第20話_ツンツン勇者の前に脳筋幼女が現れた
ミニマム・キャットオークの村を出てから、きっかり3日が過ぎた。
1日目が無事に終わり、2日目も順調に進み、3日目も大きなトラブルもなく終えることが出来た。そして迎えた今日。何事も無ければ昼過ぎには、温泉の出る場所へ到着できる。
フラグだと、思ったけれど、何も無い。
あれから3日が、過ぎたというのに。
「……何を、短歌っぽく格好付けているの? 恥ずかしくないの?」
頭の中で3日前の“ろりこん事件”のことを考えていたら、ジトっとした目でグローリーに睨まれてしまった。うん、流石に3日間ぶっ通しで森の中を歩いているせいか、ちょっとグローリーがツンツンしている。
普通の人なら落ち込んだり、ダメージを負ったり、不快に感じたりするのだろうけれど、僕にとってその視線と態度はご褒美です♪
ジト目の美少女って、何かこう、グッとくるよね。子どもっぽくて可愛いよね。
「なんか頭痛い……。馬鹿にされているみたいで、何か疲れる……」
グローリーに、小さなため息をつかれてしまった。
まぁ、ここ数日でこんなふうに下心(?)を頭の中で考えても、軽く流してもらえるようになっていたから大きな進歩だと思う。
「……」
無言のプレッシャーを発しているグローリー。
あはは、ちょっと怒ってるっぽい。
ごめん、僕も歩き疲れて、ちょっと脳が働いていないんだ(Tω)
「グローリーさんは疲れたわふ?」
シャントリエリが、心配そうな表情でグローリーを見た。
それに対して、幼女に気を使わせてしまったことが恥ずかしいのだろう、グローリーが微妙な表情で笑顔を作る。
「ううん、シャントリエリちゃん、体力的には大丈夫。ただ、アキラの頭の中がおかしいから、それを読んでしまったわたしの気持ちが疲れただけ。アキラが悪いのよ」
グローリーが読心スキルを持つことをシャントリエリは知っている。チュラカや幹部猫娘、そして側近猫娘レベルまでは情報開示をしてあるから。
最初は多少、関係がぎこちなくなるかなと思っていたけれど、シャントリエリやチュラカ達は、グローリーの読心スキルのことは“便利機能”という意味合いですぐに受け入れてくれたらしい。
グローリー自ら読心スキルで探ったみたいだから、間違いは無いだろう。
正直、「グローリー、何してんの?」って話だけれど――チュラカ達は気にしていないみたいだし、グローリーもチュラカ達を信用するようになったから、結果的には良かったのかもしれない。
事実、今もシャントリエリはグローリーと仲良く話をしている。
「それは大変ですわん! ご主人様、グローリーさんを疲れさせちゃダメです!」
「僕が悪いの?」
「悪いのよ。多分、きっと、絶対にアキラが悪い! 理由は無いけれど」
理不尽なグローリーの言葉に、シャントリエリやチュラカが苦笑する。
「いや、理由がないって自分で言っているにゃ~(≡ω)」
「やっぱり、グローリーさんの方が、ちょっと理不尽わふっ!」
「流石に、3日も移動しているのは疲れますよね~。でも、がんばりましょ~!」
会話にルーちゃんも混じって、僕らののんびりとした時間は流れていく。
温泉の出る場所まで、あと半日で到着だ。頑張ろう♪
◇
そう。ミニマム・キャットオークの村を出てから、きっかり3日と1時間が過ぎた。
1日目が無事に終わり、2日目も順調に進み、3日目も大きなトラブルもなく終えることが出来た。そして迎えた今日。何事も無ければ昼頃には、温泉の出る場所へ到着できる――なんて思ったのがフラグだったのだろう。
僕らの目の前に、細い丸太を肩に担いだ、鬼角の幼女が飛び出してきた。
「ミニマム・キャットオーク! ココで出会ったのが100年目! 誰からでもいい、我こそはと思う者は、あたいと尋常に勝負しろ!! 群れを壊滅させてやる!!」
象牙色の鬼角に、ボサボサな深紅の赤髪。気の強そうな自信満々の瞳。
美少女と言えるくらい素材は悪くないけれど、どこか……そう、脳筋っぽい匂いがぷんぷんするのは、僕の気のせいなんかじゃないと思う。
例えるならば”脳筋幼女”――そんな言葉が頭の中に思い浮かんで、ぴったりとはまった。