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妖怪の現代の歩き方

作者: 巴鱗

 この世には妖や妖怪と分類される不可思議なモノが存在している。

 川の氾濫など水害は水神の怒り、冷害は鬼の仕業、竜巻は天狗の仕業などなど、古くから妖や妖怪は自然災害と強く信じ、人間は災害をやり過ごすあるいは乗り越えるために社を建てあるいは人や食物を供えることで奉り、ある種、妖を信仰する歪な共存関係を持っていた。

 これらの災害は実際のところはすべてがすべて妖の仕業では無かったわけであるが、いくつかの災害は事実、大妖怪と恐れられた妖の所業も混ざっており、日ノ本の国が天下統一、鎖国に開国と人間の世が流れても妖に対する信仰心は変わらなかった。 


 そんな妖怪であるが、文明開化の折、日ノ本の国へ西洋文化が流入することで過去類を見ない危機を迎える。西洋文化から自然を制する考え方が日ノ本の国に広まったのである。

 江戸の町で線路が引かれ列車が走り始めたと思えば、木材を使わず隙間なく煉瓦で埋められた家屋が立ち、山は切り開かれ道が作られ、闇夜にはガス灯が焚かれ村々に多々あった人が立ち入らぬ暗く怪しい領域は排除されていった。

 これには災害があろうと戦乱があろうと気にもせず、のうのうと数百年以上も人の生活の隙間で暮らしてきた妖は悲鳴を上げる。


 無自覚な人間達に追い詰められた妖達は二つの選択をすることなった。すなわち従来の活動拠点を離れ、人里離れた山奥へと逃れる妖、人里中にあって不可侵領域に存在した人の手を超越する何かに首を垂れ保護を求める妖。これがよく言う第一次近代化危機である。 



 山奥へと逃れた鬼や天狗などの集団は、人を軟弱な愚か者と見下しつつも山野に下った。

 しかし、人の手が入り秩序ある里地里山の自然で暮らしていた彼らを待っていたのは厳しい自然であった…雨風防ぐ家屋も無く、容易に入手できた布地も糸も、そこいらに自生していた米や野菜も得られない。

 もはや獣同様の生活を強いられた彼らは、さらなる苦難が待っていた。それは…これまで事あるごとに人々より得られていた信仰心の喪失である。

 人の信仰を受けられなくなった鬼や天狗は知らぬ間に力を失い、体躯は小さくなり、言葉を無くし、やがて猿や鷹と変わらぬ力を持たない矮小な存在に身を落としていった。

 しかし、それでも彼らは辛うじて妖と言えるだけの妖しさを有していた…日ノ本の国が第二次大戦を経験するまで。



 国がかつてない程の戦乱に見舞われ本土空襲などと騒いでいる間も彼らは辛うじて存在していた。

 しかし、それも戦後の一時までであった。

 戦後復興のためにと人の手で山が開かれ、植林やダム建設、川の護岸工事など開発が進み、さらには世に公害なる毒物が空へ川へと垂れ流しになる人の無自覚なる所業が蔓延する昭和の世になれば、もはや人里から隔絶された領域など海により隔離された離島程度にしか残されず、哀れ野に下った妖たちはその命運絶たれ、滅亡することとなる。

 これが世に言う第二次近代化危機である。



 一方で、第一次近代化危機で山野に下らず人里に残った集団は、かつて平安の世に日ノ本に侵攻した仏閣寺社の主の神仏に保護を求めた。

 鬼や天狗のような力も無く脆弱な狐狸などの妖は神仏に下り、その一部は神使とし従属し、終わる事なき丁稚奉公をする下等な階級として神仏の領域にて生存を許された。

 そんな下級階級としての生活もまた長きに渡る世界大戦により陰りを見せる。

 神社仏閣から時を刻む寺の鐘も信仰集めた神剣仏像も溶かされ銃弾に変わり浪費され、信仰の拠り所の宝具の喪失に伴い神仏は力を弱まったのだ。

 そのうえ、戦後のGHQなる戦勝国首脳部の管理下の世は、いっそ西洋化が進み真なる神仏の存在など怪しきオカルト信仰に貶められ、結果として信仰が弱まった神仏は現世を離れた。

 そうして神仏が去った神社仏閣には人が立ち入られぬ神域だけが残り、残された下級階級の妖の更に下級なモノが神域にひっそりと生存し、比較的力があったモノたちは戦後の不安定な世情を利用し人の社会に溶け込むように生活することとなった。

 これが第二次近代化危機の裏の側面である。



 さて、そうして人の社会に溶け込んだ妖たちは発展を遂げる人の世に戸惑いつつも生活を続ける。

 その中で狡猾や英知に富むと信じられていた狐や狸、龍などの妖達は、変化に富む人間社会でいかに己らを生き残るべきかを協議する。

 神去りし現世での妖の後ろ盾は弱い。

 そこで考えたのが四半世紀制度。

 もはや妖の生存には人の世に生き、人にすがるしか生きる道なしとし、人の世の文化を四半世紀ほど慎重に吟味し、有用な物は積極的に取り入れ、時に人を脅かし信者なり僅かな信仰心を得ることで存在を維持、生き残って見せようという制度である。

 じぇっと婆や口裂け女などの都市伝説は生き残った比較的力の強い狐狸や猫の化生達が正体である。



 さて、妖達が昼は人に紛れ労働に勤しみつつ夜は都市伝説の正体として細々と生き、早半世紀。

 四半世紀制度はインターネットの普及そして動画配信サイトの興亡により新たな局面を迎える。

 過剰に情報が流入し、四半世紀を待たずしてインターネットにかかわる電子機器類がいやおうなく人の世の生活に浸透してきたのだ。

 これにより今まで都市伝説とか現代の怪奇といった言わばオカルト系コンテンツの衰退がはじまる。

 これにより妖達はさらに力を失い始める。

 さらにさらに、西暦2000年頃であろうか、細々と生きる妖の間である変化が起こった。

 それは各地の神社仏閣で碌に働きもせず野良猫に交じり生息していた化け猫や猫又と分類される妖たちの間で始まった。

 未成熟な化け猫が、人の世に溶け込むための装いすなわち人間への変化を試みたところ顔や四肢は上手く変化が出来るも、何故か頭頂部には耳が残り、側頭部にも耳が出来るキメラのごとく変化をした。

 ただしそれは未成熟な個体であったため、その身の未熟さ故のことであろうと誰も気にもしなかった。

 しかし、これが数日、数週間経っても耳は4つ加えて尻尾までも残りこれはいかんと成熟した化け猫が重い腰を上げ、これ手本を見よと変化を試みる。

 

 しかし、それまでおどろおどろしくも妖艶な妙齢の女性に化けることを常とした齢百有余年の老化け猫は、大変愛らしい元服前後の幼子に変化してしまったのである。

 これには立ち会った化け猫達も言葉を無くし、我も我もと変化を試みるも総じて人の外見でいう所の数え年で12歳から16歳の女児にしか変化が出来なかった。


 そう、齢が()()()()()も関係なく、あまつさえ()化け猫も化け猫も同様であったのだ。

 

 これを見た未成熟な若化け猫は、哀れな先達の姿に笑い転げるものから気色悪さに嘔吐するものと様々であった。

 この地獄絵図に気づいた狐狸をはじめとする様々な妖達もその異常さに気づく。

 ただし、2000年初頭は化け猫の類でしか変化の異常は認められず、また生来家猫や野良猫に交じり愛玩動物のように生活する化け猫達の生活へ影響は少なかったため大事にはならずに騒動は一旦はおさまった。


 しかし、時が流れるにつれ妖の人間変化の不全は化け猫のみならず、狐にまでも及ぶ。

 これには人の世で勤労に勤しんでいた化け狐たちは盛大に焦る。

 なんとか口先三寸そして数少ない妖としての能力で化かし、「実はワシはおねぇ系である」とか「私は流行りのプチ整形をした」だのと周囲の人間に言い聞かせ、どうにかやり過ごすも(傍から見れば突如、全身整形手術と高度過ぎる性転換手術をした奇人達である)、やはり人間関係の再構築に失敗し、年を跨がずにして「新しい自分に目覚めたので…」と言い残し職を辞すものが続出した。


 化け狐達は事態を重く見て、妖を取り巻く環境の変化を調べはじめる。

 そしてとある化け狸に相談をした際、あることを口にされる。猫耳少女、狐耳少女のジャパニーズアニメーションが電気街を中心にニッチな層の人間の間で流行りはじめていると。

 そんな事が…と妖たちが所謂深夜放送の大きなお友達が閲覧するアニメーションに注目しはじめると、出るわ出るわ犬や狼、鹿、狸さらには水神と恐れ奉われてきた龍までもが少女の出で立ちでテレビジョンに映りこみ、それと同調するようにかの妖たちも従来出来たハズの人間への変化が、未熟な妖のごとく耳や角を残した中途半端でかつ少女の姿にしか出来なくなっているのに気づく。

 

 同時に妖たちは、ようやく気づく。


 自然災害、自然現象の化身として恐れ、信仰されることで妖は妖たる力を得て妖として存在してきており、人里離れ人に忘れ去られてた妖たちの集団は力を失い獣とさして変わらない存在と成り下がり滅びていったことに。

 妖としての性質は人による信仰、すなわち思いにより大いなる影響を受けていることに。

 現世に残る妖たちは恐れた。

 人からの思いにより力を得ていたことに。

 人から忘れることで今まで有していた力を失いそして滅ぶことに。

 そして人からの脂ぎった怨念染みた思いからメスであろうが()()であろうが()()であろうが()であろうが少女にしか変化できなくなることに。

 

 これが俗に言う裏2000年問題あるいはミレニアムショックである。


 そして更に少し時は流れ2020年代。少女にしか変化出来なくなった妖達はインターネットのYou〇uber達に一途の希望を抱く。

 ばーちゃるYou〇uberになって信仰を集めよう!と、もはや四半世紀制度など神社に飛び交うWiFiと動画配信サイトの力で形骸と化し、むしろ最重要な生存戦略としてYou〇ubeにかける。妖達の存在を掛けた現代の戦国時代の始まりであった。

 とある妖は生存のため、とある妖は力を取り戻すため、とある妖達は失ったチ〇チ〇を取り戻すため、とある妖は…



「ただいまぁ~。」

 学校を終え自宅につくと玄関先に見慣れぬ男性物のボロボロの革靴を認め不思議に思いつつも、祖父に客でも来ているのだろうとリビングへ向かう。我が家は化け狸の祖父、化け狐の祖母、同じく狐の父に私の4人暮らしで、母は私が生まれて間もないころ…父に愛想をつかして実家に帰ってしまったそうである。さて、そんな我が一家であるが、今の時間は祖母はパチンコ屋でパート中、父は近所の病院の売店で看板娘としてアルバイト中。そして元パチンコ屋の祖父は自宅で庭いじりをするかパソコンで株価を見ているかテレビを見ているかのいずれかなのであるが…今日は珍しく客が来ているようである。


 証券会社の兄ちゃんでも来ているのだろうか?それにしては玄関に置いてあった靴は証券屋にしてはかなり汚れた靴だったなぁ。などと思っている私は稲葉江夏いなばえなつ近所の公立中学に通う狐生25年目、人生13年目の雄狐である(ただし見た目は13歳の少女である)。祖父の悟朗(88歳)は化け狸であるが、祖母の血が強かったようで父も私も狐として生を受けている。狐の姿に戻ればネズミの臭いすら嗅ぎ分けられる嗅覚があったり耳が良かったりするが、人化している間はちょっとした暗示を使える程度で、絵本に出てくるような木の葉をお金に変えるなんてことは出来ない。今日は祖母も父も帰りが遅いので、私が夕食を準備せねばならないため、客が居ると思わしきリビングを通って台所へ行こうと扉を開ける。


「ジーちゃん、ただい…」

「うぇ⁉」「げっ!」


 リビングの扉を開けるとそこには草臥れたスーツを着た男性に凭れ掛かるようにして携帯電話を見せつける焦げ茶色のロングヘアをした少女が居た。


「「「…」」」


 空気が凍るとはこのこと。目の前の光景に思考が停止する。草臥れたリーマンは顔を青くし固まり、祖父は目と口をかっ広げこちらを見ている。


「うわぁ…無いわ…」


 ようやく動き始めて頭で捻りだした言葉である。祖父の奇行が理解できない。


「ジーちゃん、何してるん…?証券会社の兄ちゃんじゃないよね?その人…男なんて連れ込んで…。っ!そういう趣味だったん?」


 何か事情があるのだろうが、気難しい部類の祖父を揶揄う滅多にない機会と思い、途中からニヤニヤしながら問いかける。


「いやいやいやいやいやいや!ナツ!違うんやって!これは!そう!携帯で株価見られるって聞いてやり方聞いてたんや!」


 スーツの男が目を見開き爺ちゃんを見ている。


「いや、ジーちゃんそれは無理あるでしょ…ソレYou〇ube開いてるし…」

「あっ…」


 そして爺ちゃんは再び停止する。その際どこか画面を触ったのかAI合成音声による動画のナレーションが流れ始める。


『皆さんこんにちは。今日はウノ元大統領の経済制裁について…』

「えーっと、稲葉さん?それも多分フェイクニュースです。ディープフェイクですよ。多分。」


 固まっていた中年男がようやく口を開く。


「嘘ぉーん?」

「はい?」「はい。」


 外見女子中高生の祖父(88歳オス)と草臥れたサラリーマン男性が肩を寄せ合いながらYou○ube見せあうと言う絵面…状況が全く理解できない。ウノ大統領と言えば最近再選果たした亜米利加の大統領のハズだ。関税が関税がとニュースで良く流れているのは目にするが、目の前の光景と動画とフェイク発言、やはり何一つ理解できない。とりあえず少しでも状況を理解するために自己紹介をする。


「えっと、ジーちゃんの…従妹の稲葉江夏です。中学生です。」

「あ、どうも因幡英雄です。えーとお姉さんにYou○ubeの設定やらやり方について教えて欲しいと言われまして…お邪魔しています…。」

「イナバ…?イナバって言ったら鳥取の…?」


 兎の妖だろうか?祖父の交友関係は多岐にわたるようで案外に狭い。自宅に連れてくるとしたら、狸か狐の妖怪程度である。男の頭には兎耳も見えず、ごく普通の人間に見えるが、噂に聞く人化時の耳を切断する玉ヒュン必死の苦行を成し遂げた勇者なのだろうか…?いやそれ以前にこいつは男の外見をしている。ひょっとしたら兎の妖の縁者か何かなのだろうか?首を傾げながら男を見つめると幾分か冷静さを取り戻した祖父(見た目女子中高生)が口を開く。


「ナツ、違うんや。因幡さんは、近所に住んでる普通のサラリーマンの普通な兄ちゃんだ。ええか?普通のそこいらにいるただの兄ちゃんだ。駅前のコンビニでベロンベロンになってるとこよぉ見るんけどな、散歩出掛けた時見かけてな、ちょっと携帯の事教えてもらおうと思ってご足労頂いただけや。」

「はぁ…?」「そ、そこいらにいる…」

「そう!そこら辺り良く居る普通の兄ちゃんや!ほら、親戚のた…兄弟がいるだろ?あいつがYou○ubeでばーちゃる?なんちゃらっての初めてウハウハだとか言っててな!それで気になったから教えて貰ってたんや!」

「あー親戚のた…た田貫さんね…。Vtuberなんてやってるの?いい年して…え、てか私に聞けばエエやんか。You○ube位見るでー?そんな他所の人に教えてもらわんでも。」

「いや、なぁ…うちのパソコン古いやろ?株価見るのにしか使ってないし、動画ニュースだってフリーズして碌に見えんやん?ほんで偶々、そう偶々コンビニで知り合った、因幡さんが近くに住んでるって話やし、ほんなら携帯電話でも見れるって話だから晩飯用意する代わりに教えてもらおうかと思ってなぁ。」

「はぁ…?まぁ携帯なん普段持ち歩いてないもんなぁ。家呼んだんは分ったわ。けどななぁ…とりあえずジーちゃんの友達ってことやね?って今日の晩御飯作るの私なんやけど…。」


 とりあえず、大まかにではあるが事情が見えてきた。普段携帯なんて持たない祖父が、動画配信サイトを見たいが、自宅のパソコンは性能低すぎて碌に見えない。かと言って、内弁慶の祖父は恥ずかしくて、私はおろか親父にも婆ちゃんにも聞けず、フラフラとコンビニへ行けば見知った無害そうな中年サラリーマン。昔とった杵柄で化かして良いように使ってやろうと声を掛け、騙くらかして自宅に引き込みトントン拍子で話が進み今は動画サイトを見ていたわけか…。やはり何と言うかうんキモいなぁ…。


「ジーちゃん?」「あぁ…ナツ済まんが一人分追加で頼むわぁ」

「まぁ良いけど…ってえーっとですね。因幡さん、姉はその気持ち悪いくらいにお爺ちゃん子で…私からしたらそれはあり得んというかキモイ「え…」と思うんですけど、家族の中で唯一お爺ちゃん子のあり得ん姉ちゃんなんで昔からジーちゃんジーちゃんって呼んでるんですよ。「ありえん…」ジーちゃんウッサイ。…私の事は気軽にエナツさんと呼んでください。」

「え、はい…。」

「ところで、フェイクとか言ってたのは…?」


 最後に気になったワードを聞く。


「えーと、最近の子はネットリテラシーが高いとは言うんですけどね。こういう動画配信サイトで出ている例えばYou○uberとか、AIが喋ってる動画の内容とかを簡単に信じちゃう傾向があるんですよ。年寄なんかは合成された写真や映像なんか見分けがつかないですから余計に信じちゃうんですよね。それで注意点と言うか騙されないようにってことでお話をしてたんですよ。」

「うん?でもその動画始まったばっかでしたよね?それがなんでフェイクとか分かるんですか?」

「そうそう!なんでさっきから見るビデオ見るビデオ、すぐに嘘って判断できるんよ?」

「エナツさんは、分かってそうですけど、こういう動画は情報の発信元があやふやで、大本の情報が出てないことが多いんですよね。なので、テレビでもニュースサイトでも報じてないような情報に関してはG○ogleとかYa○oo!とかで調べて海外なら海外のニュースサイトなんかを確認してホントかどうかを見るのが普通なんです。そもそも、顔も出さないような人間が合成された音声で話すのってすごく怪しいでしょ?」


 確かに最近はAIの合成音声で情報を垂れ流しにする動画は多い気がするも、それだけでフェイクと断じるのはおかしいくないだろうか?そう思い口を開く。


「でも、それだけじゃ判断基準にならないですよね?」

「そうそう。どうやって見分けたんだ?」

「必ずしも正解ってわけじゃあないんですけど、さっきの動画に関してはウノ大統領の事をウノ元大統領って言ってましたよね?しかも投稿日はここ数日以内のニュースで。」

「あーそう言えば…」「そうだっけか?」

「つまり、この動画の投稿者は発言内容のチェックを碌にしていない雑な作りをしていると言うことで、まず減点ですね。日本語の読み仮名を間違って読んでいたりする動画も多いですけど、それって大学とかちゃんとしたの専門で教育を受けた人間であれば単語の取り扱いってのは基礎として最初にしつこく教えられるのでそこを疎かにしている…つまり素人が適当に作ってることをPRしちゃってるわけですよね。下手したら外人が内容理解せずに作ってますよ。そういう動画はとりあえず投稿して関心を集めて再生回数を伸ばすことが目的なので、内容について碌にチェックをしていないのは明らかです。…多分ですけど○ィキペディアとかニュースサイトを勝手にコピーしてるだけです。」

「雑…確かに…」

「再生回数?」

「あー再生回数に応じて広告料が入ったりするらしいんよ。そうですよね?」

「そうですね。アフィリエイトって言うらしいですけど。まぁ…そういう再生回数目的の動画は、大体が見出しとは関係ない話で尺を稼いで、結局見出しの内容は煙に巻いて情報らしい情報なんて出さないんですよねぇ。当然内容の正確さなんて二の次です。あと次に、これはAIの合成音声でしたよね?」

「そうですね、機械に喋らせてますね。でもそれが?」

「多分なんですが、これフリーの音声読み上げソフトじゃなくて、ディープフェイクとか言うAIに情報を学習させ自動で生成させた内容を話していると思うんですよ。」

「でぃーぷふぇいく…」「フェイク?」

「フェイクっていっても、イミテーションとか模造品とかのニュアンスだと思います。ディープラーニングとか言うそうなんですけど、AIに過去に自分が作った動画の原稿とか他のネットにあふれている情報を適当に収集させ、その結果を自動で文章合成させて喋らせてるじゃないかなって。」

「へぇー」「はぁ…?」

「さっきの動画だとウノ大統領は現役の大統領ですから…多分この動画の作成者は大統領選挙の時にウノ元大統領とかそういう表現で原稿作っていたんじゃないですかね?…なので、AIがそれをそのまま学習して自動で適当にネットで集めた情報を合成して喋らせている可能性があるわけです。」

「えーっと、でもネットで集めた情報なら問題は無いんじゃないですか?」

「ネットのどこで調べたかも分からないんですよ?5チャンネルだったり、フェイク記事をよく出すニュースサイトやら個人のブログの妄想が入っているかもしれませんよね。そんな引用元が良く分からない、誰かがそう言ってたよって程度の内容が混ざってる可能性があるわけです。そんな情報を真実として真に受けるのは問題ですよね?」

「あー…なるほど…でも、よくどこぞのテレビの企画でこう言ったことがあったみたいな喋りだしの動画もありますけど、あれは…」

「さっき見たのもそうだった!それはどうして…?」

「いや、テレビでやってた事って動画で言ってても、それが本当にテレビで放送したことか分からないですよね?」

「え?」「あー…それはそうかも…?」

「同じ番組を見た人が、その動画を見ている場合を除き、製作者がみたテレビでやってたって話をされても、投稿者の頭の中でしか検証できないような動画は信用に値しませんって。

 せめてどこの国のどの局のいつ誰が発言したのかを明示して、それを確認できるような引用元を明らかにしていなければ、便所の落書きレベルの情報ですから見る必要がありません。」

「なるほど…」「便所?引用?」


 何故トイレに落書きがある話になるのか良く分からず首を傾げる。引用元云々もよく分からない。


「あー下品でしたかね。昔は公共用トイレに悪口とか怪しい個人情報とかよく落書きされてたんですよ。引用元っては、今僕が言った発言とネットの良く分からない人の書いたブログ、テレビに出てるような偉いコメンテーターの言ったこと、あとは新聞とか雑誌ですね。そういった媒体でどれが一番信用できるか分かります? 」

「えっと、テレビか新聞ですか?」

「そうです。特に新聞とか雑誌ですね。テレビは…録画がありますが、基本的に一度放送された内容は後から検証することは映像を記録しておかなければ検証できません。けれど、話している人間の身元を明らかにして発言しているわけなんで、話した人間事体がその情報を担保しているわけで、これが嘘の情報だとしたらその人は信用を失いますし、テレビ番組事体も信用を失うので、嘘の内容や間違いに関してはすぐに訂正がせますし、発言や放送内容に関してテレビ局なりが責任をもって放送しているわけです。新聞や雑誌は紙媒体で配布していますから、それを書いた人があとから全部回収することは難しいですよね?報道内容についても出版した責任があるので、やはり間違いがあったらすぐに訂正が行われるかと思います。次にネットの情報ですが、これは一部特殊な手段を除いて情報を打ち出した個人の裁量でブログの記事なり動画なりを削除して逃げることができます。もちろん、見ていた人がその情報を消される前に紙に印刷するなりダウンロードするなりして記録しておくことが出来ますが、そんなことをする人なんて稀ですし、動画ならアカウントを削除するなりして逃げることが一応は出来ます。なので、無責任に情報を発信することが可能なわけです。まぁ国会図書館がwebページを定期的に収集記録していたりするので、あとで調べることは一応可能なんですけどね。」


 早口でまくし立てるように続ける因幡に少し引きつつも言われてみればと納得してしまう。


「へぇ…」「なるほど…そんなのがあるんですね…。」

「昔あったSNSや掲示板の書き込みで名誉棄損になったって事例はご存じで?」

「あー。たしか恋愛リアリティショーでの自殺でしたっけ?」

「あったなぁ。あんなくだらないことで自殺するたぁ親御さんが可哀そうだったわ…」


 エゴサーチなる概念を知らない祖父はそう言うが、今やSNSはあって当たり前のツールである。少しでも自尊心なり承認欲求がある人間であれば傍からみた自分の評判というのは気になるものである。私たちは騙してなんぼ、化かしてなんぼ人からの評価など悪ければ悪いほど良い生活を代々続けてきた妖であるが、それは今は昔の話。第二次近代化危機の後神仏の庇護下にあって以来、私たち妖とて人間社会の枠組みで生活しており、円滑なコミュニケーションを取り、社会性を維持することは生存の絶対条件となっている。よってSNSでの攻撃とは学校、会社、私生活どの面でもやはり怖いものである。


「そうですね。あれは名誉棄損ですが、それでも人一人を自殺に追い込む力があるわけです。そして発端となった書き込みをした人間は逃げることも出来ず罰を受けていますね。なので、行く行くは動画配信サイトで無責任に制作された虚偽を含む動画というものにもメスが入っていく可能性はありますね。」

「じゃあ今は無法地帯ってことなんですよね?」

「そうですね…なので、まだまだ無責任な発言を垂れ流しにしている媒体ということです。動画が仮に社会的立場のある人間であれば、あるいは確たる根拠が誰でも確認、検証できる状態で流されているのならば、後者であれば閲覧した人間が情報の裏付けをしなかった自己責任と言うことになりますが、一応は信用できるものとは思います。」

「それやと、テレビの情報番組とあまり変わらない感じなのか?」

「でもテレビもステマとかやってるし、信用できないんじゃないですか?」

「まぁマスメディアはスポンサーあっての存在ですからね。どうしても都合の悪い内容なんかは恣意的に歪めて報道するでしょうから、その点個人が発信しているネットの動画というのは正しい情報が流れている可能性も確かにあります。」

「なんや、困るなぁそれ。結局どうすればええんや?」

「動画サイトで情報を収集するなら、少なくとも間違った情報に踊らされないように少なくとも顔出ししている動画、可能ならばそれなりの社会的地位を持っているなり経歴が明らかになっていてかつ信用できる人間。そういう人が作成している動画以外は眉唾な情報源とみておいた方がいいですね。」

「なんや結局テレビと一緒か…」「そうなると…」

「はい。そんな人の作った動画でも情報の発信元があやふやなものであった場合はやはり信用は出来ないです。ただ、例えば匿名の自称弁護士の言葉と所属を明らかにしている弁護士の言葉で信用度は違いますし、やはり弁護士といっても、しがらみがあるでしょうから、恣意的に情報を歪める可能性はあります。そうなると結局、個々人が情報発信者を信用出来るかどうか判断するしか無いんですよね…。まぁこれだけ情報過多な社会で顔を合わせたこともない人間の言葉をどこまで信用できるかってのはなかなか…。悪意を持って作成されたものから、ドッキリのようなノリで作りこんでいるものもあるので…」

「そうかぁ…まぁYou○tubeの動画は毎日誰か知らかがエイプリルフールの嘘動画をいっぱい投稿している…って思った方が良いってことか…。」

「クリエイティブな捜索活動の一言で大抵のことは許容されていますからね。多分、テレビやラジオもそういう事あったんじゃないですかね?報道の自由やら表現の自由の名目で意図的に情報を絞るとかは。」

「あぁあったなぁ。」


 信用出来る出来ないの話で頭がこんがらがってきた…。祖父はどうやら納得したようであるのでまぁ良しとしよう。


「昔でしたらそれこそ狐に化かされたとか言いましたが、今じゃあ匿名の動画作成者に化かされるわけですから、人間いつまでたっても変わらないものですよ…。」

「うぇ…」「き…狐…」

「ええ、狐ですよ。狐。絵本とか昔話で聞きませんでした?カチカチ山だと狸に騙されておじいさんが殺されてましたけど、ネットも下手したら民衆扇動してパニックにさせたり株価に影響与えてデイトレーダーとかに被害を与えることも一応は可能ですからね。」


 いきなり狐と狸を例に出されて顔が引き攣る。ベテラン化け狸の祖父は…平静な顔しつつも目が泳いでいる。耳も尻尾も暗示で化かしているから気付かれていない…ハズ!藪はつつかず話を変えねば!


「あー!そう言えば、今日は晩御飯食べてくんですよね?」

「そうそう!ナツは中々腕が良いから期待して良いぞ!何か好き嫌いとかあるんか?」

「難しい話で頭がこんががっちゃったぁ~。ご飯用意しましょう!何か食べたいものありますか⁉」

「え、ええ?そんな一人暮らしが長いもので…なんでも大丈夫ですよ!流石に中学生の子に晩御飯を作らせるなんて悪いですから!それこそレトルトカレーでも十分です!」

「か…カレー」「カレーか…」

「え?どうしたんですか?」


 狐や狸にかかわらず、野生動物は刺激物に弱い。特に犬科の狐はタマネギと相性が悪く、化け狐、化け狸も例によって舶来の油っこく香辛料が効いた食事は苦手である。


「ごめんなさい…家って香辛料が強かったり脂っこいものが苦手な人ばっかりで…私も和食しか作れないんですよ…」

「あー。ナツは油ものが特に苦手で、小学校の給食でもカレーにあたってたらしくてな…。」

「給食で?痛んでたんじゃなくてですか?」

「いや、普通のカレーライスや。食中毒やないかって大騒ぎでな。病院担ぎ込まれる前にどうも油やらタマネギやらがダメだったみたいで…ウチはもともと和食しか食わんから洋食の類は体質的に受け付けんみたいでなぁ。」

「それは…和食で、和食が良いです。普段居酒屋かコンビニ弁当しか食べてませんから和食大歓迎ですよ!あまり気にせず普段食べているもので大丈夫ですから!どうぞ気にせず普段通りに作ってください。」


 保健室前の廊下で嘔吐して倒れたのはもはや黒歴史だ…あれ以来、スパイスの臭いだけで気分が悪くなるため、小学校の野外活動で私の班だけみそ汁焼き魚を作るなど未だに同級生たちの笑い話になっている。冷蔵庫の中身を思い出していると、祖父が酒の当てにと買ってきた鯵の干物があるのを思い出す。


「すみません。ジーちゃんに色々教えてもらったお礼なのに…。良い鯵の干物があるのでそれ焼きましょうか!鯵は大丈夫ですか?」「え?」

「あー良いですね!独り身だと魚なんて焼かないのでありがたいです。」

「ジーちゃん!七輪出してや!「いや、それって」ええやろ?どうせ何枚も買ってきてるんやし、それにお礼やろ?炭火で焼いた方が美味しいんやし頼むわ~!「そうやなぁ…火起こしとくわ…」よろしく~。それじゃあ、私は準備しますので、ソファーでくつろいでてください。」


 祖父に七輪の準備をおしつけ、台所に向かう。炊飯器を確認すれば、ご飯の量が足らないため炊きなおす必要がある。冷蔵庫から干物を出しつつ、食材を確認すれば祖母手製のカブの漬物、絹ごし豆腐、ナスが目に入る。


「うーん…(みそ汁に漬物、冷ややっこにナスの煮浸しに干物で良いかぁ)。よし、出汁出汁~鰹節~。」


 水を張った雪平鍋に削り節をたっぷり5掴み程入れ火をかける。鍋が沸騰するまでは放置で良いので、その間に米を研ぐ。…米の炊き方もやれシェイカーでやると良いだったり水は切ってからザルでとぐと良いだったり、とぎ汁が透明になるまでだったり、3回とげば良いだったりと定期的に違う美味しい米の炊き方が放送されるため、正直何が正しいのか分からない。結局一番楽な3回だけといでそのまま炊飯器にお任せしているが、情報過多…どの番組の誰を信用すれば良いのだろうか…。そう考えたときに不意に閃く。


「はっ⁉これか‼」


 信用できる情報は…ある程度信用出来る情報の中で結局自分に都合の良いものを選択してしまう…。何が正しいかうろ覚えの一時的な情報を鵜呑みにするではなく、出版物等つまり…家庭科の教科書!…お米の炊き方なんて書いてたっけ?


「江夏さん、何かありましたか?」


 思ったより大きな声で叫んでしまったようで、心配そうな因幡さんが声を掛けてくる。


「いえ、さっきの話を思い出して…」

「え?お米を研いでてですか…?」

「はい!後で小学校の教科書見てみます!あ、みそ汁は合わせ味噌でも大丈夫ですか?」

「え?えぇっと、味噌は気にしたこと無いですね。なんでも大丈夫です。」

「ナツ~!火ぃ着いたぞ~。」

「はいはい~。魚持ってくから火加減よろしく~。っと、どうぞテレビでも見てくつろいでいてください。あ、お茶も出しますね~。」


 その後、帰宅した父と祖母が私同様にフリーズし、援○や!犯罪や!年齢考えろ馬鹿やろう!と大騒ぎなるも、爺ちゃん秘蔵の焼酎を出したところで有耶無耶になり、夜も更けたため千鳥足で因幡さんは帰っていったのである。


「で、親父はYou○ube見たかったわけか~。しかしフェイクねぇ~。」

「私は料理か音楽の動画しか見ないので気にしたことないですね。」

「いやなぁ~。株転がしてるし、そういう情報気になるやん?実家の兄貴もネットのが情報早いとかむしろ動画でまとめてあるとか言うから気になってなぁ」

「で、フェイク動画に嵌ったわけやね…。因幡の兄ちゃんに話聞けて良かったなぁ爺ちゃん。私もTik○okとかYou○uberのヤツしか見ないから知らんかったわぁ。」

「ちなみにあの兄ちゃんは因幡の兎とは関係無いんよな?」

「無いない~。普通の人間よ。いくら暗示かけてても流石に妖もんには気づかれるけど、耳も尻尾もなんも言わんかっただろ?やで、久々に化かしてええよう使ったろうと思ったわけよ。」

「それは分ったけど…ええ年した爺様が女子中高生のふりして男を誑すんは、絵面はともかく実情が…きっついよ。ジーちゃん。」

「う…可愛い子ぶって看板娘やってる俺にその言葉は効く…」

「父ちゃん…」「省吾…」「省ちゃん…」


 勤め先でお姉系カミングアウト事件を起こし閑職に追われ、離婚そして看板娘騒動と変化の外見で苦労している父ちゃんの言葉に何も言えなくなる。私のように男性型の人型になったことも無い世代は大したことではないが、祖父や父ちゃんの世代はミレニアムショックの煽りをもろに受けている。顔も見たことが無い母は無職になりオカマ発言をし周囲から白い目で見られる父ちゃんに愛想をつかして実家に帰ったという。


「田貫湖のおじさんがV○uber始めたんやったけ?昔噂になった信者を作って力取り戻す云々か?」

「そうそう!あいつテレビ電話してきたんだけど、なんや男っぽい感じの見てくれしてたんや!耳も2つだけだったぞ!ひょっと○ン○ンもついてるかもしれんな!狸自慢のでっかい○玉袋も!」

「まぁ!」「嘘やろう⁉」「あぁ…。」


 祖父母と親父が興奮して語気を強めて話す中、私だけが嫌な予感がしてネットでとあるアニメキャラクターの画像を検索する。


「そうなると省吾も元のナリに戻って夏子さんが帰って来るやもしらんぞ⁉」

「夏子さんが…」

「えっと、それはどうやろうかな…。」 

「どうしたんや?」

「それにしても、悟朗さんが男に戻れるなら…省吾あんた弟と妹どっちが欲しい?」

「おいおい気が早いなぁ!」

「いや、」


 独身生活24年の親父が弱る。田貫の叔父に聞いた話では、我が母の夏子は最近ヤケを起こしたのか狐系ご当地アイドルをはじめたとかで、ネットの界隈でも常につけ耳つけ尻尾を外さないプロ意識(?)が高く母性豊かな合法ロリとして有名だそうである。あったことは無いが…と目的の画像を見つける。


「ジーちゃん、田貫のおじさんってこのキャラに似てなかった…?」

「なんや?見してみぃ…おー。よぉ出来てるなぁ!兄貴そのものや!兄貴のやつ信者が増えてこういう絵も描かれるようなったんかぁ。…そうそう!どっかで見たと思ったんけど、昔よぉ見た宝塚のスターに似てたんや!ワシが男に戻ってもこんな感じになるかね~。」

「それは良いですね!私も結婚前はよくテレビで…」

「…なぁナツ…あれって」


 はしゃぐ祖父母を横目に黙り込んでいた父ちゃんも気付いたようだ。気まずそうな顔をしつつも続きを話したれと目で訴えてくる。楽しそうに妄想している祖父母には悪いが真実を告げるために口を開く。


「はぁ…ジーちゃん、女や。」

「ん?そらぁ今ワシは女のナリにしかなれんが、昔はそら立派な一物抱えてたなぁ!」

「いや、それ女のキャラや。半年前から始まったアニメの。」

「はぁ⁉」「えぇ?」「やっぱり…」

「いや、でも声も低ぅて…」

「ハスキーボイスの声優使ってるんや…」

「身長かてワシらと違って…」

「高身長…ついでに製作者がLGBTに配慮して作った女好きのオリジナルキャラらしいよ…」

「「「「…」」」」


 居間を沈黙が支配する。ついでに言えばこのキャラは狸耳狸尾のチャラい女でチャラ女と略され、ネット界隈で日本未来に生き過ぎなどとネタにされつつ、玩具になっている。


「クソ兄貴がぁ!騙しやがったぁ!」

「LGBT?」

「はぁ…」


 こうして稲葉家の夜は更けていく。祖父が○ン○ンを取り戻すのはまだまだ先であるようだ。

 なお、一見すると14から16歳程の少女4名がワイワイ騒いでいるだけである。その実、88歳オス自宅警備員、80歳メス売店の看板娘(?)その1、57歳オス売店の看板娘(?)その2、そして25歳オス現役女子(?)中学生(?)というカオスな空間である。現代を生きる妖怪の苦難に満ちた日常続く…



 その後の稲葉家


「おい省吾!軽自動車の規格変わって760ccになるんやって!」

「ナツ…おまえに弟か妹が出来たんかもしれん…種違いの…」

「○mazonで星5の商品買ったのに全然違うもん来たわ!なんやコレ⁉」

「亜米利加経済が…」

「おう!日本がめっちゃ外人に評価受けてるで!」

「皇族が…」


「…ジーちゃんも父ちゃんもネットのフェイクに踊らされ過ぎやわ…あと○mazonの星5はサクラや!…もう…因幡の兄ちゃんに教えてもらいや…」



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