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49話

 早退しようとする今岡を押さえて何とか午後の授業を乗り切った。


 午後の授業が終わっても、アリサさんからチョコを受け取ったことによって喜びに打ち震えている今岡を軽くあしらってから帰宅する。


 俺も人生で初めて女子からチョコを貰って内心結構嬉しかったりする。

 しかも伊吹さんと三上さんの二人から貰うことができた。


 ちなみに……アリサさんからは貰っていない。


 今岡は貰っていたのに……。


 ま、まぁ、きっと家で貰える……と思う。

 貰える……よな?


 べ、別に欲しい訳じゃないけどな!

 別にアリサさんに貰えなかったとしても二個もチョコ貰ってるし!


 ……はぁ、なんか緊張する。

 そんな思いを抱いて玄関の前で立ち止まる。


 緊張で家に入り辛い。

 

 意を決して玄関に手を伸ばそうとした時だった――


「何を玄関の前で百面相しているのですか……。不審人物にしか見えませんよ」

「うひゃぁっ!?」


 突然話しかけられ飛び上がるほど驚いた。

 声のした方向に顔を向けると斜め後ろ方向に買い物袋を持ったアリサさんが立っていた。


「そんなに驚くとは……何かやましいことでもおありですか?」

「気配もなく背後に来て突然話しかけられたら誰だって驚くよ!」


 あそこまで気配がないとか……達人か!

 なんのかは分からないけど。


「そこに立たれていますと家に入れないのですが」


 それはそうですよね!

 玄関の目の前に俺がいますもんね。


「ご、ごめんなさい!」


 謝って道を開ける。


「いや、避けなくても……樹様の家なのですから入ればいいのでは?」


 それはその通りです……。


「そ、そうしようと思ってたよ?」


 言いながら玄関に手をかけた。


「なぜそんなに挙動不審なのですか?」


 俺にもわからない。

 なんか不意打ちでアリサさんと会って……テンパってしまっている。

 不思議な緊張感が俺の身を包んでいるかのようだ。


 そんな俺をアリサさんは不思議そうに見つめていた。



「おかえりなさ~い!」


 俺とアリサさんが共に玄関から入ってきたということは家の中には誰もいないはずなのに、そんな明るい声に出迎えられた。


「え、なんでいるの?」


 そこにいたのはアリサさんの妹であるマリナ……通称、妹さんであった。

 妹さんは初めて見る制服姿だった。

 この辺ではかなり有名な中高一貫の学校で、その制服を着た女子と仲良くなりたいと思うのはこの辺の男子の共通認識らしい。

 まぁ中には本気でナンパなんてしようとする男もいるらしいが普通に相手にされないらしい。


「え、なんか冷たくない? もっと他に言うことあるんじゃないの?」


 不満気にそう言って、スカートを摘まみながらその場で一回転する。

 

 ……確かに似合っている。

 アリサさんと似ている外見なのもあり、黙っていれば正に令嬢といった風情だ。

 だが、妹さんの纏う雰囲気がそれを許さないところがあるし……何故か妹さんを素直に褒める気になれないのはこれまでの付き合いからだろう。


「てかマジでなんで誰もいなかったのに家に入れたの?」

「普通に合鍵あるけど」

「なんでっ!?」


 ほんとになんで!?

 俺も知らない事実なんですけど。


「え、ほら……夏休みの時に」


 夏休み……?

 

 …………あっ!

 アリサさんがいなくなった時か!

 あの時、アリサさんは妹さんに家の事を頼んでいたらしいし、その時に渡したのか。


「って、そんな事はどうでもいいの!」


 良くないけど!?

 

「なんで私が学校が終わって急いでここに来たと思ってるの? 明日も学校あるのに」


 知らんがな。


「知らんがな」


 あ、そのまま口に出してしまった。

 それも呆れた感じの口調になってしまった。


「今日が何の日かわかるでしょ!?」

「それは……まぁ」


 バレンタインだってことぐらいしかないよな?

 だとしても、それが何か関係あるのか?

 もし妹さんの誕生日とか言われてもそれこそ知らんがなとしか言えないぞ。


「そこまで分かってるなら普通わかるくない?」

「わかるくない」


 変な日本語使うなよ、お嬢様学校の生徒。


「あ、ありえないんですけど」

「なんか……ごめん」


 愕然とする妹さんに反射的に謝ってしまう。


「ま、いいや。はい、これ」


 そう言って差し出してきたのは綺麗にラッピングされた可愛らしい箱だった。


「…………え?」

「チョコだよ!」


 え、マジで……?


「く、くれるのか?」

「そのために来たんだけど……なんでそんなに信じられないような顔してるの?」


 だって、お前……わざわざチョコを渡すために家に女の子が来てくれるなんて信じられるわけないだろ。


「あ、ありがとう」


 恐る恐る手を伸ばしチョコの入った箱を受け取る。


「どういたしまして!」


 満面の笑みで朗らかに言った妹さんに若干見とれてしまった。


「そろそろ帰らないと寮の門限に遅れるから帰るね。それじゃ、お返し楽しみにしてるね~!」 

 

 そしてさっさと帰っていく妹さんだった。

 

 マジでこの為だけに来たんだ……。


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