第27話_ミニマム・ラビットスライムの族長
※10/26_22話に追加挿入してあります。よろしかったら見てみて下さい♪
「くらえ、ね~こ~ぱ~ん~ち~☆」
全裸の猫耳幼女が放った抉るような猫パンチが、同じく全裸の兎耳幼女にヒットする。
ばちん!!
兎耳幼女が怒りで顔を真っ赤に染める。
「キャットオーク風情に負けられないわ! ラ~ビット・キ~ック!」
兎耳幼女の回し蹴りが猫耳幼女を襲う。
べちっ!!
「「よくもやったにゃ!!」」
仲良く声がハモって、そこからは乱戦になる。
ばちっ! べちっ!
ボカスカ! ボスボス! ベチン!!
周りを見るだけでも、お互いに決定打に欠ける“きゃっと☆ファイト”がそこら中で繰り広げられている。ステータスが比較的高いブルーアやシャントリエリが戦闘に加わったら状況が変わるのだろうけれど――僕の命令でスライムの殺害を禁じているから、2人でも手間取るのは確実だろう。
そう考えて今は、グローリーに近づこうとしているスライムだけを重点的に“投げ飛ばす”任務を与えている。
そう、膠着状態になるのは僕の予想通りだ。
キャット☆ファイト状態の全裸娘達の間を通って、ミニマム・ラビットスライムの族長の元へ歩いていく。
視界に入るだけでも、少なからず魔法の竹槍を取り返した猫娘達もいる。
でも、敵味方が密着した状態で攻撃すると仲間まで凍傷になってしまいそうだからか、攻撃を躊躇している感じ。
その一方で、スライム形態になった兎耳幼女の方も、スキルの“強酸”が通らずに戸惑っている様子。これは、僕が毛皮の腕輪に組み込んだ、水属性の魔法の効果“水属性耐性”によるもの。装備しているだけで全身をカバーしてくれる不思議原理が謎だけれど「異世界だからありなのだろう」ということにしておく。
とはいえ、水属性に耐性があるとしても、スライムに顔を塞がれたら呼吸が出来なくて危険なのは変わらない。けれど――敵も味方もそれには誰も気付いていない感じだから、僕は僕の役割を果たさせてもらう。
ということで、やって来ました兎耳娘の族長の元へ。
「――っ!? いつの間にここにやって来たのですか!?」
「いえ、普通に歩いて来ましたけれど? えっと、お話したいことがあって――「皆さん、この男を囲みなさい」――「「「はっ!!」」」――あの、僕はお話しをしたいんですが?」
僕の言葉を無視して、竹槍を持った全裸幼女に囲まれる。
ロリコンなら泣いて喜ぶ光景なのだろうけれど、何というのか、慣れてしまえば恥ずかしくもないし気にもならない。
え? 今の僕の格好? 腰布1枚ですが、何か?
……うん、冷静に考えたら背筋が寒くなる。元の世界なら、十分現行犯逮捕される状況だ。
本当に、ここが異世界で良かったかも。
「何を余裕の表情をしているのです? あなたは囲まれているのですよ?」
若干、いらついている雰囲気を醸し出しながら、ラビットスライムの族長が僕を睨みつける。多分、楽勝だと思っていた猫娘達が善戦していることに焦りを感じているのだろう。
余裕が無いのがバレバレだ。
これ以上警戒されないように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「貴女のお名前を教えてもらえませんか? 貴女達と交渉がしたいのです」
「わたくし達と交渉ですか? 良くもまぁ、わたくし達の仲間を攫っておいて、ぬけぬけと! 遠慮なんて無用ですね、皆さん――「ちょっと待った! 仲間を攫った? どんな状況で、なぜ僕らが攫ったと判断したのか、教えてもらえませんか?」」
言葉を遮った僕を見て、ラビットスライムの族長が小さくため息を吐く。そして、困ったように腕を組んだ。
胸の下で組んでいるから、持ち上げられてボリュームが凄いことになっているけれど……一瞬だけ見た後は、意志の力で視線を持ち上げる。
あ、勝ち誇るような爆乳幼女と視線が重なった。
「ふふっ♪ オークのヌシだけあって、獣なのですのね?」
「……ダメですか?」
「鳥肌が立ちますね、気持ち悪くて♪」
なんか凹む。でも、ぞくぞくする中毒性がありそうな、その視線はちょっと美味しい――って、これは良くないな。意識を元に戻そう。
小さく咳払いをして、雰囲気を変える。
「とりあえず、一時休戦しませんか? なんなら、武器はそちらに預けていても大丈夫です」
「ずいぶんな自信ですね? 武器が無くても勝てると?」
作り笑顔のような、冷たい笑顔でラビットスライムの族長が微笑む。
その表情は、美人の笑顔が使い方次第で、かなり攻撃的になることを改めて教えてくれた。
「いえ、僕のは自信じゃなくて信用しているだけです。きちんと話さえすれば、こっちが敵でないことも、貴女の仲間が攫われたのが僕らのせいじゃないことも分かってもらえると思っています」
「……そうですか、分かりました。このままだとお互いに決着がつかないみたいですし、一時休戦しましょう。武器はこちらに預けて下さい。変な行動をしたら、すぐに対処させて頂きますから、そのつもりでお願いしますね?」
「分かりました」
頷いてから、周りの猫娘達に呼びかける。
「みんな、一時休戦になった! 怪我をしないように距離を取って!! あと、武器は全部ラビットスライムさんに預けることになったから、大人しく引き渡すように。これはヌシ命令だから!!」
僕の言葉で猫娘&鬼娘の動きが止まったのを見て、ラビットスライムの族長も声を張り上げる。
「わたくし達も休戦です! 相手から武器を回収したら、適度に距離を取りなさい!!」
凛とした声を聞いて、スライム達も大人しくなる。
猫娘や兎娘達は、お互いに少し不満げだけれど、争いを止めて静かになった。
その様子に満足げに頷くと、ラビットスライムの族長が僕の方を見た。
「さて、それじゃお互いに情報交換といきましょう。こっちの事情とそちらの事情を知らないことには、お互いに信用することは出来ませんからね?」
「分かりました。でも――」
「でも?」
一瞬言いよどんだ僕の態度に、ラビットスライムの族長が警戒する表情を見せた。
違うのです。そうじゃないのです。何と言うのか。
「……とりあえず、僕も男だから、何か服を着てもらうことは出来ますか? その、いつまでも腕を組まれていると、僕の理性が危ないのです」
きょとん? といった表情を浮かべたラビットスライムの族長。そして、心の底から可笑しそうに、クスクスと笑い出す。
……何だろう、めっちゃ傷付く。比喩じゃなくて、物理的に、マジで心が折れそう。
ラビットスライムの族長は、そんな僕の様子を見てひとしきり笑った。
そして、おもむろに腕の一部を触手のように伸ばすと、近くにあった広葉樹の大きな木の葉を数枚千切る。そして、胸元と足の付け根に押し付ける。
ゆっくりとした“たゆん”とした弾力の後、葉っぱがそのままくっついた。
うむ。“葉っぱ水着”とは何ともレベルが高い。スライムだから、くっつくのかな? うん、隠されているからこそ感じられる、神秘のエロスがそこにあった。
露わだった時よりも、魅力を増しているのは間違いない。
「ふふっ♪ お気に召していただけたみたいで光栄ですわ」
気が付けば、ガン見していた僕がいたらしい。ラビットスライムの族長に、苦笑するような顔で妖艶に笑われてしまった。
「わたくしの名前はフラン・フランネルです。あなたの名前を教えてくれませんか?」




