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タマシイメイキュウ

「おい。安部君またかい・・・いったい何度同じミスをしたら気が済むんだ・・・まったく・・・」

僕は今年この会社に入社した安部 直仁。自分でも分かってるんだけど・・・無能みたいなんだ・・・会社の邪魔者だよな・・・みんなそう思ってるに違いない。

僕は自分の人生に絶望した・・・世の中にも・・・死にたい・・・そうも思った・・・何度自殺を試みたことか・・・だけど怖くて死ねなかった・・・

そんな日々が2週間近く続いたある日

会社の仕事で取引先の業者のほうに課長と打ち合わせに向かった。4丁目の交差点の道端に花が供えられていた。かわいそうに・・・事故で亡くなってしまったんだな・・・その時死にたいと思っていた僕の心の中に複雑な感情が芽生えた。ぼんやりしながら横断歩道をを渡っていると・・・

ガラガラドッシャーン

大きな音が聞こえた。トラックが停まっている。何か変だ・・・この感覚・・・

僕の意識は遠のいた。だがかすかに声は聞こえた

「早くっ!!救急車、救急車ーっ!!事故だ事故!!」

完璧に意識を失った。事故?何の事だ?救急車?誰が事故にあったんだ?

そんな事が頭をよぎる。

気が付くとレンガで出来た壁が周りにある。一箇所だけ歩けるところがある。そこへ向かって歩いていく。いくつもの分かれ道、行き止まりがあった。どうやら迷路のようだ。なぜこんなところにいる?僕は悩んだ。だけど立ち止まっていてはいけない。そう考えた僕はまた歩き出した。

「あんた直仁じゃないか・・・こんなところで何やってるんだい・・・」

声がした。後ろからだ。振り向いて見るとばあちゃんがいる。

あれ・・・確か・・・3年前に死んだはずの・・・

だが僕はそんな事気付かなかった。久しぶりに会ったばあちゃんと話し込んだ。

仕事はどうだ?元気か?お父さんは?などと質問された。

ばあちゃんに嘘はつけない。真実を話した。

「仕事・・・うまく行ってないんだ・・・どうしたらいいだろう・・・」

「ゆっくりやりなさい。あせっても何も得られないよ。まだまだ新人なんだから頑張りなさい。」

ばあちゃんは優しくそう言ってくれた。

「わかった。頑張るよ。」

ばあちゃんのおかげで勇気が持てた。頑張ろう。そう誓った。僕はばあちゃんに別れを告げて再び歩く。

数分歩くと黒猫がいた。

あの黒猫・・・ああ3週間前のあの猫だ!

―3週間前―

「あれ?あの黒猫・・・怪我してる・・・助けてあげなきゃ。」

その黒猫を抱きかかえ動物病院へ連れて行く。

病院に連れて行ったがもう手遅れだった。すごく悲しい・・・


・・・


黒猫はゆっくり歩いていく。ニャーオ。僕のほうを向いて鳴いた。ついて来いと言うのか?そう思った僕はその猫について行く。時折僕のほうを振り向く。ついてきているか確認しているんだろう。だんだん明かりが見えてきた。出口か・・・出口だ!!

遂に抜け出す事ができたんだ。黒猫にありがとうと言おうとしたがもう居なかった。どこに行ったんだろう?僕はまた意識を失った。


・・・


意識を取り戻すと病室の中だった。医者の声が聞こえた。

「目が開いたぞっ・・・意識を取り戻したぞ・・・奇跡が起きたんだ!!」

今気付いた。事故にあったのは僕だったんだ。だとしたらあそこは・・・死んだ人が、動物が行く“あの世”だったのかもしれない。もし抜け出せなかったら僕は死んでいたかもしれない。ばあちゃんは・・・だからあそこに居たんだな。あの黒猫も・・・。黒猫のおかげで生きられるんだ。あの黒猫を助けていなかったら死んでいたかも知れない。僕はもう死にたいとは思わない。ばあちゃんのくれた勇気を希望を持ってまた頑張ろう。失敗するかもしれない。でもやってみるんだ。

勇気を持って・・・




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