夏祭り
風鈴(ふうりん)の国、ラセリアでは、年に一度、空から降る星の音を祝う「音灯祭(おんとうさい)」が開かれる。町中の屋根に小さな風鈴が吊るされ、人々はそれぞれの想いを風に乗せて届ける。
風に乗せて、大切な人に想いを届ける——音灯祭は、そんな風の告白祭でもある。
リノアの想い人は、隣町から毎年この祭りに訪れる幼なじみ、カイル。彼は物静かで、音に敏感な青年だった。小さい頃からリノアが話すことに耳を傾け、どんな些細な言葉も真剣に受け止めてくれた。
「この町の風は、ちゃんと“気持ち”が聞こえるんだって。だから、嘘をつけないんだよね」
あの頃の言葉が、今も胸に響く。
そんな彼に、リノアはようやく伝えたいことがある。言葉にすればほんの一行なのに、口にするのはなぜこんなにむずかしいのだろう。
空気が少しずつ、音の色を帯びていく。
祭りの夜が、近づいていた。
風に乗せて、大切な人に想いを届ける——音灯祭は、そんな風の告白祭でもある。
リノアの想い人は、隣町から毎年この祭りに訪れる幼なじみ、カイル。彼は物静かで、音に敏感な青年だった。小さい頃からリノアが話すことに耳を傾け、どんな些細な言葉も真剣に受け止めてくれた。
「この町の風は、ちゃんと“気持ち”が聞こえるんだって。だから、嘘をつけないんだよね」
あの頃の言葉が、今も胸に響く。
そんな彼に、リノアはようやく伝えたいことがある。言葉にすればほんの一行なのに、口にするのはなぜこんなにむずかしいのだろう。
空気が少しずつ、音の色を帯びていく。
祭りの夜が、近づいていた。