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第19話_引っ越しの道中

広場に集まった猫娘達を前に、僕とグローリーと、チュラカとシャントリエリは立っている。

引っ越しの準備は終わって、あとはこの村を出るだけ。


ちなみに、無限収納に何でも入ることに気付いたから、掘っ立て小屋の外壁や木の扉、枯れ葉のベッドなんかも全部丸ごと持っていくことにした。

異世界サバイバルでは、利用できる物は何でも利用する精神が大切なのだ――ということにして。


おかげで、ミニマム・キャットオークの村跡地は、早くも森と同化している。

1ヶ月も過ぎれば、雨風や動物の影響で、村が有った痕跡はほぼ無くなるんじゃないかなと僕は思っているし、人間の冒険者が森に入ってくる数ヵ月後には、村が有ったことがバレる心配はほとんど無いんじゃないかなと思っている。


そういうことを僕が考えている一方で、チュラカは、猫娘達を前に“旅立ちの演説”をしている。

「――グローリーが来てくれたおかげで、この村が危機に陥っていることが判明したにゃ。シャントリエリさんの情報でミニマム・コボルトがこの村を狙っていたことも判明したにゃ。そしてヌシ様のおかげで、チュラカ達は村の移動を決意したにゃ!!」


うん、今の話の流れだと、僕は何もしていないことになるよね、事実上。

ちょっと気まずいんですけれど? なんて思ってしまったけれど、チュラカの熱い演説は締めくくりに入っていた。


「準備は良いかにゃ? それでは、新天地に向かって、みんなで――」

「「「ゴーにゃ!!」」」「「「行くにゃ!!」」」「「「お宝にゃ~♪」」」

「わふわふっ(≡ω)!」「ごー」


元気いっぱいな猫娘達の声が森に響いた。

猫娘達につられて、シャントリエリとグローリーも腕を伸ばしている。

僕の視線に気が付いた2人が、ちょっと恥ずかしそうな表情を浮かべたけれど、見なかったことにした。


何だかとても可愛く感じたのは、ここだけの話である。


 ◇


「キャットオークは進む~♪ 前進する~♪ な~ぎはらう~♪」

ご機嫌なルーちゃんの歌声を聴きながら、僕達は森の中を東北東――いわゆる2時方向――に向かって進んでいく。

しばしば僕の探索スキルに動物や魔物の気配が引っかかるけれど、こっちに遭遇する前に逃げていくものがほとんどだ。稀に好戦的な動物や魔物が現れるけれど、それも先頭を歩くシャントリエリとチュラカ達に一撃で殲滅されていた。


ステータスが回復したシャントリエリは、チュラカ達と良い連携が取れている。

魔物の数が多くても危ない気配が全くない。シャントリエリが敵の攻撃を引き付けて、隙が出来た瞬間に、チュラカ達猫娘が槍や魔法で仕留めている。


ちなみに、シャントリエリはチュラカ達と同じように魔法の装備を身に着けている。

毛皮のアクセサリー4個は同じもの。防御力が80上がって、素早さも40上がっている。もちろん水の魔法障壁が張れるやつ。

でも、専用の“竹製片手剣”と“木製片手盾”を用意したのが、猫娘達とは違う。

相手の攻撃を受け流すシャントリエリの戦闘スタイルでは、リーチの長い竹槍がどうしても合わなかったのだ。


そこで竹槍と同じ素材を使って――って、事実上、短いだけの竹なんだけれど――魔法の氷の刃を生み出せる片手魔法剣を作ってあげた。刃渡りは60センチジャスト。アイス・ニードルが3発撃てるのは、お約束というやつだ。


片手盾の方は、木製の板を材料にして作ってある。こちらも、ウォーター・シールドを流用して組み込んであるから、軽さはそのままで、鉄製の盾と同等かそれ以上の強度を持っている。


剣も盾も、やや軽すぎるのが難点だけれど、グローリーが持っていた鋼鉄製の剣と切り結んでも壊れない強度を持ち、傷が付いても氷や水で自動修復する機能が付いている。


グローリーにはジト目どころか白い目で見られてしまったけれど、シャントリエリの「ありがとうございます! ご主人様に一生ついて行きますわんっ(≡ω)!」という可愛い笑顔が見られたから後悔はしていない。

見た目が幼いとはいえ、ケモ耳美少女にご主人様とか言われているのだもの、頑張らないのは男じゃない。これは将来への投資なのである!!


「……ろりこん」

すぐ横で聞こえた不機嫌そうな声。

思わずびくっとしてしまったけれど、犯人はグローリーしかいない。

グローリーはこっそりと、僕に触るのが趣味なのだ。

「人聞きの悪いこと思わない(・・・・)でよ。こっそり触るのが趣味とか、まるで電車に出没する性犯罪者みたいじゃない」

わりと本気で嫌そうな目で、グローリーに睨まれた。


怖いから、ちょっとだけ、フォローしておこう。

「別にグローリーに触られるのは嫌じゃないよ? それに、指摘しても触るのは止めないでしょ?」

「もちろん♪ 大切なスキンシップですから」

やっぱり。痴女でしたか。


僕の感想に、唇を尖らせるグローリー。

でも、その右手は僕の左手を捕まえて離さない。

「警察に捕まるのはアキラの方よ」

「……。念のために聞くけれど、どんな罪で?」

「未成年者略取誘拐および監禁およびロリコンの罪で♪」


「楽しそうで何より。何度も言うけれど、僕はロリコンじゃないから」

「んじゃ、ぺど?」

「ぺどでも無いから!」


「ヌシ様~、“ろりこん”とか“ぺど”って何ですかにゃ~?」

僕らの会話に、笑顔のルーちゃんが混じってきた。いつの間にか歌を歌い終えて、僕らの会話を聞いていたらしい。


無垢な、くりっくりの瞳を前に、どう答えたら良いのか判断に迷う。

こんな真っ直ぐそうな子に、「ロリコンが~」とか「ぺどって~」とかいうようなことを、僕は話したくない。グローリー、どうするの?


視線を向けたら、グローリーは小さく微笑んだ。

あ、まずい、嫌な予感。そして――

「ルーちゃん、教えてあげるわ。“ロリコン”って言うのは、命懸けで少女を守る(・・・・)勇者が持っている称号なの。“YESロリータNOタッチ!”と叫びながら、どんな敵からも幼女――げふんげふん、少女を守るのが“ロリコン”の掟なのよ」

「ほへぇ~、ロリコンさん、女の子を守るなんて、魔王の騎士みたいで格好良いですにゃ!」


ちょ、グローリー、真面目な少女に何を吹き込んでいるの!? ――という僕の非難の視線をグローリーは小さく笑って受け流して、言葉を続ける。

「でも、闇に堕ちた“ダークロリコン”が混じっていることがあるから、絶対に、ロリコンにはこっちからは近付いちゃ危険(ダメ)なのよ。ルーちゃんは可愛いから、ダークロリコンに捕まったら食べられちゃうかもしれないわ。ダークロリコンは普通のロリコンのふりをしているから、普通のロリコンにも近付いちゃダメよ?」


「はいっ! ロリコンには近付いちゃダメ、絶対ですにゃ!」

真剣な表情のルーちゃんに、グローリーが苦笑する。

「そうそう。それくらい警戒するのが良いのよ。ルーちゃんが警戒しても、良いロリコンは、自然とルーちゃんのことを守ってくれるから」


ぷちドヤ顔で僕の方を見ながら、「ルーちゃんに嘘付いて、誤魔化すのはかわいそうじゃない。何とかなったでしょ?」と言いたげなグローリー。でも、盛大にやらかした気がするのは、僕の気のせいだろうか?

「大丈夫よ、アキラ。こっちの世界には――「ヌシ様は、ロリコンなんですかにゃ?」――え?」

ルーちゃんがキラキラな瞳で僕らを見てくる。


「ヌシ様は、ロリコンなんですにゃ?」

僕の顔が面白かったのだろう、グローリーが小さく噴き出して痙攣している。

いや、いや、笑い過ぎですから!


「違うよ。僕はロリコンじゃ――「大丈夫ですにゃ! 言わなくても分かっていますにゃ! 真のロリコンは、女の子を守るために、ロリコンじゃないふりをしないといけないと掟で決まっているんですにゃ!!」」


グローリーの痙攣が強くなる。

そして、「ふんす、ふんす」と鼻を鳴らしながら、ルーちゃんが言葉を続ける。

「ルーも、いつか立派な“真のロリコン”になれるように、頑張りますにゃ(≡ω)!」

きらっきらの瞳で幼女が宣言した直後。

グローリーの痙攣がぴたっと止まった。固まっているとも言う。


そりゃそうだ、可愛いルーちゃんに、こんなことを言わせているんだから。


ちらりとグローリーを見たら、血の気がひいた表情で、やっちゃったという顔をしていた。

「ごめん、アキラ。わたし、根本的に間違ってたかも――」

小さな声で言ってから、グローリーが僕に両手を合わせながら頭を下げて、言葉を続ける。

「フォローをお願い出来るかな? 1人の少女の未来が、掛かっているの」


ちょっとだけ、眩暈がした。

何と言うのか――それ、多分、何かのフラグですよ?

昨日『第00話_温泉』を割り込み投稿してあります。良かったら読んでみて下さい。

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