第1話
初めまして!
一度書いた物を少しの書き直してもう一度上げ直したものです。
素人が作った小説なのでいろいろ誤字脱字もあるかもしれませんが頑張っていきますのでよろしければお読みください。
綿埃の子犬
春は出会いの季節というがこれほど奇妙な出会いもあるまいさ 魔導士アルテリウス
国立魔導士育成大学院所属の魔術師アレクシスは大の付くほど掃除嫌いで掃除がヘタクソである。
あの人の掃除は掃除ではなく埃をまきあげて動き回っているだけだとか、まるで綿埃で遊ぶ子犬のようだと、院生達の格好の悪口の的になるほどである。
アレクシスとて好きで埃をまき散らしているのではないただ自分の容量が悪いことを自覚していないのだ。
箒を手に取り床を掃くだけの行動で濛々と埃が舞い上がり、棚の上にはたきをかけるということをするだけでアレクシスの周りから生徒たちが一斉に逃げ出すほどである。
本来ならばそういったことは生活魔術の「クリーン」の一言で済むことなのだがアレクシスはゴーレム制作特化の魔術師でありそれ以外の魔術が使えないことがアレクシスの一つ目の不幸であった。
ならばゴーレムに掃除をさせてみせればいいのではないかと考える人もいるだろうが、ゴーレムというのは製作者の知識と行動を転写した単純な人形と降霊魔術を施した高度な自動人形の二種類が存在するがアレクシスには降霊魔術の素養がなければそれを使える友人もいないことが二つ目の不幸であった。
このことに加えて貴族出身の多い魔術師の中で唯一の平民であり学院初の編入生でもあり学院最年少の14歳での入学を果たしたことが彼の友人を作る機会をなくしたのが三つ目の不幸であった。
だが、これらの不幸を打ち消す最高の出会いが彼にはあった。
「シス君、放課後よかったら吾輩の研究室に来てくれないかい」
「もちろんです。アルテリウス師匠、喜んで伺います」
「相変わらずシス君は吾輩が突然現れたというのにリアクションが薄いね~」
「驚いてはいますよ、僕は顔に出ないだけです」
錬金術師学科の教授フラメア・ニコラウスに言いつけられた教室の掃除をしているアレクシスの背後に唐突に表れた実に2m近い猫背の男性は「シス君のびっくりした顔が見たかったのに~」とか「せっかく空間移動の魔術までつかったのに~」と少々すねたような声でぶつぶつ言ってはいたが男性の顔には微笑みが浮かんでいた。
この人こそアレクシスの里親でもあり、アレクシスがこの学院に入るきっかけを作った魔力制御能力研究学科の教授でもある魔導士アルテリウス・サヴァン・シェイドルーンである。
教授でもあると紹介したように彼にはほかにも様々な面があるのだがそれは今は置いておこう。
「またフラメア君に目をつけられたのかい、ホムンクルス作成実験に使った教室の後片付けとはね~」
「仕方ありませんよ、僕には」
「シス君には、ゴーレム作成魔術の才能がちゃんとあるさ」
「でも教授」
「でも教授じゃないよ、師匠だよ。直弟子として吾輩が才能を見込んだのはシス君だけなのだから、なんせシス君が赤子のころから里親としてずっと見てきたからね、たとえ自分の嫌いな掃除であろうと最後まで自分のできることを頑張る君には努力という名の才能があるのさ」
「師匠」
微笑みを崩さずにまじめな調子の声でアルテリウスは自身の直弟子でありたった一人の里子に対して真摯な態度と暖かなまなざしで語る。
「ま~でもね~、さすがに吾輩が匙を投げつける段階まで生活魔術の才能がないとなるとこの先の人生困るのはシス君なんだよ~」
「ウッ、ショ、ショウジンイタシマス」
「いくらゴーレム特化型の魔術師とはいえゴーレムには自身の知識や行動を転写できるのだから炊事掃除洗濯ができるようにがんばりなさいな」
「ハイ、ガンバリマス」
あそこで話が終わっていたらイイハナシダッタノニナーと思うようなアルテリウスのこのあげて落とす話術である。
アレクシスは片言になりながらまことに申し訳ないといった態度でアルテリウスに頭を下げる。
自らの経験も交えてのありがたいお説教を直弟子に授けるとアルテリウスは先ほどとはがらりと違う軽い調子の声と生暖かいまなざしでやはり微笑みは崩さずに「じゃあ、研究室で待ってるからね~」と教室から空間魔術を使って去っていった。
そうして去ったアルテリウスを見送ったアレクシスはさて繊細な機材がごちゃごちゃと並んでいるだろう教室の掃除を再開しようかと振り返ると何時の間に片付いたのやらアレクシスが知らぬ間に綺麗な教室へと変わっていたこれにはさすがのアレクシスも見た瞬間固まるほどであった。