴らしいものとなるで ござるよ」
セイバーの衣装が 神がかって似合ってる美音は さっそく 左之助、薫、剣心 らと写真が撮れたようだ。
そして
ちょい歩くだけで これまたドッキリなのか!?
と思うほど いろんなコスプレした人、普通のオタクみたいな人に声をかけられ
写真を撮られまくった。
オタク風なおじさん「セイバーちゃん なんかポーズやってみてーー 」
美音「こうですか〜?」
モデルの仕事とかしたことないし未体験だが 美音は自分なりに適当なポーズをした。
オタク風なおじさん「めっちゃええやん!セイバーちゃん。 今度は違う角度で撮らせてもらうよ。
あっ 違うポーズキボンヌ。」
美音は 慣れない コスプレ初体験だが こんなに チヤホヤされて アイドルいわず コスプレイヤーとしても いけるんちゃうかと 内心思っていたようである。
華やかなコスプレイヤーさんが多い中
若林プロデューサーの目に狂いがなかったのか
誰よりも美音とマミの元に人が集まったようだ。
そして けっしてコスプレしてるわけじゃない伏見子にも写真を求める人が 後を絶たないようだ。
16時までに なんと!美音とマミは202人もの人々と写真を撮らせていただいた。
しかし なぜか16時前から 水色の何のコスプレしてるのかわからない 年齢不詳な女性と ちょくちょく目が合うようだ。
多くのコスプレイヤーさん達と写真撮りまくり 落ち着いた その刹那。
水色の衣装の女性が 美音らに 歩み寄ってきた。
伏見子「これは これは 昨年の夏のアイドルフェスで準優勝なさった 串カツガールのリーダー 南斗麗華様
ようこそ あっしらのとこに おいでやす〜」
表情がクールで 水の流れるような美しい所作の麗華。
しかし
なにかを美音らに感じ取ったのか 唐突に クールさとは 裏腹に熱い言葉で 語り出した。
麗華「若林プロデューサーらに 私やほかのメンバーはスカウトされたのよ!
でもさぁ 若林プロデューサー 私達を裏切ったのよ!
そのせいで 昨年夏のフェスでは みんなメンタルやられて 優勝逃したの」
伏見子「あの時は 本当に麗華様〜さぞ おくやしかったことでしょう。 心中察し申します」
マミ「んでさあ 麗華さあ まだ わちきの事 怒ってるの?!」
麗華「マミ……… あなたは ある秘密があるよね!?
その秘密を ずっと私は あなたが「串カツレインボー」に在籍してる時 黙っていたのに
あなたは 私の年齢を私と喧嘩した時にTwitterで つぶやいたわね」
マミ「それがどうしたー おばさーん 」
麗華「私は ほんとは三十よ…… いや24歳よ」
表情一つ変えず 麗華は 真顔で 自称24らしい年齢の数値を答えた。
どうやら マミには秘密を隠し持ってるようだ。
麗華らのグループ「串カツレインボー」のメンバーだったようだ。
串カツレインボーの前のプロデューサーが若林なのも引っかかる。
麗華とマミは 色々と 因縁があるのか
立ち話が1時間も続き
どうして そうなるのか わからない ミッションを麗華はマミらに 叩きつけてきた。
麗華様ミッション
2019年のアイドルフェスまでに マミ、美音、伏見子でユニットを組んで アイドルフェスに参戦してほしい
との事だ。
だが どこまでも ぶっ飛んでるマミは その麗華のミッションの火に油を注ぐ発言をした。
マミ「上等じゃねえの!てか もし 串カツレインボーらよりフェスで成績が悪かったら わちきらは その時に わちきの秘密を Twitterで流すわ。」
まだ美音らは ユニットを組むとも若林から許可さえ おりてないのに 麗華らと ユニット組んで夏のアイドルフェスに 無理やり?出ることになったようだ。
LINEで 美音は その事を若林に伝えたい。
若林のLINE「こんばんは。本日は 素晴らしい数の人々にアピールできたようなので ギャラ1人10000円支払います。
そして 麗華に会ったのね。
ムフフフ 私の目論見通りです。
そう、200人以上達成した時に私の頭の中で君達をユニット組まそうと考えてました。
本当に ユニット組みたい フェスに参加したいって言い出すなんて
私は 感激です。
よし!明日からハコライブとレッスンのハードな日々が君たちを待ってるぞ。
フェスまで 頑張りまくろう!
ライバルは もちろん「串カツレインボー」
美音の返信LINE「そうだったんですね!
プロデューサーの目論見通りだったとは!
若林さん 先見の明がありますね。
「串カツレインボー」のプロデュースが急にできなくなった理由ってなんですか!?
しかし そのLINEの返事は 若林から 来なかった。
若林は それ以外の話、 今後のスケジュールなどばなり美音にLINEして なぜ「串カツレインボー」らをプロデュースできなかったか理由は答えなかった。
最初の大阪でのハコライブ前に 唐突に若林は美音、マミ、伏見子
三人にユニット名を与えた。
新世界を愛する気持ちと 洋楽歌手リッキーの曲を若林個人が好きとの理由で
「新世界リッキーガールズ」と 名付けた。
マミ「こんな土壇場まで ユニット名を 隠してたのに 若林さんの 私的理由多すぎーー でも
かっけえなあ いいんじゃないん」
マミを始め 美音も 伏見子も ユニット名に満足したようだ。
そして数々のハコライブを経験し レベルアップしていく「新世界リッキーガールズ」
時は経過して2019年7月31日 「全国で16組のアイドルがメジャーとの共演をかけて集う アイドルフェス2019in大阪城ホールの日を迎えた……
7月31日、大阪城ホールアイドルフェス開幕戦。
ベスト8を決めるトーナメント前から お客様は外で ごった返していた。
スタンド席までも いっぱいだった。
「新世界リッキーガールズ」達も この日のために数ヶ月間 ハードなレッスンや営業やハコライブ、お祭りステージで多くのファンを獲得してた。
なので その他のアイドルと同様に 新世界リッキーガールズを応援する人達も たくさん 来ていたに違いない。
ファイナル16では ステージでは なく裏のモニターから
少しだけライバルの「串カツレインボー」のパフォーマンスが観れた。
串カツレインボーvsアイドルレンジャーの 対戦だ。
いじりー岡田風の「遠藤さん」と 元AKBの河合ともーみが 審査員を務めていた。
まずはアイドルレンジャーらのステージが始まった。
赤、緑、青などのサイリウムが アイドルレンジャーらのカラフルな衣装に よりエッジをかけていた。
五色カラーの衣装だが
歌う曲「カラフルボンバイエ」
は
ベタな元気ソング。
決して 下手とかじゃないけど
なんか ベタすぎるのが気がかりだった。
選曲も悪くはないのだけど……
アイドルレンジャーイメージ画像。
アイドルレンジャーセンター レッドの 赤石赤子「今日は皆さんを 虹色に染めちゃいましたーー そして ウチらが今日 優勝して 人生 バラ色に うちらは なるんだーーー
オーーゥ!」
拍手で アイドルレンジャーのステージが終わった。
続いて注目の串カツレインボー。
いきなり B’zのultra soul!のリズムに合わせて
高島沙耶が 三人の串カツレインボーの真ん中にきて
「たかしまソウル!」と腕を挙げた。
イギリス人と日本人のハーフの なぎさクリスティーンの 超高速ラップが 始まった。
見た目以上に カッコいいラップ。
でも そのラップの意味は
かっこいいメロディなのに
「みんなに会えて幸せ」「人生って挑戦の連続ね」
「人生死ぬまで勉強なのだ」「楽しいから笑うのでない笑うから楽しくなるのだ」
とか 超真面目な内容だった。
おじさん達はサイリウムを持って
「クリスティーン さいこーー!々
「俺も 幸せーー」
とか 声援が 聞こえてくる。
モニターを見ていた マミは言った。
「ねえねえ 美音〜 この曲ってタイトルないよね?
おかしくね?」
「そうねえ タイトルを言い忘れたのは 知名的かもだね」
それを聞いて 伏見子は 顎に手を置いてこう言った。
「甘いどすなあ。これは麗華様の 戦略どす。 おそらく…」
ステージでは 次に歌はなくて
オーーーオーー
アーーアーーと 沙耶とクリスティーンの 倍音みたいな響きに合わせて麗華が水鳥のような舞を踊る。
ステージの人々は
「美しい! なんて ステキな!白鳥みたい。」
とか 麗華に向かって 大拍手だった。
そして 三人が 揃って ユーロなリズムに合わせて歌も揃ったと思ったら
麗華が 皆さん 「nontitle」お聴きくださってありがとうございました。
と言って ステージを 串カツレインボーは後にしていく。
美音「ノンタイトル? だから 最初に曲名 言わんかったんじゃなあ」
思わず岡山弁になる美音。
「あれが串カツレインボーの実力なんでありんす!*
」伏見子が納得の表情をする。
次は いよいよ「新世界リッキーガールズ」と「クラシカルトルーパーズ」の対戦だ。
しかし、なぜかマミが しんどそうだ。
美音「どしたの?さっきから すごい汗が流れてるみたいだけど」
マミ「なんでもない!なんか わちきは プレッシャーに弱いんかも… 」
伏見子「無理するでないぞ マミ殿。
さあ 我らも出陣ですわ」
新世界リッキーガールズがクラシカルトルーパーズのステージが始まってる間は 振り付けとか歌詞を再度皆確認していた。
そして 若林が控え室に 急に 険しい表情で入ってきた。
美音「若林さん、どこ行ってたんですかーー もお⁉︎」
若林「串カツレインボーの前には あまり行きたくないので いちおう知り合いに 先ほどの対戦の結果を 教えてもらってたんだ。」
伏見子「で、どうなったんですぅ?」
若林「やはり串カツレインボーが準準決勝に勝ち上がった。」
マミ「う、嬉しい…… わちきは クラシカルトルーパーズに打ち勝ち 念願の麗華らに 勝ちにいく……ゴホッゴホッ」
若林「どうした!マミ? 顔色悪いぞ」
マミ「あっ なんでもないよ。単なるプレッシャー不調ってやつよ ノンノンノン 問題ナッシングです。」
モニターから 少しだけ クラシカルトルーパーズのステージが観れた。
4人組の 白い衣装と4人全員天使の羽根を付けた衣装を着てた。
ルックスに個性は 特になく モニターからでは 下手したら全員同じような顔にも見える。
選曲は「グリーンスリーブスの幻想伝」
グリーンスリーブスの幻想曲を より 懐かしくコーラスを入れた 感動系の曲だ。
とにかくメンバーの歌声が 今大会随一の美しさが響き渡る。
心地よすぎる。
アイドルのフェスじゃなければ 優勝狙える選曲だ…
だが ここはアイドルフェス。
どんなに美しく素晴らしい歌声のクラシックなアイドルよりも君達の方が優れてる きっと君達なら やれる
そう若林はメンバーに言ってメンバーをステージに送り出した。
美音「ラジオにグラビアに マルチな活動してる美音です。 皆さん暑い中熱い熱いステージに ようこそ お越しくださりありがとうございます。 ぼっけえ頑張るけんよろしくーー」
伏見子「あっしは京都の舞踊大会でもベスト8に 入ったきに〜 今回のイベントでは 優勝ねろうとるどす。」
扇を取り出して オーーッホッホと 高笑いした伏見子。
マミ「燃え尽きるゾーーー! みんなのハートをキャッチしするよん!曲は マルチミックスジュース」
マミの掛け声の後 アップテンポなさわやかな王道系のアイドルソングが…
若林の元で ベタだけど 基本のリズム感と 動きを徹底的に鍛えられた美音は 圧倒的なオーラで 会場を沸かす。
マミは なんだろう…… 燃え尽きるぞーーの言葉に深みを感じたのか知らないが
本当に燃え尽きそうな ヤバイなにかを感じた……
動きはマミのパートが一番キレキレダンスなのだ。
だが 今日のマミは鬼がかってキレキレなので 恐ろしいくらいのオーラを放っていたようだ。
伏見子は 1人だけ和装なのもユニークだし、ポップなベタなアイドルソングのイントロとかで 扇や能面を 巧みに使う。
さらにコントみたいに 1人だけ遅れて日本舞踊を踊るシーンも 会場を沸かせた。
いよいよ新世界リッキーガールズの曲も 終わろうとする時
美音は 横目で マミを見た。
顔が真っ青だった
そして 額から流れる汗が 滝のようにも見えた。
曲が終わると
大きな拍手が送られた。
そしてマミが マイクパフォーマンスで
「今日……このステージで 皆様の前で歌えたのは感無量です。
」
その一言いうと
フラっと身体が揺れた。
しかし すぐにマミは 何事もなかったように持ち直した。
審査員の ともーみ「マミさん お疲れのようでーー オーラがこの世のものとは思えないマミさん。そして美音さんの初々しい感じ、コミカルな和装の伏見子さん 本当に良かったです。 さあ 採点結果が会場前列ののアイドルオタクさんより 集計がでました。」
岡田風の審査員「発表します。
アイドルレンジャー85点 串カツレインボー87点
クラシカルトルーパーズ 91点。 新世界リッキーガールズ99点 準準決勝は 新世界リッキーガールズとなりました。
準準決勝での串カツレインボーは 果たして 大きすぎる差をつけられた 新世界リッキーガールズに勝てるのか!?」
地下アイドルのライブ中最強とも呼べる99点を叩き出した新世界リッキーガールズに感銘を受けて
審査員は 他をすでに凌駕して優勝確定かのように新世界リッキーガールズを ベタ惚れするような発表をした。
美音と伏見子は 未だ信じられないような表情だ。
喜びの中で控え室に向かう。
美音「ヤバたんですね。 まさか 串カツレインボーに大きな差をつけて準準決勝にあがれるなんて」
伏見子「その準準決勝で当たる串カツレインボー、このままけちょんけちょんに差をつけて 帰りましょうぞよ。」
美音「まだ時間があるから 次の曲の 練習とか 合わせをしとかない?」
伏見子「そうねえ」
一方その頃
若林は大阪城ホールで 取材されていた。
報道陣「若林プロデューサー、あなたが 串カツレインボーのプロデュースをやめたのは やはり 串カツレインボーの高島沙耶との交際が 世間に知れたからなのですか?」
若林「雑誌でも 報じられた通り、SNSでも 噂されたように
一時期
高島沙耶と私は交際してました。
そして 隠してたのに 沙耶が SNSで 私の名前とか雰囲気を ほのめかす画像など アップするようになりました。
注意しても聞かない沙耶は 懲りずにSNSに私の名前まで出して 一緒に若林プロデューサーとナウなど記事をアップするよをやめませんでした。
それに心を痛めて居心地悪くなった私は串カツレインボーのプロデュースを辞退させていただきました。」
その報道されてる若林を トイレに行く途中、ちらりと見た高島沙耶は 気持ちが複雑になっていたようだ。
そしてスタッフルームトイレで高島沙耶は 恐ろしい光景を目にした。
キャーーーッ!
そこにはピンクのウィッグを外し 倒れてるマミがいた。
沙耶「大変だぁ 救急車呼ばなくちゃ」
マミ「見られてしまったか…… 強がっていたけど 抗がん剤治療を受けててね わちきは…」
沙耶の後に偶然にも麗華もトイレに入ってきた。
麗華「マミー!っ しっかりしてよ。 」
マミ「麗華には
ウィッグをわちきがかぶる理由は 円形脱毛症だからと嘘ついててごめんね」
麗華「ま、まさか ステージ4の癌だったとか…… なんで本当のことを教えてくれなかったの」
マミ「みんなを心配かけたくなかったの……
ほんとは とっくに死の宣告をうけていたの…
だから 最後に 麗華達と同じフェスに立てて良かった…
点数だけなら
麗華にも 勝てたし 99点…… 大きなステージ 最後になりまし
たが
幸せでした… 」
そのあと マミは救急搬送されたが すでに事切れていた…
大会は 今回の事があり「串カツレインボー」も「新世界リッキーガールズ」も
敗退し 「ラッキースターガールズ」
これまた王道系のアイドルグループが優勝となった。
美音(マミ…… 大阪で最初に仲良くなった のに なぜに
こんな結末に…
夢だったら いいのに
あなたがいないと 私は どう生きていけばいいの?
あなたが くれた 優しさ ユニークさ 明るさ
もう 見られないの?)
美音は 何日も 暗い顔で 過ごしていた。
もう二度と揃わない「新世界リッキーガールズ」
美音は 8月も半ばに 伏見子と 京都駅ビルの英國屋というカフェで今後のことについて話し合っていた。
美音「まだ信じられないわ。
末期ガンでマミはハコライブとか こなしてたのね?」
伏見子「ピンクのウィッグの下で 抗がん剤治療の跡が あんなに無残にも… あっしも 心にぽかーんと穴があいたでごんす。」
美音は紅茶を飲みながら 伏見子に言った。
「若林プロデューサーは 私達2人になってしまったので
ユニットで 活動してみるかと言ってるよ?」
伏見子「ごめんなさいませ。 あっし、アイドル辞めるどす。 やはり あっしは日本舞踊の世界が一番好きなのである。
あなたには言ってなかったけど若林さんには やめる事伝えておきましたの。」
美音「てことは… 今後は 私 一人で活動することに…」
伏見子「そうどす! ほな 今まであんがとさん。 今日の所は あっしが ご馳走するから もう 帰ろうか」
美音(伏見子まで抜けてしまうなんて…
私一人で いったい…どうやって有名になるの)
それから二日後
若林からLINEが届いた。
「お世話様です。
来週末 美音さんに すごいビッグになるための企画の話がしたいです。
来週末 ご都合よろしいでしょうか?」
美音の返信
「マジですかーー! 私一人でもできる ビッグな企画?
是非 来週末 久しぶりに話し合いしましょう。ワクワク」
若林プロデューサーの 新たなプロジェクトの展望は
まさに美音にとって マミという親友の死を紛らわすのに ふさわしいプロジェクトだと思っていた。
美音「マミ!天国で見てて。私がマミの分までメジャーになって全国で大ブレイクしてみせるから!」
美音はアパートの部屋から窓を開けて なかなか近くに見える通天閣のように 拳を天に掲げた。
しかし週の後半になっても若林から 具体的なプロジェクトの待ち合わせとかのLINEが来ない…
おかしい…
美音は 若林に 再び詳細が知りたいからLINEした。
しかし既読スルー。
何かあったのかと思って若林のツイッターをチェックして見ると
ちゃんと つぶやいているようだ。
でも 美音からの LINEには 答えてくれない。
バックれプロデューサー??そう思わざるおえなかった。
いつの間にか 夜も涼しくて過ごしやすい9月半ばになっていた。
アパート代も 美音が 支払わなくちゃいけなくなり
金銭的にも 蓄えが今はあるが
時期に 窮地に追い込まれるだろう。
美音は 大阪駅の外の広場で一人でも 自身の存在を知ってもらおうと路上ライブをソロで行った。
日に日に 美音のカリスマ性オーラが 王道アイドルソングにダンスなのに 多くのファンを作ることになった。
美音「一人になっても 須田美音、負けないんだから!来年のアイドルフェスでは 一人でも王者になってみせる。」
マミに捧げるためか ソロなのに ハコライブに参戦しなくても路上のカリスマアイドルとして SNSで美音の姿は よく上げられるようになっていく。
そんなある日
サングラスかけた まだ暑い日が続くのに黒いジャンパーとニット帽を被ってZARAなどの人気ブランドで 固めた一人の女性が声をかけてきた。
美音「誰だろう?サングラス姿だけど 見たことある。」
思わず その日の路上ライブ後に 物販の途中で 呟いた美音。
さらに グラサンのカリスマ女性は近づいてきて美音に こう言った。
「アイドルフェスでは メンバーの一人が急逝し 本当に大変でしたね。
あなたの事探しましたよ! 」
グラサンを外したら そこには元48グループの 河合ともーみがいた。
グラマラスな身体つき、ロングな艶やかなヘアー、くっきりとした愛嬌のある濃い顔立ち。
まるで夢のようだ。
美音「あの〜あの… 私の つまらないパフォーマンス 最初からずっと見てくれてありがとうございます。」
ともーみ「一人になっても あなたは こんなにトップアイドルになろうと頑張ってたのね。 SNSみちゃってさあ。 なんか 応援したくなっちゃって笑」
なぜかタピオカミルクティを飲みながら 頭を恥ずかしそうに 横に 傾げる ともーみ。
美音「元トップアイドルに お話させていただけるなんて 感無量です。」
ともーみ「元よ〜 元ね。 ウフフ(笑)」
ともーみは 残りのタピオカの 具の部分だけ残す形でミルクティ 急いで飲んだ。
ジュルルル
美音「ともーみさん タピオカ好きなんですね。私も好きなんです。 岡山一番街にも タピオカの お店が出来て
毎日すっごい並んでるんですよ。」
ともーみ「そっかあ 美音ちゃん 岡山出身なんだね。」
美音「ところで ともーみさんは
番組「いきなりシルバー伝説」で 介護のお仕事を1ヶ月できたら100万円に 出てましたよね?」
ともーみ「ゲホッ!ゲホッ」
思わぬ質問を 美音から 聞かれ タピオカの具を喉に軽く詰まらせそうになる ともーみ。
ともーみ「あ、あれね… 結局 バックれちゃてさあ
あれから 私は芸能界 干されたぽいねんな」
ともーみは 恥ずかしそうに 俯いた。
美音「仕方ないですよ。 人生長いんだから
そういう事ありますよ。
私も 最近 プロデューサーに裏切られた?というか バックられちゃいました(笑)
ともーみ「そうなん?それで ソロで路上頑張ってたのね。 あのさあ 本題に入るけど 私が 経営してる地下アイドル達のイベントに定期で出ない? 稼げるよ。
テレビにも 近いうちには出れるようになるよ 君なら。」
美音「えーーっ!マジっすか!ー?」
ともーみ「うん!まじまじまじマジすか学園」
美音「……………」
ともーみ「やっべ すべった」
美音「すべる魚は?」
ともーみ「うなうなうなぎ〜 って 言わすなや(笑)」
美音「クススス ハーッハッハ(爆笑)」
ともーみ「えっ?君 天然系? そこ そんなにウケるとこ? うなうな〜 なんか YouTubeで 偶然 その セリフ言ってる人を 見かけてね ちょっと試しに言ってみただけなんだけどさ」
美音「ともーみさん すごいですぅ。 元48なのに、そんなに笑いのセンスもあるし美人だしグラマラスだし
私を これからプロデュースしてくれるなんて 超感激です。」
ともーみ「まいったなあ ここまで 君を感激させるとさ
私は すげーぞ ウホウホ」
ともーみは 自信に満ちた表情で グーで交互に自分の胸を叩いた。
美音「やばっ ハーッハッハ ともーみさん マジ ありえない ガチで ゴリラにみえますぅ ハーッハッハ」
美音は ともーみが 笑いのツボになったようだ。
ともーみ「ツボってるーー」
二人は意外にも意気投合し、その後 約一年の間
新たなステージライブ、ラジオ出演、DJ、モデルなどマルチな活躍で メジャーへ向けて一気に躍進して行った 須田美音だった。
そして一年はあっという間に過ぎ去るものである。
プロのダンサーから指導を受けたりボイストレーニングの効果もあり 間口が広がった ソロアイドル須田美音は ソロだけど2020年アイドルフェスの 期待の新人として 多くのファンから 優勝候補の一角として SNSで話題となっていた。
時は2020年 気温は38度という記録的猛暑の東京新宿中央公園。
中央公園に 人工噴水と渓流広場があり
17時に ともーみと待ち合わせしていた 美音。
おまたせーー
ともーみは セシルマクビーとSOFT BANKのコラビな真っ赤なTシャツを着ていた。
AGUのニットブーツで オシャレに見えた。
だがしかし
ボトムは明らかにGUで こないだ美音が 見かけた980円のセールジーンズだったのは間違いない。
美音「いえいえ 私 さっき着いたところです。」
ほんとは20分前から この猛暑の中、新宿中央公園にいたけど 気を遣わせまいと 軽い嘘をついた。
ともーみ「アイドルフェスにエントリー済ませてきたからね。あとは本番で ぶっちぎりの君の力を見せてやれ」
美音「もちろんです。 なんか 私 この一年でDJもこなせたし グラビアもやらせてもらえたし もうメジャーになる 云々より あなたと過ごせた一年が めっちゃ充実してました。 ありがとうございます。」
ともーみ「礼なら 来週のアイドルフェス2020で 勝ってから言ってよ。 ところで アイドルフェスの出演アーティストの表を みてみない?」
美音「おっ さっそく ともーみさん アイドルフェスの出演者の方々のスケジュールとかも 確認されたのですね。見せてください。」
ともーみは 強気に はやくも なぜか持参していた アイドルフェスのパンフレットを 美音に手渡した。
美音「うーーん 知らないアイドルばっかだ
やはり!! そうきたか!」
パンフレットの写真を見て 美音は目を丸くした。
そこには「串カツレインボー」が出演する事になっていた。
そして「クラシカルトゥルーパーズ」に「アイドルレンジャー」も出演が決定しているようだ。
若干
不安そうになる美音。
ともーみ「昨年の顔見知りアイドルが いるよね?
大丈夫だって!!
なんのために 私が あなたをアイドルフェスに向けてバックアップしたと思ってんの!?」
美音「ですよね〜。 私が 今度こそ優勝してみせます。
ってか 暑すぎです。どこかで 休みませんか〜
パンケーキ食べたいです」
ともーみ「ちょっと待ったー!今日 あなたを呼び出したのは 私と一緒に 綾瀬駅前にある 居酒屋こたに で 合コンに参加してほしいから 誘ったのさ」
美音「えっ?正気ですか? ともーみさん」
ともーみ「まじまじまじまじ まじマン(ピーーーッ放送禁止用語)
美音 「えぇ ええーー 下ネタですか!!!
てか ストイックに練習しまくったし そろそろ私も ソロ充から卒業したいし ご一緒させていただきます。」
ともーみ「おう!ありがとう美音。」
こうして ともーみらは 新宿を ぶらりとしたあと
綾瀬駅に19時に到着するように 山手線とか乗り換えて向かった。
そして 綾瀬駅から徒歩5分の居酒屋「こたに」
では まるで芸能人??
三人の男性が すでにスタンバイしていた。
山田たかし25歳ー システムエンジニア
(ショートヘアーに黒髪 身長180 細身のメガネ男子)
斎藤光一 21歳 見習い俳優&ダンサー
(ツートンカラー。ラフなラッパーみたいなスタイル
身長170 細身)
そして 全てが謎に包まれた
「夢山治虫」
声優&時々 関西テレビの うたのおにいさん
をしているそうだ。
ともーみ「はじめましてーー 元アイドルグループの ともーみと いいます。ウホホホホ」
自信を持って合コンスタート切った ともーみは グーにした拳で胸を交互に叩いた。
夢山治虫「おぅ ともーみ You ぱねぇ パフォーマンスっすね。 なんか ゴリラみたいじゃん」
本来なら嫌味としか思えないような夢山治虫の発言に なぜか ともーみは すごい興奮して こう言った。
「おーー 夢ちゃん わかってるーー 」
美音「あの… 褒められてませんからね ともーみさん」
そして女性陣の一人が 合コンスタートで 盛り上がってる時に 突如 やってきた。
ひゃーーー 遅くなってごめんなさーーい。
な、なんと!
そこにいたのは「串カツレインボー」の 高島沙耶だった。
高島沙耶「串カツレインボーに新メンバーが入って私は脱退したんです。ブログにも書いてあるよ。後から読んでね。あたしは 今は アイドルやってませんのでーー てか、あなたは
美音さん ? 新世界リッキーガールズの??」
美音「ええーー 今日マジ ええーーの連発やわ。 まさか こんなとこで再会するなんてーー」
アイドルフェス2020目前という時に 合コンが!?
いったい何をやってるのだ美音、そして ともーみ!
高島沙耶からは美音は色々聞きたかった。
しかし合コンスタートしてから
なぜか 不思議と波動が同調してる人物が一人いた。
「なんだか 甘くて 美味しいですーーカルーアミルク」
「オレも ガルーダ ガルーダいや 違うぜ カルーアミルク 甘くて好きだwow wow wow」
ラップのリズムに合わせて 斎藤光一が その見た目通りにノリノリで 美音を見ながら 歌う…
「キモって キモちぃいーー てか すべりました。ごめんなさい。 キモは 意外と美味しいですね」
と ユニークな斎藤光一のラップで 非日常性を少し味わった美音は キモが好きなことを何気に 滑り気味のギャグで言った。
「キモだめし〜 ヘイ! キモだめし〜 オレは おばけじゃないけど 昔 キモいと言われたぜ
ふぅ〜キモきモキモキ キモが好き!ー
君も好きーー」
何気に君も好きーな部分で 軽く斎藤光一は 美音の肩にソフトタッチしてきた。
夢山治虫のパリピなトークと ともーみの ぶっ飛んだトークも 振り向けば盛り上がっていた。
夢山治虫「君って元アイドルだけど ばっくれたって マジっすか!ー?シルバー黄金伝説の企画を」
ともーみ「マジマジマジマジ マジすか学園!」
夢山治虫「Oh〜2年前に 知り合った僧侶より 君の方がノリノリで いいねえいいねえ やるじゃん!」
ともーみ「僧侶って?」
夢山治虫「太融寺の元僧侶の 大乗さんって方かな
彼、今 風の噂では すごいところに いるらしいぜぃ!」
ともーみは ビールを飲みながらグビグビ飲んでたが ビールを 置いて 「ゴゲッ」と ワイルドなゲップをして こう言った。
「その大乗さんって元太融寺の お坊さん 今いづこへ」
夢山治虫「極楽浄土らしぃっす!」
ともーみ「んな アホなぁーー マジっすか?」
夢山治虫「マジマジマジマジ マジすか学園」
ともーみ「それ 私の ギャグだよーー も〜 まいっちんぐ〜」
ともーみは パイレーツのポーズをとりながら言った。
夢山治虫「それ だっちゅーの だよねーー だよねーだよねー いけないかも だよねー」
夢山治虫も 斎藤光一風にラップな歌を唄い出した。
ともーみ「まっ いっか!」
夢山治虫「まいっか も 流行ったジェジェジェ」
ともーみ「じぇじぇじぇ?」
高島沙耶「太融寺の大乗の お弟子さんが 実は あたしの代わりに 串カツレインボーのメンバーになってるんですよ」
夢山治虫らの声が聞こえてきたので ひっそりと沙耶は山田に 喋った!
山田「そうなんですか!?なんか すごく偶然ですね。 88.777分の1くらい ミラクルのような気がします。」
メガネを上下させながら 山田は お硬くつぶやいた。
沙耶「でさぁ その お弟子さん 「エミ」って言うんだけど、元いじめられっ子なんよ。 根暗な歌詞とメロディーが 昔の いじめられた暗い過去を 彼女の曲を聴いたら
めっちゃ伝わってくるのね」
山田「人は いじめられたり 辛いことがあるから その分 大人になって 発散してこそ 生きてる意味がある。」
沙耶「ですよね!んでー 自身を癒すためエミは ヒーラーになったんです。 クリスタルボウル演奏家の演奏として 各地でステージにも立ちイベントにも立ったそうだよ」
山田「癒しとアイドルと どこの誰が考えても 思いつかない滑稽な状況でおられますね。 私なら そんなミスマッチなプロジェクトをけっして 立てません。なぜなら 人類、そんなヒーリングとアイドルを融合させたものは皆無ですから」
沙耶「山田さん なかなかの カタブツっすね(笑)」
いったん ささみチーズとか ソーキそばとか 食べてた箸を止めて さらに 沙耶は ゴクリと唾を飲み込んで 言った。
「エミは天才的であり、クリスタルボウルの倍音と 自身のネクラソングを融合させて ステージに立ったら
若林って 私と 少し付き合った事があるプロデューサーの目に留まったのね」
山田「今までの話の流れの中で その若林殿が 新世界なんちゃらという アイドルのプロデューサーを蹴ってまで エミを 串カツレインボーのメンバーに入れたかった。
なので あなたと 恋仲じゃなくなってても あなたと 顔を合わせると気まづい。
すなわち あなたを首にして エミを 串カツレインボーに若林は入れたという シナリオですね?」
沙耶「ほぼ正解です。 若林は裏のプロデューサーって感じですよ。 なので あたしは 今はアイドルやめて もお 新たな恋に目覚めたいのーー」
山田「わたくしで良ければ いつでも 君を支えていきます! あなたの 人生に光をくれるような 瞬オーラは私のテンションゲージを常にMAXにさせてくださる予感もしますので」
眼鏡の下でギラギラと瞳を輝かせながら 山田は言った。
一方で 美音と斎藤光一のトークも 盛り上がっていた。
いや、一目見た時から 不思議と二人は意気投合していたようだ。
「チョコレート好きなんですよ。 ステージとかの練習の後とか 超 チョコアーンパン食べたくなっちゃうの」
「チョコアーンパンで アーーンパンチ! オレも チョコレート好きだよ。 なんかさあ 気持ち的にあがるよね」
「今 一番行きたいところはUSJかな〜 ハリーポッター気になるわあ。」
「ホーーッホッホ 私はスネイプ先生だ! 君たち〜私もハリーポッターの世界好きなのだよ 」
斎藤光一もハリーポッターマニアで マニアすぎてスネイプ先生の モノマネまで披露しだした。
「オレ、こう見えても 癒し系の曲が好きなんだ。
ザナルカンドにてとか エンヤ、ケルティックウーマンとかね」
「すごーい なんかギャップ萌えしちゃいました。」
盛り上がり過ぎた合コン。
それぞれが夢のような時間を過ごしていた。
2時間コース一人3500円もラストオーダーの時間が迫ってきた。
店員さん「閉店30分前となりました。
ラストオーダーをいただきたいのですが!」
斎藤光一「オレそのものが ラストとなるだろう。
ラストかもしれない
だから このラストオーダーに巻かれて 美音に話しておきたい事があるんだ。」
斎藤光一のトークなど 関係なしとほろ酔い以上のほかのメンバーは それぞれ何かしらラストオーダーし始めた。
斎藤光一「オレ、8月2日の土曜日にアメリカに俳優業が決まったので 留学する事になったんだ。
だから もう 美音と 会えない。 なんか 悔しくて…
せっかく こんな初対面で神レベルで 意気投合できたのに…」
光一は両拳に力を入れて軽く震わせていた。
美音「そんな… あなたほど 光一さんほど こんなに 私に夢と希望とか 笑顔を見せてくれた人は いないのに…
亡くなったマミさんにも似てるし… 」
光一「オレも もっと君と語りたい。 いや できることなら いつまでも語りたい。」
美音「どうしても 行くのね… てか 私も そっちにできることなら行きたい…」
美音の心の奥の言葉(ダメだ 何言ってんだ私… まだ今日会ったばかりの人よね… でも 胸が熱くなる。 これ逃すと 私は 心から好きになる人と なかなか巡りあえない予感もする。 なにより 光一さんの テンションは あのマミさんと通じるものがある。 不思議すぎる。 彼とは昔から知り合いのような 気がする。 ダメだ
どうしよう 行かないでほしい 光一さん)
光一「てか 美音ちゃん アイドルフェスって 何日だったっけ? そのフェスで優勝して オレの事は忘れて 絶対 メジャーになってよ!」
美音「8月2日土曜日です。」
光一「はっ?8月2日の土曜日?? オレがフライトする日じゃん……」
美音「そ、そんな……」
光一は 泣きそうになったが 後ろを向いて
あえて頭を振って 溢れそうになる涙を出さないようにごまかした。
そんな切ないやり取りをしていたら 閉店の時間が来た。
夢山治虫「ともーみちゃーーん 今晩 とめてーなあ 僕酔ってもうたわーー」
ともーみ「いいよーーん ウチくるーー?」
夢山治虫「いくいく いくヨーー」
沙耶「とりあえず 飲んだんで タクシー拾って帰ります。皆さま お疲れ様でした。 あっ 美音さん!串カツレインボーの エミは 黒髪で おかっぱヘアーで元サッカー選手の バラエティ番組に出てる あの女性タレント風な顔の子だよ。 でも 服装とか 髪型は昭和だよ。 また フェスで見かけたら エミに よろしく 言っておいて。さいなら〜」
沙耶は いち早くタクシーを使って呼んだ。
山田「あれだけ盛り上げておきながら 私が 沙耶さんと出会えた この心の中の湧き上がるマグマのような気持ちを 抑えきれないのでLINE交換しましょうと言った私。
でも 私は めっちゃ楽しかったけど 初対面の人とは 誰とも怖くてLINE交換控えてます。今日は ありがとうございますと 言って 逃げるように帰られた。
私は89%キモかったようだ。 あ〜無念」
ぶつぶつ呟きながら 山田は帰って行った。
美音「帰りたくない… あなたを 離したくないもの」
光一「ダメだ オレ達 恋人同士になれない。いいや
なったらダメなんだ。 もう 戻れなくなるから…
悲しくなるといけないから 今日は ごめん」
光一は 俯いてダッシュで 彼方へ消えた。
その後、あまりに光一の事が気になり合同レッスンの時も なぜか光一の事を考えてしまう美音
ダンスマネージャー「これ!もう明日が フェスなのに
どうしたの?美音」
美音「すいません。 頑張ります」
そして運命の8月2日。
昨年以上に 大勢の観客が大阪城ホールに集まっているようだ。
16組「串カツレインボー」を始めとしたアイドル達のステージが大盛り上がりの中で開催された。
なぎさクリスティーン。
今や串カツレインボーのセンターとなってラップ部分も キュートなアイドルソングも キレキレで歌い上げる。
もうすぐ35歳と年齢公開した 何と麗華様の 白鳥のような舞は健在である。
なにより
新メンバー マミの 倍音の響きが 溢れる ハモり声、クリスタルボウル7種類の響きが めちゃくちゃ心地よく会場を包み込んでいた。
そして期待のソロアイドル「須田美音」の名前が呼ばれた。
司会者「須田美音のステージで!
はっ? 須田美音さん 不在ですか!!?」
須田美音の代わりに
「代打で出場 いわばリザーブアイドル」と
フリップを持って
高島沙耶が 登場してきた。
半分はブーイング、半分は大歓声が 聞こえてきた。
沙耶「みんなーー お久しぶりぶり
お久しブリーフ」
高島ソウル!
コミカルさは 健在な高島沙耶のステージが笑いと感動で満たされた。
しかし
大事なフェスに 美音が いない…
そう美音は 羽田空港に向かっていた。
光一は
フライトの時間五分前。
自身がフライトする飛行機に 寂しい顔で乗ろうとしていた。
そこへ
はぁ はぁ はぁ
ちょっと待ったーーーー
私を 私を 私を 連れて行ってください。
この恋、あなたの心にフライトさせてください
いつのまにか 旅行カバンに荷物を持って 美音が 光一の方に近寄って行った。
光一は目を疑って思わず二度見した。
光一「美音、いいのか? こんなオレなんかのために フェスを バックれてついてきても?」
美音「大事なのは メジャーになる事もだけど 君といつまでも一緒に 行きたい! それが 私の 人生の最大の幸せです。後悔はしません。
あなたをサポートしますんで どうか 一緒に行かせてください。」
光一「超嬉しい! もちろん おおお 俳優やってて
よかったーー一目見た時から オレ 超君のことタイプだったんだ
マジ嬉しい。あ〜 オレ 夢見てるの?」
美音「夢じゃないよ!現実だよ。 真の夢のため アイドルになることより あなたをサポートするために生きたい! 私の人生 悔いなく あなたと共に…」
光一と 美音はハリウッド行きの飛行機に乗り込んだ。
8月2日の空は快晴で雲ひとつない 美しい青空の天気は
まるで二人の今後を祝福してるかのようだった。
須田美音は 「ばっくれアイドル」として その後
ともーみの描いた「著書」で Amazon電子書籍部門で かなり売れたそうな…
しかし ともーみも 「いきなりシルバー伝説」の ばっくれ伝説が 再び淘汰されることになったそうな。
若林プロデューサーが「ヒーラー&アイドル エミ」を串カツレインボーに 加入させたのは 大成功だったようだ。
2020アイドルフェスは「串カツレインボー」が優勝した!
そして エミはヒーラーとしても アイドルとしても 時の人となったそうな。
若林プロデューサーも元avexのスタッフとしての人物がバラエティ番組などでも、取り上げられるようになったそうな。
劇終