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カタコト貧乏神に取り憑かれました。理由は一目惚れらしいです。

作者: 架酉

息抜きです。

後、和と洋が入り混じってる感もあります。

プロローグっぽいです。短いです。

金が人をダメにするというのなら、私の両親はまさしくそれの代表的な例だった。

自分の店を大きくすることにしか興味がない父と、自分を着飾って若い男をむさぼることにしか生きがいを感じない母。

どんな二人の間に私が生まれたのは、二人の間に愛が芽生えた・・・わけでもなんでもなく。

ただ単に、堕胎するのも面倒くさいと思った母が、金のかからない奴隷にしようと考えたから。

そして、最低限の食事と体を酷使しまくりながら私がなんとか16歳になり家出を本格的に考え出した時、天罰が下った・・・なぜか私に向かって。


季節は十二月半ば、この国の気温が最も低くなる頃。

何も知らない旅人がひとたび迷い込めば二度と出てこないといわれる『迷い道』のさらに奥。道ならぬ道を進んだ先にある、一軒の洋館。

そこに私、トルシー・ウェルトリアは住んでいた。

・・・いや、捕えられているといった方が正しいか。

「とるしぃ、なにをしてるノ?」

曇天の空からちらちらと舞う雪を、庭園に設置されたベンチに座りながら眺めていると、後ろから私をここに縛り付ける元凶の貧乏神・・・がやってきた。

「・・・別に、何もしてない。暇だったから外を眺めてただけ。」

「そうなノ?なら、いいけれド。でモ、あんまりそとにいるとかぜをひいちゃうヨ?そんなことになったラ、ぼク、かなしくてかなしくてとるしぃにひどいことしたくなっちゃうヨォ。」

だからなかにはいろウ?と、貧乏神・・・アシュリィはにっこりと笑った。

さて。

私が何でこのカタコト貧乏神と一緒にこんなところにいるのか。

それは今から約2か月前へとさかのぼる。


それは、母がかんしゃくをいつもよりよく起こす日だった。

どんな日だと思う人もいるかもしれないが、数年前に母が私より何倍も寵愛していた息子のレオルが事故で死んでしまって以来、時折母はかんしゃくを起こすようになってしまったのだ。

まあ、もともとその気はあったのだけれど。

と、そんなことはおいておいてだ。

その日の母はとんでもなく不安定だった。

レオルの命日だったこともあるのだろうが、虫の居所が悪かったのだろう。

事あるごとに悲鳴を上げ、レオルの名を呼び、物を投げていた。

あとで掃除をするのは私なので、正直言ってやめてほしかったのだけれど・・・今までの経験からそれを言うと余計に母が荒れるのを知っていた私は、何も言わずに食器の片付けに集中していた。

が、その判断が最悪の状況を呼び込んでしまったのかもしれない。あの時逃げていれば、と後悔することはよくあるけど、全ては今更だ。

突然ビッシャーン、という大きな音が屋敷中に響いた。

何が起こったのか。

キッチンから飛び出して母がいるであろう二階の母の自室に行くと、そこには床に倒れている母と一人の若い男の姿が。

ふわふわとしたミルクティー色の髪、トパーズの瞳。すらりとした体躯には無駄な肉はなく、程よく筋肉がついている。

男はなぜかローブを着ていて、その手には私の身長くらいはあるであろう大きな杖を持っていた。どうやら男は魔法使いのようだった。

この世界には魔法使いと神様と悪魔がいる。

生まれながらに魔法と呼ばれる奇跡を起こすことの出来るものが魔法使い。魔法使いが正しい心を持ち人助けを1000回すると背中に翼が生え神様になる。ただし悪の心を持ち人にあだなすと頭から角が生え悪魔になってしまう。

男には翼も角も何もないし、何より整ったその顔が魔法使いの証だ。魔法使いは(というか神様も悪魔もだけれど。)なぜかみんな顔が整っているのだ。

そう考えると、先ほどの音も合点がいく。大方この男が魔法で雷でも落としたのだろう。

魔法使いのレベルによっては竜巻や地震を超こすこともできるというから、別に珍しい事でもない。

とまあ、男の正体にあらかた予想が付いたところで。

次に気になるのは、この男が『誰』なのかということである。

一番有力なのは『母の浮気相手』だが、この男が母に引っかかるとも思えない。今まで母が捕まえてきた男たちの中にはたまに魔法使いもいたが、ソイツよりもこの男ははるかに美形だ。

それではこいつは何なのだろうと勉強もまともに受けさせてもらえなかったせいでろくなものが詰まってない頭をひねりながらうんうん悩んでいると、男が口を開いた。

「・・・きみガ、とるしぃ・うぇるとりア?」

声が温度を持っていたのなら、それは氷点下の冷たさだっただろう。しかしどこか間の抜けたような・・・子供のような口調だった。細身とはいえそれなりにタッパのある男から発せられるその声に、思わず吹き出しそうになってしまった私を誰が責められようか。

「っそ、そうですが・・・貴方は?」

何とか笑うのを我慢しながら聞き返すと、男はその整った顔を破顔させ、こう言った。

「ぼくハ、あしゅりィ。あしゅりぃ・かろうすだヨ。とるしぃにとりつくことになっタ、びんぼうがミ。」

次の瞬間、屋敷の中には雷鳴ではなく私の「はあああああ!??」という声がこだました。


私の父と母のしたことが天の怒りに触れ、貧乏神をよこしたらしい。


アシュリィは本来なら父と母に憑くように言われていたのだが(誰にだろう)、私に一目惚れしたので私に憑くことにしたらしい。

どんな理不尽だ。

もちろん私は嫌だといった。誰が好き好んで貧乏神に取りつかれたいものか。

貧乏神は神様は神様でも人の恨みを晴らす神様だ。主に不当な方法で金をとったり、金を湯水のように使ったりするやつに取り憑き、取り憑いた人間を強制的に貧乏にする。そして最終的に飢え死なせる悪魔より恐ろしい存在なのだ。

そういうとアシュリィは先ほどまで破顔させていたのが嘘のように無表情になり、冷たく言い放った。

「・・・とるしぃがそういうならしょうがないネ。そんなこというとるしィ、いらなイ。ころしちゃおうカ。だいじょうぶだヨ、あとでぼくがちゃんととるしぃをたべてあげル。」

何が大丈夫!?

「ま、待って待って!ごめん、悪かった!は、早まるんじゃない!!」

なんかおかしい気もするけど気にしていられない。

これだけの会話だけでもわかった。コイツはやばい奴だと。

「分かった、取り憑いてもいい。ただし・・・お前が私から半径1メートル以上離れないと約束できるならな!!」

そうすればコイツも諦めるんじゃないかな・・・と思った私が甘かった。

まさか「うン!!」と即答して私を連れ去るなんて・・・。

人間、何が起こるか分かんないね。


おつきあいありがとうございました。

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