獅子座の悪魔
おてんば姫ミーファンは流れ星「獅子座の悪魔」を拾ってしまう。
この国は不幸になるのか。
星が流れます。これはよくないことの、きざしですぞ。
今夜は遊びに出ることなくおとなしくなさいませ。
ユン大臣はミーファン姫にそう言って部屋を去りました。
ユン大臣はそう言いましたが、ミーファンはなぜだか眠れません。
何気なく外に出ると、庭がうっすら明るく光っていることに気が付きました。
おてんば姫のミーファンは好奇心のおもむくまま庭に出てしまいました。
なんと、そこには銀色に輝く愛らしい仔ライオンがいるではありませんか。
仔ライオンは無邪気に庭石にじゃれついているようです。
ミーファンは一目でそれが気に入ったので、家族にしようと思いました。
次の日、王様は、仔ライオンを家族にすることを許してくれました。
お前、お前の名前はエンド、強く立派なライオンにしてやろう。
その日から、ミーファンはエンドのお世話をしました。
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エンドはミーファンに守られ大きくなりました。
ミーファンが歩くとその後ろをついてまわり、おやつをもらうと大喜び。
エンドは芸を覚え、いたずらを覚えましたが、
決して人を傷つけるようなことはありませんでした。
エンドは人の言葉がわかり、
やがて少しづつ人の言葉を話すようになったからです。
ミーファンはエンドと一緒にお勉強をしました。
そして、エンドにまたがって国中をまわるのでした。
エンドもミーファンが大好きです。
「ミーファン大好きだよ、エンドはずっとミーファンと一緒にいるよ!」
「ミーファンもエンドのことが大好きだぞ」
二人は仲良く大きくなっていきました
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ミーファンが17歳になった時、
エンドは空に帰らねばならないと言い出しました。
「俺は、流星獅子なんだ。ナンバーワンの獅子にならないといけないんだ。
生まれたからには、ナンバーワンの獅子として、生きたい。俺はそれができる」
エンドはすっかりたてがみも立派に育って、それはそれは美しいライオンになりました。
「ナンバーワンになるために、ミーファン、君の大切なものをくれないか」
ミーファンは、大切にしている髪飾りと服を、エンドにあげました。
今夜は獅子会だから、ミーファンにも一緒にきて欲しい。
獅子会は他の流星獅子との格闘会でした。
ミーファンというお姫様に育てられ、いつも、たてがみをくしけずってもらっているエンドはとても立派で、誰にも負けない強い獅子でした。
ついてきたミーファンもとても誇らしい気分でした。
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しかし、今回の獅子会は別の流星獅子がトップでした。
「獅子会は、全部で5回ある。その中でのランキングトップが、獅子王としてナンバーワンなんだ。ミーファンがもっとたくさんのものをくれたら、きっと強くなれる」
ミーファンはとてもがっかりして、次回のために、もっとすばらしいものをエンドにプレゼントしようと思いました。
他の獅子たちも同行している女の子がいましたが、服や髪飾りだけでなく、宝石や宝物を受け取っていたからです。
「わかった、わらわがエンドをナンバーワンにしてやろう」
ミーファンはエンドの事が大好きなのでエンドのために、なんでもしてあげようと思うのでした。
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エンドは、ミーファンが協力してくれるので、ミーファンのために、毎日、国中のいろいろなところに連れて行ったり、楽しい話をたくさんしたり、一緒に過ごしながら大切にしました。
エンドに乗ったミーファンは国のみんなに愛されました。
エンドはこんなステキなライオンなのに、ナンバーワンにならないなんておかしい。
ミーファンは、すっかりエンドのとりこになっています。
はじめは、服と宝石、次にたくさんの宝物。
獅子会は繰り返されるのですが、だんだんと宝物の価値が大きくなってしまいます。
繰り返される獅子会でしたが、第二回、第三回はエンドがナンバーワンでした。
しかし、第四回で、ふたたび2位に転落してしまうのです。
すべての持ち物をあげているのに、トップになれなかった。ミーファンはとてもがっかりします。
「なにがいけなかったのだろう、あのライバルのちんちくりんな娘が土地まで売ってプレゼントしたからなのか?」
ミーファンは最後の戦いだけは絶対に負けられないと必死になって宝物を集めます。
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ユン大臣は、ミーファンが流星獅子にお金をたくさん使うのでとても困りました。
「これ以上、流星獅子のエンドにお金を使うと、この国は滅びてしまいますぞ」
ミーファンは
「嫌じゃ!エンドがナンバーワンになれるように尽くすのじゃ!お金が無いなら、この国が滅びる前に、隣の国から奪ってくるがよい」とまで言います。
ユン大臣は国王に相談し、ミーファンに獅子のナンバーワンを諦めさせようとします。
国王は、ミーファンの事が大事なので、ミーファンのために
国王の宝物まで渡してしまいます。
「王様、それは国民から贈られた大切な品ですぞ」
「ミーファンのためならば」
やがて国民たちも一丸となってエンドを応援し、プレゼントを用意するようになりました。
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国王や国民たちの助けもあって、最後の獅子会は、エンドがナンバーワン!
エンドが通算でもナンバーワンだったので、ミーファンはとても大喜び。
エンドとお城に戻って、国を挙げてお祝いをしました。
エンドは国の宝だ!誇りだ!ずっとこの国を守ってくれ!
と国民全員幸せになりました。
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しかし、次の日の夜、エンドは空に帰ると言います。
「俺はナンバーワンとして、次の世代のために空に輝く」
ミーファンは怒りました。
「嫌じゃ!ずっとここにおるのじゃ!誰のおかげでナンバーワンになれたと思っておるのじゃ!」
「ミーファンありがとう、君のことは忘れないよ」
エンドは、冷たく飛び去ろうとします。
ミーファンの宝、国の宝、国民の宝をすべて奪って、流星獅子は空に帰ろうというのです。
「裏切者!ずっとわらわのそばにおると言ってくれたじゃろう!」
ミーファンは泣きわめきました。
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「いかせるものか!」
国王様!
国王様は、なんと、大きなほこで、エンドの首を落としてしまいました。
ミーファンは嘆いて言います
「父上、なぜ殺してしまったのじゃ」
「ミーファンよ、エンドのためにこの国は傾いたが、
いまや国民全員がエンドを愛しておる。エンドに行かせるよりはいっそのこと、
殺してしまって大きな墓を築いた方がこの国のためなのだ」
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しかしエンドは死んではいませんでした。
落とした頭が笑いながら言います。
「ハハハハ、今までありがとう、ではこの頭はミーファンたちを見守るために置いていく」
それきりその頭は話をしませんでした。
エンドは輝く胴体だけで空に帰ろうと、飛び始めます。
ミーファンはとっさに、エンドの胴体に飛び乗りました。
エンドはミーファンを乗せたまま
そのまま空に見えなくなってしまいました。
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国王も大臣も国民たちもとても悲しみ、嘆きました、
エンドも愛するミーファンも失ってしまったからです。
それからというもの、エンドの首は通りに飾られ
国民の支えになりましたが、ミーファンは帰ってきませんでした。
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今でもたまに、愛らしい仔ライオンが庭に落ちてきます。
大臣は、
「流星は悪いことのきざしなのですぞ」
と言いますが、ミーファンの子供たちなのかもしれないと思うと、国王は手放せません。
国王はそれを大切に育て、
「ナンバーワンになれずともよい。お前たちはお前たちの力で空で輝け」
そう言って、涙をぬぐい、少しのお金を持たせて送り出すのでした。
おしまい。
読んでいただきありがとうございました。