こんな現実、妄想であってほしい。それか夢であってほしいと願う。
うめくらげです。
二話連続投稿です。
なんだか、読まなくてもいいのかな
というかんじだったので
オマケのように投稿しちゃいました。
それでは、第一◯話、よければどうぞ。
それが、ハジマリだった。
母の腹部が日に日に大きくなっていくのが不思議で、どうしてかと聞けば母はクスクスと優し気な笑い声を出して、答えてくれる。
お腹の中で、赤ちゃんが大きくなっているのよ。
赤ちゃんだなんて回りくどい言い方をしなくても、人、もしくは胎児でも理解できた。
僕は、もうすぐ六歳の誕生日をむかえる。
お金がなくて、誕生日のプレゼントはないと言われたけれど、家族でいられればいいと考えていた。
家がお金を借りていることは理解できている。家は母の姉から多額のお金を借りていて、母は大人なのに姉から頭をはたかれて、怒声を浴びせられていた。
そんな姿を、ふすまの隙間からのぞき見れば体が震える。
お腹で人を育てている偉大な人になんてことをするんだと、叫び出したい気持ちで泣き叫べば、母の姉は表情ひとつ変えずに、また母を怒鳴る。
子供に、なんて思いをさせてるの、あんな男とは別れなさい。
母は泣いて、質屋に売った結婚指輪の、外箱を包んでいたリボンだけを握りしめる。
そうして母の姉が帰ると、今度は家の電話が鳴り響く。
留守電に、男の声。
金を返せ。借りたものは返すんだよ。
狂ったように泣き出した母は、電気の停められた部屋の隅で、疲れて眠れるまで泣いていた。
そんな毎日。
苦しいとは思わなかった。お腹の人が、僕の救いだったから。
母のお腹に触ると、人の気配を感じる。
名前、なにがいいかな。
母の問いに、僕はハツラツと応えた。
男女どちらでもつけられる、素敵な名前を。
けれど、母は大笑いして、その名前を却下した。
新たな名前をつけてあげてね、と言われたので、僕は思考を続けている。
その三日後。
両親は、僕の眠る寝室で、首をつって死んでいた。
夏の日のことで、僕は悪臭に目が覚めたんだ。
両親の顔は腫れていて、ひどい姿。
変わり果てた、というには原形をとどめていなくて、泣くことすらできないままに、母の姉お腹の人に声をかけた。
返事はなくて、触っても、気配すらない。
連れて行かれた。
僕の救いだった人が、両親の美徳だかなんだかの自殺に連れて行かれた。
死という行為は人の麻薬だ。
死に悦を感じてしまう、愚かな中毒者。その中毒から中毒死する。そう割り切る。
けれど、僕は、まだ幼かった。
両親の死と、お腹の人の死が受け入れられなくて呼吸以外になにもしなかった。
しばらくして、母の姉が訪ねてきて。
パジャマ姿の僕と両親の姿を交互に見ては、叫んだ。
泣いていた。
そこで気づく。僕も泣けばいいんだと。
そうすれば、この、死と埋葬の隙間を埋められるのに、と。
母の姉は泣かない僕を見て、抱き寄せると震えていた。
救急隊が、両親を縄から開放する。
僕は外に連れ出されて、よく分からないカウンセリングを受けた。
気持ちの悪い慈愛の言葉と、温かい飲み物。
女の人の、やたらとなだめてくる口調が嫌で、気が狂ったふりをして、その部屋から逃れると、どの大人も優しくしてくれた。
それが怖くなって、眠るふりをする。
そのうち眠ってから、気がつけば、あっという間に、葬儀のしたく。
両親が焼かれると教えられる。
お腹の人も。
息を吸うことすらなく、母の死体からとり上げられて、別の場所に寝かされている。
そこで、ようやくお腹の人の顔を見た。
端整な顔立ち。手の平に乗りそうな大きさで宇宙人のよう。
僕は、その子が愛しくて、名前を呼んだ。
返事なんてない。
みじろぎしない。
目を開けない。
赤ちゃんは泣かない。
僕も、泣けなかった。
そのまま、その小さな人は焼かれた。
親族は借金の連帯保証人にされていて、両親を恨んでいる。誰ひとり、僕を引き受けてはくれなかった。
心のケアなんてめんどう。お金は出すから、ひとりで生きてほしい。
両親は無縁仏となって、僕も無縁仏同様に施設へ入った。
火葬場で焼かれた赤ちゃんの粉、そんなようなものを、もらっていて、僕は瓶に入れて持っている。
葬儀の一週間後に、その粉を森にまいた。
ふわりと舞い上がって、草と一体化する。それが嬉しくて、お腹の人は緑色につつまれていて。
ここで、ずうっと暮らしてほしい。
僕は辛いことがあると心を閉ざす。
扉を閉めるようにして光を入れないようにしては、湖にたゆたう枯葉のように眠る。
人生で扉を閉めて生きる、悲しい世界。
僕は生きる。
死んだように。
さようなら。
僕の家族たち。
忘れてしまう、辛いことはぜんぶ。
家族という認識もない、お腹の人も忘れてしまう。
さようなら、僕の、お腹の人。
ウィルソン。
なんだか、わかりきっていたことを
書いてしまいましたね。
すみません。




