第26話_幼女ぬるぬるきゃっと☆ファイト!
武器を持った兎娘が包囲網をじりじりと狭めている。
普通なら全裸状態のミニマム・キャットオークは、竹槍で攻撃されたら大怪我を負ってしまう。でも、今回はそれに当てはまらない。
「「「早く、逃げるにゃ!!」」」
「お前ら落ち着くにゃ! 防御力はこっちが格段に上、スライムはチュラカ達の武器を使えないにゃ!!」
「「「了解ですにゃ!!」」」
兎耳娘に武器を奪われたことで、かなり騒いでいた猫娘達だけれど、チュラカの指揮で静かになる。
なぜなら「負ける要素は何もない」ということを、みんな一瞬で思い出したから。
兎耳娘達が手にしている竹は、形式上竹槍とは呼んでいるけれど先端を尖らせていないので、普通の竹竿となんら変わらないものになっている。
もちろん、使用者制限をかけているからスライム達では氷の刃を生み出すことは出来ないし、アイス・ニードルの発射も出来ない。
事前に“使用者じゃないと持ってから15秒後に電撃が走る”みたいな機能を持つ魔法陣を組み込んでおけば話が早かったのだろうけれど、そこまで頭が回らなかった。
それは次回以降の宿題としておこうと思う。
そして、毛皮の腕輪&足輪でスピードが格段に上がっている今の猫娘達にとって、同格以下のスライム相手に武器強奪をするのは難しいことではない。元々の攻撃力が低いから、素手ではスライムにどれだけダメージを入れられるか分からないけれど、武器を奪うまで死ぬことは無いとみんな理解しているみたいだ。
猫娘達もそれを認識したみたいで、すぐに臨戦態勢に入る。
「みんな良いかにゃ? 敵に奪われた武器を回収することを最優先にするにゃ! 武器を持ったらスライムなんて一撃にゃ!!」
うん、一撃で殺しても良いのかもしれないけれど――ちょっともったいないから、口を挟ませてもらおうかな。
「ちょっと待った! ラビットスライムは1人も殺しちゃダメってことにしよう。今のみんなのステータスなら、油断しなければ大きな怪我はしない。訓練のためにも生け捕りでお願いね? 殺さなければ、多少の怪我をさせても構わない」
僕の言葉に戸惑いが広がるけれど、チュラカの声がそれを静める。
「ヌシ様がみんにゃに期待しているにゃよ? その期待を裏切るにゃか?」
猫娘達がブンブンと首を横に振る。
そして元気の良い声で返事をしてくれた。
「「「生け捕り、了解ですにゃ!」」」「「「頑張ります!!」」」「「「やれます!!」」」
猫耳娘&鬼角娘が1人も闘志を失わないどころか、逆に生き生きと目を輝かせて「生け捕りする」と宣言している状態に、戸惑うような表情を浮かべながら爆乳の兎耳娘のリーダーが物騒な言葉を口にする。
「とりあえず、半分くらいに数を減らしましょう! 不遜なミニマム・キャットオークに手心は不要です!! 群れのヌシだけは、殺さないように注意して下さい!!」
「「「プルプル」」」「「「プルプル」」」「「「プルプル」」」
「さぁ、行きなさい♪」
手を振りおろした兎耳娘のリーダー。爆乳が“たゆんたゆん”ってなったのは――うん、目の保養です。ロリコンじゃなくても、この質量には目線が行ってしまうと思うのです。だから僕は悪くないのです。多分、きっと、絶対に!
「……緊張感が足りないわよ?」
いつの間にか気が付けば、大きな布を身体に巻き付けたグローリーが、殺気を放ちながら僕の隣に立っていた。布地が少ない上に濡れてぴっちりとなっているから、ちょっと目線のやり場に困る。胸の膨らみと綺麗な御身足がとても眩しい。
「グローリー……怒ってる?」
目線を逸らしたけれど、グローリーの右手が僕に届いているから、ほとんど意味は無いだろう。
「アキラのへんたい。あとでお説教してあげるから、楽しみにしていなさいよ?」
どこか嬉しそうな声でグローリーが言った。
「――っ!? 誰が嬉しそうなのよ!? 怒るわよ!!」
顔だけじゃなくて肩まで白い肌を朱色に染めたグローリー。やっぱり可愛いな。うん、綺麗なだけじゃなくて、可愛いなんて反則だ。
「にゃぅ!?」
チュラカみたいな声を出して、グローリーが右手を外して固まった。
言い方は悪いけれど、これでしばらくは大人しくしてくれているだろう。
チュラカ達の戦闘の方へ意識を向ける。そこで繰り広げられていたのは――「幼女だらけのヌルヌルきゃっと☆ファイト」だった。
猫耳の全裸の幼女に、ヌルヌル形態に戻ったラビットスライムが絡まって、それを別の猫耳幼女が引き剥がそうとしているのを、全裸の色白兎耳幼女がポカポカ殴る。しかも、お互いに攻撃が通っていないから、無限連鎖的な膠着状態が生まれて心なしかぐったりしている。
うん、字面的にアウトです。絵的には、もっとアウトです。“全裸幼女×ヌルヌル×脱力”なんて事案じゃないですか!!
チュラカ、シャントリエリ、ブルーア、もうちょっと上手に戦おうよ!?
事案どころか事件ですね。――おやっ、誰か来たようだ?




