第八話
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空は灰色から黒色に変わっていた。
騒音、異臭、華やかな展示、洋服、
私の周りにはなかったもの。
由紀「すごいね。」
冬真「うん。」
銀太「俺も久々に来たな。」
左の手首についている時計をみる。
11時過ぎを指していた。集合までもう少し。
冬真「じゃあ、僕たちは適当にぶらついてるから、何かあったら電話してね。」
冬真の携帯電話を手渡された。
私はまだ携帯電話をもっていないから、
こうゆう時はいつも冬真のを借りる。
(待ち受け変わってない…)
待ち受けには、私と冬真と富田君で笑っている写真。私はこれがお気に入りで、
冬真の携帯電話を見ていつも嬉しくて笑ってしまう。
銀太「なに?どうしたの?」
由紀「なんでもないよ!何かあったら富田君に電話するね!」
私は2人に手を振って、集合場所に向かった。
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『12時になりました!今日は……』
近くのお店から、ラジオが聞こえてくる。
集合時間は11時30分。もう30分も過ぎている。
(なんで誰もこないんだろう?)
集合場所も、集合時間も言われた通り。
周りには私と同じように、待っている人がいる。1人、2人と待ち合わせの人が来たようで、いなくなっていく。
小雨が降ってきて、待ち合わせの人も少なくなってきた。
(傘、冬真に持ってもらいっぱなしなんだった。)
雨は次第に強くなってきた。
12時30分
もう待ち合わせの人はいない。
(1時間…集合場所間違えたかな?)
濡れたワンピースが体に張り付く。
「ねぇ、何してるの?」
冷たい雨の感触が消えた。
由紀「冬真…」
冬真「とりあえず、こっち来て」
冬真に連れられて、近くのカフェに入った。
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