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フェアリーキル  作者: とんかつ定食
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今日も昨日も明日も明後日も変わらない。


殆どが木製で建てられたミンナ村の家は全部で10件程度の数で、住んでいる村人も15~20人程度の小さな村だ。

その殆どが年寄りで若いといえばこの前子供が生まれたパン屋の若夫婦とソプラ位のものだ。


そんな村につい2日前から男の子が任務だとかで来ているが、ソプラがせっかく声をかけてやっているというのにチロっとこちらを見ただけで村長の家に篭っている。


明日には帰るらしいが、まともな同い年位の男の子だというのにつまらない。


ソプラは不機嫌を隠そうともしないで村の商店通りを歩いていた。

商店と言ってもこの村は宿もない小さな村な為、村の外からきた客人は皆村長の家で世話になる。


若夫婦のパン屋、村の工芸品や使われなくなってただ飾られるだけの旅道具が売られるドアの建て付けが悪いじい様の道具屋、家畜のミルクや肉を売るでん助の肉屋


この位だ。


つまらない!外から来た男の子とこの村の妖精の巫女、なんと素敵なシチュエーションではないか!

異郷の男の子に連れ出され、世界を旅する可愛い巫女


そんなストーリーを描いていただけに村長の家で世話になっているシキとかいう男の子は本当に何もわかっていないとソプラは井戸の水を引く為にある木の桶を蹴っ飛ばした。


カランカランと派手な音を立てて井戸の底へと落ちていく桶の音に、外に出された古びた木製ベンチに座っていた老婆がしわくちゃの顔を歪めてケッケッと隙間だらけの歯を見せて笑った。



「どうしたんだい?ソプラちゃん・・・・・ご機嫌ななめだねぇ」



のんびりゆっくり喋るおばあさんの声も今はソプラの機嫌を悪くするばっかりだ。



「別に・・・あの子すっごくつまんない子ね!」



素っ気なく答えるソプラに老婆は気を悪くした風もなく答えた。



「シークの軍人さんはお仕事で疲れているんだよ・・・・・ほら、私達の妖精の巫女さま、村の安泰を妖精に祈っておくれよ・・・」



シワが垂れて目をあけているのかどうかもわからない老婆に背中を向けるとソプラはフンと鼻を鳴らした。



「あとでね!」




ピンクを基調にした服、膝上の短いスカートをゆらしなが歩くソプラと呼ばれた少女。

誕生日はとっくにきた17歳。

ピンクという女の子が好きそうな色を惜しげもなく使った服はお気に入りだ。

緑色の長い髪を後ろでおさげにして耳にはおっきなピアス、これもピンク。


自負するように彼女は可愛い部類の少女だ。パッチリした瞳、気の強そうな顔だが間違いなく可愛い筈だが性格に少し難ありであった。

しかしそんな彼女を咎める者はこの村にはいない。

それはソプラが妖精の巫女だったからだ。



彼女は幼い頃から森や花に住まう妖精と対話をする能力を持っていた。それ以外に特別な力はない普通の女の子ではあったが、妖精達の囁きを大人達に教えてやるとそれは大いに喜んだ。


そしていつしか村では妖精の巫女と呼ばれ、祭りの時等はいつも出ずっぱりの人気になった。

時々聞こえなくなる時があるが、それもたまにだ。




「可愛い女の子にはナイトが必要なのよ!もう!」



ソプラは履き慣れたブーツの踵を鳴らすと村長の家の方を向くと思いっきり舌を出した。


彼女にはやらなければならない事がある。


それはエルフェーデに旅行をしてきた中年夫婦が教えてくれた。

エルフェーデという都会は妖精を殺してその力をエネルギー原として豊かな生活をしているという。

妖精の巫女としてこれ程に残虐な事を許しておくわけには行かない。

聞けば、妖精を大量に虐殺しその力で動く列車なる巨大な鉄の塊が走ったりするものや、夜になってもロウソクではなく街中に立つ細い柱や天井からぶら下がっている球体が光って常に都市は明るいのだとか

悪の元凶はソルディック社だとかいう名前らしかった。



「絶対許せない・・・・妖精は、私が守るんだから!」



この妖精の巫女が!



フンフンと怒りながら歩いていると村の出入り口で見慣れた小太りの少年と見るからにドンくさそうな女の子が喋っているのが目に入った。


小太りの方は知っている。


ハイドリヒ領のハイドリヒ5世だ。

どうせ今日も視察と言いながら村の特産である果物をがっつきに来たのだろう。


しかし相手の人物は初めて見る顔だった。

ポッチャリした体型にこれまたお似合いのデブタヌキを連れた女の子はビクビクしながらハイドリヒ5世と話していた。


オドオドして落ち着きない彼女の様子はソプラの燗に触った。








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