9、ウンタの風景
遠くから見ても気付いてはいたが、ウンタはまず石造りの城壁に囲まれてる。
その高さは、東京とかで見る高層ビルに負けないくらい高く、その威容に言葉を失ってしまう。
俺が今いるのは南門だとサーチから聞いた。
門の大きさとしては、ビルの5階分位の高さで大きめの馬車が3台くらいは楽に通れそうな広さだった。
そんな大きな扉の前で幾人もの門番が、入る人のチェックをしている。
もちろん、俺は証明できる何かを持っていないが、今回はサーチのお陰でなに不自由なく入ることができた。
単純に知り合いも証明もない時は、物々交換か専用の詰所で魔法による調査が行われて、無事に乗り越えれば問題なく通れる仕組みだ。
まあ、覚えておいて損はない。
ウンタに入ってまず感じたのは、様々な人種がいて仲良く暮らしているのが素晴らしいと感じた。
ムラーノは独特な習慣を持っていたので、あまり違う人種の人がいなかったので、とても新鮮だ。
金髪の耳が長いエルフ、小柄だが存在感の強いドワーフ、中には悪魔のような角を生やした種族もいた。
俺は種族に関しては、サーチにもビレッジさんにも余り教わらなかった。
理由としては、先入観が入ると相手の特徴とか個性を見れなくなると思ったからだ。
俺も日本にいた時はそういった先入観で見てしまう事が多く、相手を無意識に傷つけてしまうこともあった。
そうならないための保険のような物だ。
そんな事に拘って死んでしまったら元も子もないから最低限タブーな事は教わったが。
そんな歩いている様々な人種に目を奪われている俺を横目に、サーチは呆れたような表情をしながらも俺を通行の邪魔のならない所に引っ張る。
そして、いつまでも動かない俺にサーチは痺れを切らした。
「トシオ、このまま人間観察もいいが、このままだと日が暮れちまうぞ。」
「あ、ああ、すまない、初めて見る、人種が多かった、から、ついつい目が行って、しまった。」
「まあ、日本には他の種族もいなかったらしいから、仕方ないかもしれないが、これからはいくらでも見られるんだから、まずは冒険者としての登録とランキングシステムの確認に行くぞ。」
俺はサーチに連れられ、舗装された道を歩いていく。
辺りには3階建て程の建物が数多く並び、綺麗に整地されている。
道はかなり広く、馬車が2台は通れて歩行者も歩ける位の余裕がある。
外壁が石造りなのが影響しているのか、石造りの建物が多く、たまにレンガ製の建物が並んでいて外観としてはとても綺麗だ。
何かしらの魔法で維持されているのか、詳しくはわからないが、小説の中でしか想像できなかったファンタジー感を味わえて大満足だった。
そして着いたのは外壁程ではないが、10階建て程の高さがある建物。
「これが冒険者の集まるギルドと呼ばれる建物だ。 中には受付、素材買い取り、ランキングシステムへのアクセスが纏めて出来る。 まずは受付で登録からだな。」
そうして、受付の女性がいる所へサーチと向かう。
アナザーでは美形が異常に多い。
というか、美形しか見ない。
そんな中に俺がいるので気のせいかもしれないが、浮きまくって仕方がない。
もちろん、サーチも日本で歩けば10人中10人は振り向くレベルだ。
ちなみにビレッジさんは、大柄だが人の良さそうな見た目も相まって、町中で歩けばナンパされ続けること間違いないレベルだ。
そして言わずもがなだが、受付嬢もアイドルなんか目ではない程の美形だ。
女性経験の乏しい俺には登録だけとは言え、かなりハードなのは間違いない。
正直、初戦闘と変わらないくらい緊張しながら受付へと進む。
幸い、サーチのお陰でテンプレみたいな冒険者に絡まれる事なく進めた。
まあ、サーチはランキングで言えば丁度中間位のレベルだ。
ようするに初心者に絡むような冒険者からすれば、かなりの実力者と見えてしまうので絡むような愚は起こさないのだろう。
初心者とランキング中位の差を簡単に表すなら中学生と大学生くらいだ。
この状態で喧嘩を売りに行くのは考え知らずのアホだろう。
俺1人なら確実に絡まれただろうけどな。
こうして俺は受付へ到着し登録を開始する。
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