表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつか語られた物語  作者: 祝子 紀
8/18

第8話

生きの良い魂魄と器の人型



あの子はいつも落ち着きってものが身につかないんだから   母 影宮玲悧



師匠(せんせい)!ファミリエを追わなくては!」

「まぁお待ちよ、今度は君が落ち着きなさいなシス君」


 おめおめと目の前のファミリエが宿ったと(おぼ)しきゴーレムに逃げられてしまった吾輩とシス君、シス君は焦りをあらわに今にも追いかけていきそうになったが視線をシス君の服に合わせ着ている服の襟首の後ろを念力(テレキネシス)でつまみあげてシス君の行動を阻止した。


 先ほどは極度の興奮のあまりシス君の身体検査魔術(メディカルチェック)を行うことを後回しにしてファミリエ入りのゴーレムの調査を優先してしまうという里親(ちちおや)失格な行動を深く反省する。


「つっ摘み上げないでください!師匠(せんせい)!」

「ごめんよ、シス君でもちょいとお待ちよ、今、追跡(トレース)身体検査魔術(メディカルチェック)の結果が出て…おや?」


 ゴーレムが逃走したことよりも吾輩は目の前で起こった一連の出来事に興味をそそられて顎に手を当てて思考を(めぐ)らすと同時にその場に残った魔力痕から対象を追跡(トレース)する魔術とつまみあげたシス君を下してを身体検査魔術(メディカルチェック)を二重に行使しその結果に興味がわく。


 追跡(トレース)の魔術は正直、期待はしていなかったがやはり反応がない…なんせ吾輩が張った保護結界(シールド)を力づくで破るでもなく正式な手段で解いたわけでもなくましてや吾輩を含めた魔術や魔法を操る魔導士が考えもつかない方法で保護結界(シールド)()()してすり抜けるなどの高度な技術を見せたファミリエだこの程度は小手調べのことなのだろう。


 だが、身体検査魔術(メディカルチェック)の情報でシス君の体に特に異常がなく(腕や手首に異常は表面的にも見当たらない)、ゴーレムからの魔力線(パス)が伸びていることに気づく、やはりファミリエが憑依しているとはいえもとはゴーレムであるから召喚者からの魔力線(パス)はつながっているようだ。


「どうしたのですか?師匠(せんせい)まさか僕の体に何か悪いところでありましたか?!」


 ゴーレムを追う為に研究室を飛び出そうとしていたシス君が不安そうな青い顔で問いかけてくるが吾輩の顔には笑みが浮かんでいた。


 先ほどはファミリエに対してちょっと怖がらせてしまったために吾輩が追いかけるのは下策なのだならば別の手段を講じれば良い。


「いやいやとくにおかしなことはないよ、そ・れ・よ・り・も・シス君、ファミリエ君を連れ戻すためにちょいと協力してもらうよ~」


 両の手をを合わせ魔力を練る、術式を改ざんして目的の魔術を創るとシス君に行使する。


 シス君からつながる魔力線(パス)を通してゴーレムの視点に同調(シンクロ)するどうやら学院の外へと道を探そうとしてあちこち高速で移動しているようだ。


 次の瞬間には視線が動き回って道を曲がったりしているがゴーレムの中身がすごいものなのかとてもこの反応速度では人間族(ヒューマン)が出せる速度ではないのでこれでは単純に追いかけるだけでは(トラップ)でも使わないと捕まえられないだろう。


 だとしても(トラップ)単純(シンプル)なものでよい。そもそも吾輩たちが追いかけなくてよい。


「さてどこに行こうともゴーレムというものは必ず主人の呼び出しには応じるものだよ」


 ぐにゃりとシス君のわきの空間が歪む。


「それじゃあ、もう一度改めて自己紹介から始めようかい?ファ・ミ・リ・エ・君」


 突如として空中に放り出されたにもかかわらずに猫人族(キャッツ)のようにちゃんと二本足で器用に着地を決めて見せたシス君のファミリエに穏やかに話しかけた。


「ええ、どうやらここから逃げ出そうにも普通のやり方じゃ無理そうですしね」


 見事なまでに()()髪目の彼女は引きつった笑みとともに吾輩たちとの話し合いに応じる態勢を見せたのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ