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ひまわりを枯らす手  作者: 葉方萌生
第一章 ひまわりの笑顔

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1-6

「うん、お願い」


 みくりからGOサインをもらって、蓋を開けた。中からは飾り気のない封筒が五つ。誰がどの手紙を書いたか分からないように、全員一様に同じ茶封筒を使ったのだ。


「これ、全部いま開けていいのか?」


「開けてほしいっていうのが日葵のお願いなんでしょ? だったら開けよう」


 みくりが葉月にもう一度確認し、葉月が頷いた。

 その様子を見て、俺はいよいよいちばん上にあった封筒を取り出して開けた。開けやすいように封も何もしていなかったのは助かった。テープや糊が付いていたらきっと汗でベタついた手では上手く開けられなかっただろうから。

 一つ目の封筒を開けた。中からは便箋が一枚出てくる。みんなに「見てもいい?」と確認するように目配せをしてからそっと開いてみた。


『みんなへ

 小学校六年間ダチやってくれてありがとうな!

 めちゃくちゃ楽しかった!

 じいちゃんばあちゃんになってもバカやってよーぜ!』


「ぷっ」


 手紙を目にした途端、みくりがすぐに吹き出した。気持ちは分かる。書いた主があまりにも分かりやすすぎて。


「ちょ、なにみんな笑ってんだよ」


「いや、あんたやっぱりバカだなと思って」


「おい、みくり! お前、小中学生の頃俺とそんなに成績変わんなかっただろ!」


「残念。高校はあんたより偏差値、上です」


「う……ちょ、ちょっとだけだろっ」


 強がる涼に、みんながクスッと笑って、張り詰めていた気持ちがちょっとだけ和んだ。


「もういいから次いこうぜっ」


 これ以上からかわれるのが恥ずかしかったのか、涼が二つ目の封筒を取り出した。そしてそのまま中の便箋を取り出す。


『みくりちゃん、ひまりちゃん、はるたくん、りょうくん

 みんなと過ごせてとても充実した六年間でした。

 引っ込み思案でみんなみたいに積極的になれないわたしだけど、仲良くしてくれてうれしかったです。

 中学校でもよろしくね』


「これは、璃子かな?」


「う、うん。なんかこうして見ると恥ずかしいね」


「いや、俺より全然落ち着いてて良い手紙じゃん」


「あんたよりバカな手紙は誰も書かないって」


「うおーい」


 またしても涼がみくりにしてやられている。璃子はほっとした様子で胸を撫で下ろしていた。


「次、あたしが開ける」


 みくりが三つ目の封筒に手を伸ばす。そろそろ自分のが出てもおかしくないな。


『はるたへ

 いつもみんなをまとめてくれてありがとう。普段は言えないけど、はるたのそういうところが好き。中学でも変わらずあたしたちのリーダーでいてよね。


 りこへ

 かわいいりこ、おとなしいりこ、真面目なりこ。全部好きだぞ〜! りこは積極性がないって気にしてるのかもしれないけど、あたしはひかえめにみんなのこと思ってくれるりこが好き。これからもよろしくね。


 ひまりへ

 みんなの中心で笑ってくれるひまりがいてくれて本当に良かった。ひまりはあたしたちの太陽で、ひまわりで、ひまりがいないと物足りない毎日だったよ。だいすき。


 りょうへ

 バカだけどにくめない、そんなりょうと一緒に過ごせて楽しかった。なんて、口では絶対に言ってやらないけど。でもいつも盛り上げてくれてありがとう。元気で明るいりょうのことを本当は尊敬してます。ちょっとだけね』


「あたしのじゃん〜〜」


 顔を真っ赤にしながら自分が書いた手紙を読み上げるみくり。彼女が一人一人に手紙を書いているのは意外だった。もっと不器用な子かと思ってたけど、案外きちんとしている。


「お、おいみくり……お前、狙ったな」


「違うって! 普通に当時考えてたこと書いただけっ」


「うそだ! お前がこんなしおらしいこと書くはず……」


 そうツッコミつつも、涼はみくりの手紙に感動したのか、目尻に水滴が滲んでいる。涙脆いやつだ。


「みくりちゃんこんなふうに思ってくれてたんだね。ありがとう」


 璃子もいたく感動したらしく、照れたように笑う。みくりは「ま、まあね」と照れ隠しをしていたけれど、どこか嬉しそうだ。


「四つ目、わたしが読んでもいい?」


 今度は璃子が四つ目の手を手に取った。


『みんなへ

 六年間ありがとう。特にひまは、幼稚園の頃からだから九年間か。長いようであっという間だった。これからどんどんみんな違う道に進んでいくと思うけど、俺たちは一生友達だよな。大人になっても一緒にお酒を飲んで、わいわいしようぜ』


「お、陽太、ここで酒飲んでんじゃん!」


「いやまだ飲んではないでしょ」


 自分でもどんな内容の手紙を書いたのか半分忘れていたので、お酒を飲んで、なんて書いていることに驚いた。それから日葵のことを「ひま」と書いているし、匿名でも誰が書いたか丸わかりの手紙に頭を抱えたくなった。


「みんな結構分かりやすいね。小学生だしこんなもんか」


「いやほんと、おれにもっと教養があればなあ〜」


「あんたは今も教養なんてないでしょ」


 夫婦漫才を繰り返す涼とみくりに、俺や璃子はやっぱりおかしくて吹き出した。


「次が最後だね。最後は日葵のか」


「ああ。開けてみようぜ」


 日葵の手紙を開けたのは葉月だった。この中で唯一、このタイムカプセルとは何の関わりもない人物。日葵の手紙ということもあり、自然と心臓がドキドキと激しく脈打ち始める。


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