プロローグ6話『戦闘、ヨークリウ』
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まるで、ゲームやアニメの中盤から終盤にかけて出てきそうなビジュアルの黒い竜。
黒い魔力弾もバンバン口から放ってるけど…イマイチ怖さは感じないんだよなあ。
「ちょ、ちょっと!旅人さま!お逃げにならないの?」
「いや、だって…逃げたところで、ねえ」
逃げたとしても市民でごった返しているんだし、ロクなこと無さそうだ。
ここは静に徹することにする…と言いたいところだが、街…国が壊れるのを黙って見ているのは、なんだか心が許せなかった。
「お嬢さん。聞いておきたいことがあるんだが」
「こんな時に!?なんですの?」
「幽霊でも、物とかは触れんの?」
幽霊には2パターンあって、物に干渉できるのとできないのがいる。
前者はポルターガイストを引き起こすだとかなんだとか、元いた世界で昔読んだ本にそう書いてあったようななかったような。
「人は無理でも物は触れますわ!訊くからには…何かして欲しいことでもありまして?」
「察しが良くて助かる。お嬢さん、なんでもいいからとりあえず武器持ってきてくれないか?」
「良くってよ?でも、それまであなたは何をするの?」
「あの竜を食い止める。頭はやめろって言ってるけど、心がそうしろって言ってんだよ」
はっきり言って、ここで戦う意味が自分にあるかどうか訊かれれば、現時点では意味を見出すことはできない。
だが、あの翼竜にこの街が蹂躙されるのは、何故か酷く見たくない。
今、それを阻止できる力が自分にあるのなら、使わない選択肢なんて最初からない。
あっちの世界でとうに捨てた命、誰かのために散るのなら…それも良いかもな。
「…本気ですのね?わかりましたわ!強そうなのをお持ちしますわね!」
そう言って、お嬢さんはフワリと何処かへ行ってしまった。
「素手でどこまでやれるかわかんねーけど、やれるだけやってやろーじゃねーか」
とは言っても、飛行能力がない俺にとって飛べるアイツらはなかなか手こずりそうだ。
まず、2体のうち1体を挑発なりして、こっちへ引きずりこむのが得策かな。
とりあえず、ヤツらの標的をこの街から俺に変えることにする。
「何かないかなー…あ、石ころ見っけ」
足元に手ごろなサイズの石ころを見つけた。
「俺のスキルを信じる。目標はあの竜の腹、俺の石ころ投げを食らいやがれ!」
・スキル【千里投擲】
格下の対象に物を投げて攻撃する場合、遠く離れていても高威力高確率で相手に当てることができる。
ただし、対象との実力差が余りない、もしくは対象が格上の場合は牽制程度にしかならない。
幸多の投げた石は、上空の竜に向かって矢の如く突き進んでいった。
「ギィヤァッ!」
1体の竜が、石を当てられたことにより落下する。
そこそこの重量のようで、落下した時にズシンと辺りが揺れた。
「ま、こんなんでくたばるわけがねーけど。まずは1体…さあ、アイツはどうしたもんかね」
異変に気付いたもう1体の竜が咆哮しながら激怒。幸多の方へ襲いかかってきた。
「流石にバレるか。素手でどこまでやれるか…なっ!」
鋭い足の爪で強襲してきた竜と取っ組み合いになる。
物凄い殺意、こんな竜にも同族意識があるのだろうか。
「半端ねー握力だな!抑え込むのでやっとだ!」
撃ち落とした竜が起きる前に、なんとかこのガチギレしている方を殺りたい。
そんなガチギレしている竜は、至近距離から魔力弾を放とうとしてくる。手が使えないのでガードができない、が…
「手は塞がっちまったが…こっちはフリーだぜ!」
幸多の鋭い蹴りが竜の頭部、つまり顎を捉えた。
同時に、竜が口から放とうとしていた魔力弾が、顎を蹴られたことにより暴発した。
「ギュアッ…」
「痛いだろ?」
悶絶する竜。
少しのたうち回った後、気を失った。
「意外と戦えるもんだな。さ、アイツもそろそろお目覚めかな…ん?」
「うわあああん!おかあさあああん!」
戦闘中だが、はっきりと声が聞こえた。
親とはぐれたのか、逃げ遅れてしまった子供が泣いている。
ダメだ。これでは竜に気付かれてしまう。
「ギャ…リ…リ」
先ほど空から撃ち落とした竜が目覚め、牙を向け子供に襲いかかる。
殺意のみが頭を支配した、そんな竜の攻撃は速く、鋭く、反応するので精一杯だった。
「痛っ…嬢ちゃん…大丈夫か…?」
「うん…ありがと…お兄ちゃん…あっ!血が!」
間一髪のところで助けたは良いが、脇腹を噛まれてしまった。
「ああ…大丈夫だ。ほら、早くあっち行きな、とにかく今は逃げるんだ」
「う、うん!お兄ちゃん…ありがとう!」
少女が安全圏に入ったことを確認し、改めて自分の傷を見る。
「くっ…血が止まらねぇ…」
ここまでの出血は初めて。
俺…ここでまた死ぬのかな。
いや、まだ死ねない。討つべき敵がまだ残ってる。死ぬならアイツらを殺ってからだ。
「ギィヤァ!」
幸多を葬らんと、再び襲いかかってくる竜。
「はあ…はあ…集中!」
【研ぎ澄まされし慧眼】発動。
意識を集中し、竜の動きを捉える。
「右…」
スレスレのところで回避。1発でも当たったら幸多の命はない。
「避けてるだけじゃダメだ…早く攻撃に回らなきゃ…武器。なんでもいいから武器があれば」
その時だった。
「お待たせしましたわ!受け取って!」
「ああ!お嬢さん、間に合ったか!よし、これで戦える」
武器を取りに行っていたお嬢さんが戻ってきた。
何の変哲も無いごく普通の剣だが、今の幸多にしてみたらRPGの最強装備並みに信頼できる。
「あら…旅人さま、お怪我が!」
「安心しろ、死ぬ時はこの2体の竜を葬ってからだからよ。行くぞ!」
【百戦錬磨の勇神】発動。
ここから、巻き返してやる!
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