表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

第4話

 職員室にやってくると、放心状態の私の代わりに、湊が担任の先生を呼んだ。

「先生、川瀬さんの上履きのことで相談があります」

 湊が私の上履きを先生に差し出すと、先生の顔が強張る。

「こ、これは......ただ、からかっているだけじゃないか?」

「からかっただけ? こんなの、イジメに決まってるじゃないですか!  言っときますけど、上履きだけじゃないんですよ。教科書だって、カッターで切られてたんですよ?  いつまで知らないふりをするつもりなんですか 」

 湊......。こうして、何度も先生に訴えてくれて、私はいつも助けられてばかり。こんなのダメだ。いつまでも湊に甘えてちゃダメだよね。

「あ、あの......っ」

 湊の一生懸命さに背中を押されて、私は自分から切り出す。

「わ、私は......っ、イジメられてるって思ってます。お願いします、なんとか......、し、してください!」

 ガバッと頭を下げれば、先生は渋々湊の手から上履きを受け取る。

「......わ、わかったよ。この件は職員会議で話し合っておく。またなにかあったら、言いにきてくれ」

「ありがとうございます」

 湊のおかげで、先生が動いてくれた......本当によかった。

「川瀬、今まで気づいてやれなくてすまない」

 それだけ言い残し、先生は職員室に入っていく。 ひとりじゃ、先生に自分の気持ちを伝えるなんてできなかった。湊には、何回感謝してもしきれない。 ほんの少し、胸に清々しさを感じながら、私はスリッパを貸りて湊と教室に行く。 すると、女子の視線が私を刺してくる。教室では湊が隣にいるからか、直接傷つけてくる気はないみた

 いだけど......。 ふとした瞬間に、先ほどの上履きに書かれた文字が脳裏に蘇る。 この中に犯人がいると思うと、やっぱり怖い。 私は縋るように、湊の制服の袖を掴む。

「大丈夫だ」

 湊はそう言うと、その場でクラスメイトたちの顔を見回した。

「みんな、もう咲をイジメるのはやめろよ! こんなことして、なんの意味があんだよ!」

 湊が私の代わりにイジメを止めようとしてくれているのがわかった。湊、いつもありがとう。だけど、庇われてばかりじゃいけないってわかったから──私も勇気を出すね。

「私さえ黙っていれば、他にターゲットが向くことがないから、ずっとなにも言わずに我慢してたけど、 もうやめる。私が傷つくと、傷つく人がいるから。だから言うね、私はもうイジメられるのはたくさん! 私は大切な人のために、ちゃんと自分のことを大切にしようって決めたの。だから、もうイジメをするの はやめてください!」

 そう言って、私は教室を飛び出した。 今はこれが精一杯だけど、それでも言えた。自分の気持ち、ちゃんと伝えられた!  全力で走って、私が向かった先は屋上。重い空気を風が流してくれるような気がして、たまに訪れている場所だ。 青空の下に出て足を止めると、私は肺いっぱいに外の空気を吸い込む。ふと後ろで足音がして振り向くと、湊が立っていた。

「いつもよりもすっきりした顔だな」

 追いかけてきてくれたんだ......。


「うんっ、これも全部、のおかげだよ」

 本当に本当に、私のそばにいてくれてありがとう。 初めは、私みたいな嫌われ者が好きになっていい相手じゃないって、そう自分の心を抑えてた。だけど......どんなに突き放しても、きみは私から離れずにいてくれたんだ。 気持ちを伝えられなくて、友達以上に進めなかったぶん、これからいっぱい一緒に過ごそうね。 暗くて、辛いだけだった私の世界は、きみのおかげで幸せなピンク色に染まっていく。 私の世界は、きみでいっぱい。

 END


この度は今作を読んでいただき、ありがとうございます。

元は私の好きな作家様の企画により作成したもので、先にカクヨムさんに載せていたものです。

また、カクヨムさんにはさらにたくさんの作品が投稿してあります。興味がある方は、ぜひ一度私の作品のところに遊びに来てください!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ