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第13話_告白と訓練?

遅めのお昼ごはんを食べ終わった後。

広場に広がっていた引っ越しのアイテムを、僕の無限収納に入れることになった。


「そっちの荷物を持って来るにゃ~(≡ω)」

「使えそうなモノは全部持っていくわよ? アキラに遠慮しちゃダメだからね?」

「グローリーの言う通りだから。でも、みんな慌てなくて良いよ!」


木の板に、それぞれの猫娘が自分の名前を書いてくれていたから、その通りに収納していく。

余談だけれど、チュラカいわく「全員、自分の名前くらいは書けるにゃ。物知りな、このチュラカが教えたのにゃ(≡ω)v」とのこと。

いつも通り「ふんす、ふんす」と鼻を鳴らしていたから頭を撫でてあげたけれど――逆を返せば、チュラカ以外、名前以上は書けない可能性が高いともいう。


ひと山いくらの雑兵ならそれで良いのかもしれないけれど、優秀な兵と将が欲しい僕としては……教育のやり甲斐があると言うべきか。

僕みたいにユニーク・スキルで異言語の読み書きと会話ができるようになれば良いのだけれど、スキルは魔法じゃないから、僕の魔法解析が使えない。教育サポート機能がある便利な魔道具を作りたいのだけれど、それはまだ当分先になりそうだ。


「ふぅ~ん♪」

気が付けば、僕の横でグローリーが微笑んでいた。

その手は、それとなく、でもしっかりと僕の身体に触れていた。

「アキラは面白いことを考えるのね? 猫さん達を、遠くない未来に“将”にしたいんだ?」

その瞳には、好奇心があふれている。


「そうだね。何も知らないで戦うよりも、少なくとも知識を持っていた方が生存率は上がると思うから」

「格好をつけて“誰一人として死なせはしない”とは言わないの?」

「その言葉の意味を分かって言ってる?」

強力な“死亡フラグ”って言うんですよ? それも多分、僕が死んじゃうようなヤツ。

「……それは困るわね」


グローリーが苦笑いを浮かべた。フラグ提案は、ワザとじゃないらしい。

「もちろんよ!! アキラに死なれると、わたしがめちゃくちゃ困るのよ!」

「おもちゃが無くなるから?」

「そうそう、アキラは一生わたしのオモチャ――って、違うっ!!」

「あははっ♪」

ジト目のグローリーは、ノリツッコミも可愛いな。

さや姉のことが無ければ、嫁にしたいレベルで。


「――っ!!」

熱いモノを触ったかのように、グローリーが手を引っ込める。

しまった。僕の好意は、心の中を読まれているから、ある程度筒抜けだとはいえ表現がストレート過ぎたのかも。

警戒する猫のような視線を僕に向けているグローリー。


ジトっとした目がご褒美です。

なんていう現実逃避をしたり、冗談を言えたりするような雰囲気では無い。

気まずいけれど、僕が悪いのだから、まずは謝ろう。

「……グローリー、ごめ――「ううん、わたしの方こそ。急に手を離すなんて失礼だよね」――そんなこと無いよ。僕が悪いのだから――「違うのっ!」」

僕の言葉を遮って、泣きそうな表情になっているグローリーが言葉を続ける。

「男の人が怖いだけ。アキラのことは嫌いじゃない。むしろ――すき」


(すき? えっと――本当に?)


言葉には出さなかったけれど、顔には出てしまったのだろう。

涙で潤んだ瞳のグローリーが、こくりと頷いて、真剣な声で言葉を続ける。

「アキラのこと――好きなの。でも、身体が言うこと聞いてくれないの」

まっすぐに僕の目を見ながら、グローリーが両目に涙をためて言葉を続ける。

「だから、ごめん、今は、ちょっとだけ、怖い。――でも、好き。だいすき。好き」

彼女が、ふっと目線を下に向けた瞬間、光るモノが目から零れた。

「アキラが手を繋いで寝てくれた昨日の夜、わたしはこの世界に来て、初めて安心できた気がするの」


「そっか……ありがとう。でもね、僕はグローリーに聞いて欲しいことが――「一方的な好意だって分かっている! わたしの我儘だって分かっている!!」

僕の言葉を遮って、グローリーが苦しそうに言葉を紡ぐ。


とても真剣な瞳で。

涙があふれるのを隠しもしないで。

血を吐きそうな言葉で。


「出会って1日で何を言っているんだって自分でも思っている! でも、アキラのことが好きなの!! 気持ちが抑え切れない。こんな気持ち、自分の中だけで抱えているのは、とってもとっても苦しいの!!」――グローリー、あのね落ちつ――「ダメ、なの、かな?」――ダメじゃないけれど、その前に落ち着こうか?」

「嫌だよぉ。落ち着いていたら、出会って1日しか経っていない相手に、告白なんてしないよ……」

「そういう意味じゃなくてね」

僕の言葉に、グローリーが泣きそうな視線を送ってくる。

ああ、くそぅ、童貞をなめるなよ? 可愛い過ぎて頭がくらくらする。


ゆっくりと、グローリーが口を開いた。

「……それじゃ、どういう意味なの?」

「周りを見ようか?」

「ほぇ?」

やっと、自分が広場の中央にいたことを、思い出してくれたグローリー。

もちろん、周囲には野次馬の猫娘達がたくさんいる。


「良いモノ見たにゃ~(≡ω)」

「グローリー、頑張るにゃ(≡ω)b」

「ポッ(*ω)ノシ」

ホクホクした笑顔の猫娘達。

温かい視線が僕とグローリーに向けられている。


「ひゃあぁぁあっ!!」


叫び声をあげると、グローリーは走って逃げていった。


 ◇


広場の荷物を無限収納に入れた後。

新作の武器の使い心地を試してもらうために、猫娘達を全員集合させて、講習会をすることになった。


氷の魔法陣が組み込まれていること、重さは軽いままで鉄の槍並の強度を持つこと、同士討ち防止のために仲間には攻撃できない魔法陣が組み込まれていること、発動キーワードを唱えたら3発まで氷の矢を飛ばすことが出来ること等々。

説明をすればするほど、猫娘達の目が輝いた。


「やっぱり、これは凄いですにゃ!」

「ヌシ様は、やり過ぎって言葉を知らないのかにゃ?」

「強いのはいいことにゃ(≡ω)v」


猫娘達が、新しい装備を手に持って、自分のステータス情報をチェックしている。

その表情はとても嬉しそうだ。

なお、この場にグローリーはいない。「まだ恥ずかしいの!!」と言って、小屋の中から頑として出て来てくれなかったから。


ちなみに、出来あがった竹槍と毛皮の腕輪×4つを、わりと平均的なステータスを持った星2つのルーちゃんに装備してもらった結果がこんな感じ。


====

(基本情報)

・名称:ルー

・年齢:14歳

・性別:女

・種族:ミニマム・キャットオーク

・レベルランク:★★★(3つ星)

・HP:128

・MP:54

・LP:5


・STR(筋力):32

・DEF(防御力):43(+92)

・INT(賢さ):31

・AGI(素早さ):44(+40)

・LUK(運):18


(装備)

・槍/キャットオークの魔槍

・服/毛皮の胸当て+毛皮の腰巻

・腕輪/毛皮の腕輪×2+毛皮の足輪×2

・靴/革の靴


(称号)

・オークの主_アキラの配下

====


うん、星が1つ増えているけれど、正直な感想を言って良いのなら――かなり弱い。

中堅冒険者が相手なら、多分、一撃で殺されるだろう。

やっぱり魔法の装備でブーストしているとはいえ、HPやMPと言った基礎値を上げないことには、恐ろしくて猫娘達を戦いに送り出せない。少なくとも、“一撃必殺が可能になる領域”まで攻撃力を上げないと、反撃されただけで全滅の憂き目に遭いかねないから。


頭の中の天使が囁く。「基礎値が低いのなら、パワーレベリングすれば良いじゃない」と。


チュラカを除いたキャットオーク52名を半分に分けて、殺し合いをさせる。

残った26名をまた半分に分けて殺し合いをさせる。

残った13名をまた半分に分けて殺し合いをさせる。

残った7名を側近として残して――少数精鋭で行動、他の群れを吸収する。


うん、そんな外道な考えを頭の中の天使が囁いた。

「……あり得ないな」

頭の中から堕天使を抹殺して、もっとマイルドな方法を模索する。


例えば、森の中で低レベルの動物や魔物を狩るというのはどうだろう?

――いや、ダメだ。50人近くをパワーレベリングするには、多分、魔物の数が足りないだろう。

それなら、土魔法でゴーレムを召還して戦わせるのはどうだろう?

――いや、そもそもゴーレム召喚の魔法を、僕の周囲は誰も知らない。


頭の中で堕天使が囁く。「普通に半分に分けて、怪我しない程度に訓練すれば良いじゃない? さっきのは冗談よ?」と。

こいつ、バラバラにしたのに、いつの間に再生したのだろう? と堕天使の再生能力が気になったけれど――今のところは普通の訓練という選択肢しかなさそうだ。

幸い、回復魔法は僕も使うことが出来るから、大怪我じゃなければ治すこともできるだろうし。


とはいえ、まずは槍の使い方に慣れてもらわないと始まらない。

武器を試したくてうずうずしている猫娘達に、これからやってもらうことは決まっている。

それは、地味な訓練なんかじゃない。味方同士の訓練で魔法の竹槍を使うのは危険だし、何よりも同士討ち防止の安全機能が働いてしまう。


「さてと、みんなちょっと注目してくれるかな?」

猫娘達の視線が集まったことを確認してから、言葉を続ける。


「明日の引っ越し準備の仕上げと装備の習熟訓練を兼ねて、今日は夕方まで食糧大量確保(狩り)の時間にしようと思います」


「にゃにゃっ!?」「マジにゃ!?」「さっそく使えるにゃ!」「たのしみにゃ!」

ざわつく猫娘達に、ヌシとして、止めの言葉をプレゼントしよう。

「これは命令です♪ 周囲の獲物を狩り尽くせ!!」

「「「にゃ~(≡ω)!!」」」


猫娘達の威勢の良い咆哮が、森に大きく響いた。

楽しそうで、なによりだ。

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