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いつか語られた物語  作者: 祝子 紀
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第5話

空瓶の魔力回復薬(マナポーション)



恐れずそして進めその先に我が道があると信じてな   獅子のごとき鬼



 アルテリウスの助言(サポート)はアレクシスを的確に導くものだった。そうして魔法陣を心臓に溶かし終えゆっくりと手をゴーレムから引き抜いた時であった。


 ミシリッバキッバキンという音と共にゴーレムが変貌を開始した。


「アレクシスッ!」

「ウワァッ!師匠(せんせい)!」


 突如として起動したゴーレム、空気中に漂う魔素(マナ)でさえ吸い込みゴーレムを起動するため必要魔力を一番近いアレクシスから奪い取っていく。


 奪われる魔力量に危険を感じたアルテリウスはアレクシスの口に倉庫から空間魔術で取り寄せた貴重な最上級の魔力回復薬(マナポーション)(くわ)えさせて自身の危険も(かえり)みずアレクシスの身をゴーレムから引きなそうとする。


 だがそれはアレクシスの手元を見て即座にアルテリウスは不可能だと判断した。


 ゴーレムの心臓の真上に置かれたアレクシスの手の中には空気中から吸い出された魔素(マナ)が集まり、天然の魔素(マナ)溜まりにしかできないとされている魔石が出来上がっていた。


 これがどれほど絶望的な状況下というと、過去において人工的に魔石を作り出そうとした当時の魔術の最先端をいくとある国を挙げての実験で研究の最終段階である魔素(マナ)の結晶化の際に爆発事故が発生し、研究所はおろか城下町と城を巻き込んで一国が一夜にして滅んだと文献に残されている。


 おとぎ話とされていたが文献が見つかった村に近い湖が巨大なクレーターの跡地であると証明されてからはこれを教訓として人工的な魔石を作る実験を世界中の国々の間で禁止とされているほどである。


 自分が見つけたファミリエの魔法陣の実験なんかに大事な里子(むすこ)直弟子(せいと)であるアレクシスを巻き込んでしまったとアルテリウスの胸中に後悔と絶望がよぎるがそんなアルテリウスにアレクシスのかすかな声が耳に入った。


「静まれ、鎮まれ、しずまれ」


 (くわ)えさせた魔力回復薬(マナポーション)はとうに飲み干したのだろう。


「静まれ、鎮まれ、しずまれ」


 急激な魔力の吸い上げにアレクシスの体が悲鳴を上げている、顔色は青を通り越して白くすらある。


「静まれ、鎮まれ、しずまれ」


 アレクシスはそれでも鎮めの言霊を唱え続けていた。偉大な師匠(せんせい)が見出してくれたアレクシスの才能、大好きな里親(ちちおや)が信じて任せてくれたファミリエの魔法陣の制御に彼は全力で挑んでいた。


「かくて道はつながり 盟約は執行される 混沌と虚無の回廊をとおり」


 爆発寸前の燐光が魔石に集うがそれでもアレクシスはあきらめない。


「現れ出でしは わが耳にして 目となる最愛なるモノ 汝に器を与え」


 貴族の面汚しとののしられたアルテリウスの名誉を少しで回復させるため。


「確固たる存在とし 祝福と慈悲を与え ともに生きて滅ぶを誓うこと」


 平民の孤児であるアレクシスに暖かな衣食住を与えてくれたアルテリウスに恩を返すため。


「我が命を以てここに示さん いざ汝にわが真名(しんめい)をささげ(たてまつ)る」


 そして、何よりも………


「わが真名(しんめい)はアレクシス・アルテリウス・サヴァン・シェイドルーン」


 魔導士の禁忌であり名を受け継がせるという最高の栄誉をしてくれたアルテリウスを死なせないために。


「来い!ファミリエ!」


 魔石が強烈な光を放ち、アレクシスとアルテリウスの目がくらんだ。


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