プロローグ4話『お嬢さんとの邂逅』
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流れ星なんて久しぶりに見た。
随分前、子供の頃の話になる。臨海学校の夜、キャンプファイアーをしながらボーッと夜空を眺めてたら、キラリと光る雫を見つけたんだっけか。
だけど…こっちの方に来るなんてことは無かった。ていうか、普通来ない。
そんな危なっかしい流れ星は頭上を通過し、向こう岸の方に光りながら落下した。
「行けって神様からの思召しか?仕方ねえな」
周囲に人はいない、つまり、幸多しかその流れ星の存在に気づいていない。
落下地点はそれほど離れていなさそうだ。見失わないうちに見つけよう。
「意外とバテないもんだな」
走っていてもそれほど疲労を感じないし、何よりスピードも維持できている。あと心なしか速い。
この世界に来てから、なんだか自分のスペックが高くなっている気がする。
「こっちか」
微々たるものだが、煙が上がっているので楽に見つけることができた。
流れ星の落下地点には小さなクレーターができていた。そして、その真ん中には青白く光る何かがあった。
「きれーだなあ…って見惚れてる場合じゃないよな。これなんだ?」
その青白い光の正体は…ペンダントだった。
荒削りの青白く輝く石がメインに飾られたペンダント、凄く綺麗だ。
「ちょっと着けてみるか、案外似合うかもな!」
魔性の光に誘われ、気づけばそれを手に取っていた。
異世界でも装飾品はステータスになり得るだろう、少しでも箔を付けてあの腐れ貴族に靴でも舐めさせたい。
「わあ!似合ってますわ!」
「ふふ、だろう?飾られた俺の魅力は留まるところを知らねーぞ?」
「そのペンダントをつけてくださるなんて…嬉しいですわ」
いつのまにか女にもモテるようになっちまった。
こりゃ、異世界でのハーレムライフも夢じゃ…
「うん?うん??」
待て、コイツは誰だ?
そこには品の良いドレスを着た少女。髪は…ウェーブがかったロングヘア。見かけはなんだかお嬢様っぽい。
「おいおい、こんな深夜に女の子が1人で出歩いちゃダメだよ。早くお家に帰りな?親御さん、心配してるよ」
「むっ!わたくしをお子様扱いしないでくださる!どこからどう見ても16歳のれっきとしたレディですのよ」
いや、どこからどう見てもお子様だろ。
異世界にしろ何にしろ、今どきの16歳ってのは随分とお高くとまっているもんだ。少しは
大人の言うことを聞きなさい。
「もう…なら、あなたは一体どんな大人なのかし…あら、あなた…中々凄いスキルをお持ちですのね。これほど良質な物を多く所持してるなんて、余程日頃から研鑽を積まれているのね」
「ああ、スキル?なんだそれ?」
スキルっつーと、まあゲームなんかでよくあるアレか。
昔なんかのRPGでチート級のキャラ作ったけな、スキル弄って。
「スキルというのは、その人の力の証ですわ。才能でもあれば努力でもある、でもこんなに凄いのは初めて見ましたわ!」
恍惚とした表情で幸多に話しかけるお嬢さん、両手を合わせて喜んでいる。
こっちとしては勝手に感動されても困る。てか、どうやってそのスキルを確認するんだ?
「なあ、そのスキルってどうやったら見れるんだ?」
「こう、頭のてっぺんに意識を集中してみてくださる?」
そう言い、女の子は右の人差し指で自分の頭を指し始めた。
「うーん、こうか?」
とりあえず、意識だ意識。
そう、頭の上に情報が表示されるように。
あたかもRPGでステータス画面を表示するかのように…
バンッ!
「お上手ですわ!さあ、ご自分でも確認しましょう」
「どれどれ…」
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【百戦錬磨の勇神】
・いかなる武具を自在に扱うことができる。
【研ぎ澄まされし慧眼】
・意識を集中することにより、対象の動きをゆっくりと捉えることができる。更に極限まで高めると未来視すらもできるようになる。
【インフィニット・バイタル】
・どんなに肉体に負荷をかけようが大して苦
に感じない。
【世界語堪能】
・異世界の言語を操ることができる。
【幸多き我が人生】
・運がめちゃ良い!
etc…
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「色々あるが…気になったのはこの4つぐらいか。幸多きって…冗談キツいぜ、まったく」
だが、これで納得がいった。さっき見知らぬ字を見てもすらすら読めたのはこの【異世界後堪能】、結構飛ばして走っても全然疲れなかったのはこの【インフィニット・バイタル】ってスキルのおかげっぽいな。
「あら、どちらへ行かれるの?」
「宿屋。実は俺旅人でさ、今日この国に来たばっかなのよ。じゃあな、お嬢さん。早くお家に帰れよ」
肉体的疲労はそこまで感じないが、精神は別だ。あー、早く風呂に入ってあったかい布団で眠りたい。
「お、お待ちなって!行かないで!」
「あー?やめろやめろ、このままだと俺が不審者扱いされちまう…この国のお巡りさんが俺を捕まえられるとは思えねーけど」
最後の方は小声で喋る。実際、あの貴族といた兵士ですらあの体たらくだ。
練度の問題か、それ以前の問題かは知らないが今の俺に到底勝てるとは思えない。
「カガミ様、お帰りなさいませー。川はいかがでしたか?」
「良かったよ。やっぱり落ち着くわな」
「それはそれは。ん?何やら落ち着かないご様子ですが…」
宿屋に戻り、受付にいる宿主と話す。
どうやら俺の挙動を不審に思っているようだ…だが無理もない。だって。
「もう!わたくしを置いていこうとするなんて…」
「お、お前!早く帰れって言ったよな!」
例の少女が付いてきてしまった。
「…?お疲れのようですね、ゆっくりお休みになってください」
宿主が何かを察したように恭しくお辞儀する。なんだか申し訳ないが、どこか引っかかる。
そして部屋に戻ったのだが…
「お前…これで万が一俺がお縄にかかったらどうすんだ?あ?責任とってくれんのか?」
「問題ありませんわ!だって貴方にしか見えてませんもの…」
「問題大アリだわ!あー、もう!本当によー。ん…?」
なんかこのお嬢さん変なこと言ってなかったか?
「あ、あのー。今のセリフ、もう1回お願いします」
「えーっと、問題ありませんわ!」
「その後…です」
「えっとえっと、だって貴方にしか見えてませんもの」
いや、まさかな。でも、うん、確かに。こんな夜更けに、あんな所に女の子1人って…冷静に考えたらおかしいのかな。
「ずっと気になってましたの。なんであのペンダントをつけられたの?なんでわたくしのことが見えてるの?」
「う、嘘…だ…ろ」
「ちょっと!旅人さま!お気をしっかり!」
ああ、もしやとは思ったけどその線は考えたくなかった。
訳もわからずこの世界に来てから早々…なんで…こんな…ことに。
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