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第11話_お引越しの理由

「ねぇ、チュラカ。“熱い雲が噴き出している場所”はここからだと、何日くらいで辿りつけるのかな?」

「ヌシ様、歩いて3日半かかるにゃよ?」

「意外と近いんだね? 村を移動させるには近すぎるな……」


僕の呟きに、チュラカや幹部猫娘2人の顔が引きつったのが分かった。

3人は何も言わないけれど、側近猫娘達が脱力しながら声をあげる。

「ぅにゃぁ~、くしゃい村は嫌にゃぁ~(Tω)ノシ」

「鼻が曲がるのは、こりごりにゃぁ~(Tω)」

「にゃぁ~」「ふにゃぁ~」「ぅにゃぁ~」


「お前ら、ヌシ様に失礼にゃよ?」

目だけが笑っていない笑顔で、チュラカが側近猫娘達に視線を送る。

ぴしりっと氷のように固まって、側近猫娘達はすぐに頭を下げてきた。

「「「ごめんなさいにゃ~m(TωT)m」」」


なんだろう、ちょっとだけ可愛いなと思ってしまった僕がいた。

「ヌシ様、こいつら処刑するにゃ?」

物騒な言葉をチュラカが吐く。その真剣な瞳は冗談では無さそうだ。

……いやいや、マジで?


「チュラカ、ここで優秀な部下を失う訳にはいかないから処刑は無しで」

僕の言葉に、側近猫娘達が安堵のため息を吐く。

チュラカが納得いかない顔をしていたから、フォローを続ける。

「それに、僕も硫黄の匂いは好きとは言えないから理解出来るよ。でも、熱い雲が噴き出している場所の近くには、何物にも代えがたい宝物が埋まっているんだ」

「「「お宝にゃっ!?」」」

チュラカや幹部猫娘達、そして側近猫娘達が反応した。


側近猫娘達が僕に視線を向けてくる。

「早く行くにゃ!」「他の魔物にとられる前に行くにゃ!」「いそぐにゃ!」

うん、猫に小判ということわざがあるけれど、こいつらは結構現金な生き物なのかもしれない。ちょっと微笑ましいけれど。


「まぁ、まぁ、慌てなくても宝物は逃げないから大丈夫だよ。とりあえず、“熱い雲が噴き出している場所”の近くで宝物を手に入れてから、その後に村の移動を考えることにしても良いかな?」

そう言いながら、頭の中で考えをまとめる。

温泉という概念が無いチュラカ達にとって、硫黄の匂いが耐えきれないものなら村は別の場所に作らないといけない。けれど――もしも許容範囲内だったら、温泉が出る場所で都市(・・)を作りたいと僕は考えている。


毎日、温泉に入れるのは日本人の夢だし、健康にも良い。

今後、魔王になるということを考えると観光資源になりそうな場所は押さえておきたい。

そういう意味で、チュラカ達に温泉を体験してもらうことは大切だろう。


グローリーも同感みたいで、僕の隣でこくこくと首を縦に振っていた。

「アキラ、善は急げよ。今日1日で武装強化を済ませて、明日には村を移動させましょ♪」

「歩いて3日半ということみたいだから、十数人の視察団で向かった方が良くない?」

僕の言葉に、グローリーが首を横に振る。


「まさか。温泉の存在を知ったら、この猫さん達、誰も村に帰りたがらないと思うわよ?」

お宝という言葉に目がくらんでいる猫娘たちを見て、グローリーが苦笑する。

「……確かに」

気が付けば、グローリーに苦笑を返していた。

金銀財宝という意味では猫娘達の期待を裏切ることになるのだけれど、欲望に忠実な彼女達は多分、温泉も気に入ってしまうことだろう。グローリーが危惧したこともあり得そうで怖い。


「うん、分かった。引っ越し荷物をまとめて、明日、出発するようにしようか」

「ええ。レンテンローズ王国――わたしを捨てた国――がこの森に本格的に干渉するのは6ヶ月以上先だとしても、少しずつ調査のための冒険者が森の中に入って来ると思うから、森の浅い場所にあるこの村からは早く移動した方が良いと思うわ」


グローリーの言葉に、チュラカ達の方を見ると、こくこくと首を縦に振っていた。

チュラカ達も明日出発で問題無いらしい。

「それじゃ、バタバタしちゃうけれど引越しの準備を今日1日で済ませよう。チュラカとルーちゃんは、僕やグローリーと一緒に武装強化の手伝いをしてもらえるかな? 他のみんなは、引っ越しで持っていくものをまとめて広場に持ってきてくれるかな?」


「広場に集めるのですかにゃ? なぜですにゃ?」

側近猫娘の1人が不思議そうな顔を作ったから、その疑問に答える。

「僕のスキルに無限収納っていうのがあるから、重たい荷物は全部そこに入れて運ぼうかなと思うんだ」

「アキラ、それだけじゃ説明不足よ。えっとね、猫さん。ヌシ様は“たくさんの物を持ち運びできるマジック・バックみたいな魔法”が使えるのよ。個人ごとに持ち物を分けて入れることもできるから、たくさんの荷物も遠慮なく持ってきて良いわよ」

「――っ!? それは凄いにゃ!」

「持って行きたいけれど、捨てにゃいといけないと思っていたモノも持って行けるにゃ?」

「もちろんよ」

「「すごいにゃ~(≡ω)!!」」」


「ふふっ♪ 可愛いわね」

小さな声でグローリーが呟いた。

ちょっとだけ、寂しげな目をしていたのが気になったけれど――今はまだ、踏み込んではいけない気がした。


ちょうど全員がご飯を食べ終わったみたいだし、話を切り上げて、頭も切り替えて、次に行こう。

「さてと、それじゃ引越しの準備はみんなに任せるとして――装備強化について、チュラカ、ルーちゃん、グローリー、ちょっと打ち合わせをしようか?」

「任せてほしいにゃ(≡ω)b」「が、がんばりますにゃ!」「了解よ」


さてと、チートの時間を始めますか。

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