第一話
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高校生最後の秋、周りは受験一色
静かな教室でシャーペンの音だけが響く、
僕、四ノ宮 冬真の席は一番後ろの窓際。
集中とは無縁の席。
青々とした空、明るい日差し、生温い風、静かな教室、
シャーペンを持つ手の力が弱まっていく。
教室の壁時計は12時前を指している。
(もう終わりか…。)
少しして、チャイムがなる。
その音を皮切りに一気に教室がうるさくなった。
眠気もどこかに行ってしまった。
??「小テスト回収するよ!」
話しかけてきたのは学級委員の富田 銀太。
冬真「はい。」
銀太「ありがと!」
ニコニコしながら、小テストを回収して行く。
(相変わらず、作り笑いがうまいな…。)
銀太とは性格が合う。作り笑いして、自分を偽る。そんなお互いに気づいて、意気投合した。
僕は席を立って教室を出た。
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別校舎の階段を上った先にある、
『第三図書室』と書かれた扉に入る。
無造作に置かれた本、埃が積もってるカウンター、壊れた木の椅子。
しかし、一角に部屋には不釣り合いな
小綺麗な机と3つのパイプ椅子が置いてある。
埃が掛かった本を取り手で払い
パイプ椅子に腰掛けた。
ここは所謂、僕『達』の隠れ家。
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コン。
ノックが1回。
扉を開けて入ってきた。
冬真「遅かったね。」
「ごめんね。」と困った顔の二ノ宮 由紀。
僕の幼馴染で、親戚の女の子。
冬真「謝らなくてもいいから。」
口角を上げて笑って返す。
由紀「呼び止められちゃって。富田君は?」
冬真「もう直ぐ来るよ。」
ガラッ
息を荒げて、部屋に入ってきたのは銀太。
銀太「疲れたー!」
冬真「ノック忘れてる。」
銀太「あ!そうだ!ごめん!」
平謝りしながら、僕の隣のパイプ椅子に座る。
銀太「それにしても、此処まで遠いなー」
冬真「仕方ないよ。」
由紀「2人共ごめんね。」
由紀はまた困った顔をする。
銀太「由紀ちゃんのせいじゃないって!ほら食べよ食べよ!」
由紀「そ、そうだね!」
この隠れ家に集まることになったきっかけ。
高校最初の春。
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