表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
護衛が王女(わたし)の命を狙う暗殺者なんですが  作者: 遠山京
第二章 その褥に竜胆は咲く

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/59

12 日野晴と春幸

「大丈夫でしょうか……」



三人だけ取り残された広間の中で、ダリアが不安げに呟く。



「春幸お兄様は誰にも告げずに外に出たりされる方ではありませんの。何かあったに違いありませんわ」



雪音様が硬い表情でそう返した。

その言葉を裏付けるように、早朝だと言うのに城内は騒がしい。

それにしても、アルはどうしてこの場に三人を集めたんだろう。

捜索の邪魔にならないように……?

空気につられてそわそわしてしまう私とダリアを見て、雪音様は困ったように微笑む。



「わたくし達は待つしかありませんわね。女が出しゃばっては足手まといになりますもの」



前世で口にすれば炎上しそうな言葉だけれど、竜胆国やグラジオラス王国の常識に当てはめれば普通の話だ。

ダリアも否定しない。



「この場でこうしていても落ち着きませんでしょう。お茶でもいかがかしら?」


「ここから動いても良いのでしょうか?」


「もし春幸お兄様がすぐに見つからなければ、おそらくお父様や日野晴お兄様がこちらに戻って来て家臣を集めると思いますわ。かえってお邪魔になるかもしれません」



そう言われると反対しづらい。

もしアルがここに連れてきたことに意味があるなら動かない方がいい気もするけど……

でも二人から離れるなとは言われても、ここから動くなとは言われなかったのよね。

アルは動いちゃダメな時はハッキリそう言うだろう。

そう判断して、雪音様の提案に賛同した。



「御殿は騒がしいですし、いつもの茶室はやめておきましょう。東に椿がよく見える茶室がありますの。そちらでご用意いたしますわ」


「……そうですね」



東の茶室は前を通ったことがあって知っている。

そんなに遠い場所でもないし、問題無いはず。





いつものようにお茶とお菓子が出される。

最初はおっかなびっくりだったダリアも、今ではすっかり抹茶と和菓子を気に入ったようだ。

成長期のダリアはいいとして……今まであんまりお菓子とか食べなかったのにこのところ毎日食べてる私は……ちょっとやばいかも。

どうやらこの体は念願の太りにくいボディではあるようなんだけど、それだけに油断するとまずい気がする。

いつも通りのお茶の時間が訪れて少し気が抜けた私は、少しだけそんな呑気な思考に気が逸れていた。

そのせいだとは思わない。

だってこんなの、どんなに気を付けてたって避けられた気がしないから。



「ごめんなさい、お二人とも」



雪音様のそんな声が聞こえて顔を上げた時、いつの間にか立ち上がっていた彼女は掛け軸の裏に隠されていた紐のようなものを引っ張っていた。

次の瞬間、床が消えた。



「ひっ……!?」



喉からそんな音が漏れたけれど、それきり声は出せなかった。

ぎゅっと身を縮こませる。

ダリアのものらしき悲鳴が耳に届くと同時に、体が地にたたきつけられる衝撃を覚えた。



「い……った」



打った場所がビリビリして熱い。

そこは木の板を雑に並べただけの床、同様の壁に囲われた、茶室より一回り狭い空間だった。

扉が見えるので、どこかに繋がっているようだ。

打ったらしい腰と肩を擦りながらなんとか体を起こす。

さきほどまで使っていた茶碗などが散乱し、すぐ傍にはダリアも倒れている。



「ダリア、大丈夫!?」


「イベリス……王女様」



苦悶の表情を浮かべつつも、ダリアも体をゆっくり起こした。

とりあえず命に関わる怪我は無いようだとホッとする。



「一体何が……」



ダリアが戸惑ったように上を見上げるけれど、天井はもう閉ざされていた。

紐を引っ張って落とし穴ってどんなからくり茶室なのよ……!

流石にこれは予想だにしていない。

完全に閉鎖されたこの空間は暗く、壁際に置かれた蠟燭だけが頼りない光源だった。



「よく来てくださいました。王女殿下」



そう声をかけられて振り返ると、そこには春幸様が立っていた。

その手には誰かを引きずっている。

大柄なシルエットにピンときた。

……日野晴様だ。

大の男の後ろ襟をつかみながら、春幸様は穏やかな笑みを浮かべたまま。

場違いなその表情に、背筋を冷たいものが伝う。



「……まさか、貴方が全部画策したことなんですか?雪音様まで唆して……」


「唆したとは人聞きの悪い。雪音は私と利害が一致しただけですよ」


「利害?……貴方は何を求めているの?」


「当然、将軍の地位です。本来であれば私が継ぐはずだったというのに……あのルアーとかいう男が出てきたせいで話がこじれました。そうでなければコレが余計な企みを抱くこともなかったでしょう」



吐き捨てるように言いながら、春幸様は放り投げるようにその手を離す。

鈍い音を立てて転がったその人は低いうめき声を漏らすだけ。

その顔を見てやはり日野晴様だと確信できたけれど、彼の額には脂汗が浮き、腹のあたりには着物にべったりと赤い染みが広がっている。

ダリアが悲鳴を上げ、私も体を硬直させるしかなかった。

そんな私達を満足げに見て、春幸様は私に一歩近づく。



「あの男は私のことが気に食わないようです。お互い様ではありますが……後継者に選ばれないのは困るんですよ」



こんなことをしなくても、アルは春幸様を選ぶと言っていたのに……

けれどそんなことは決して言ってやるものかと唇を噛んだ。



「そこで考えたのです。一番手っ取り早い方法は、貴女を妻に迎えることなのではと」


「……え?」



何て言った?



「もしあなたが私の子供を身ごもることがあれば、グラジオラス王国は私を将軍に推挙するしかなくなります。王女の夫となる人間ですからね」


「は……!?そんなことをしたらアル……ルアー様は!」


「あの男はグラジオラスの者なのでしょう?あの容姿を見れば明らかです。貴女のことを大切にしている姿と腕が立つことを見れば、護衛騎士というものなのだと察するのは簡単でした」



自信満々に不正解を口にしてくる。

この人、本当に頭がいいんだろうか。

一介の護衛騎士がこの国を襲って王子の肩書をもぎ取るなんて意味が分からない。

どう考えてもイレギュラーな存在だと、何で分からないのか。



「グラジオラスの騎士ならば、私を殺せないはずです。私の子を宿した貴女が一人残されれば、貴女の経歴には傷がつくだけ。他に嫁の貰い手も無いでしょう。私の元に嫁ぐしか、貴女の幸せは守られない」



いや、何でそれなら私の幸せが守られるみたいな話になるの?

自分のことを襲った男の元に嫁いで幸せな訳が無い。

しかも大前提が間違っている。

アルの性格を見誤りすぎだ。

そんなことをすれば即刻殺されるだけ。

ついでに暴走して私も殺されるかもしれない。

誰も幸せにならない計画を立ててくれたものだ。

しかしまさか私がそんな理由で絶句しているのだとは思ってもみないらしい春幸様は笑みを深めるばかり。


不意に大きな手がこちらに伸びてきて、私の襟を乱暴に掴む。

その瞬間にフラッシュバックするのは思い出したくない光景だ。

複数の男たちから伸ばさられる手。

ぐらりと視界が揺れて吐き気が込み上げる。

また、この薄暗い地面の上に押し倒され、好きでもない男の手が肌に触れるのだろうか。

カチカチと歯が震えて微かな音を出す。

しかし私の意識が途切れかけた時、色を失った視界に赤い色が灯った。

開かれた襟の隙間から覗く白い肌に浮かぶその色は、好きな人につけられたものだ。

花が咲いたようなその鮮やかな赤とともに、アルの声が耳を掠めたような気がした。


『不安になることがあれば、これを思い出してください。お守りです』


じわりと、恐怖とは違う涙が浮かぶ。

ああ、本当にお守りだ。

潤む瞳で目の前の男をにらみつけ、力が戻った体をよじり、不快な手を振り払った。

私の抵抗を面白くなさそうに見つつも、思ったよりあっさり手を離される。



「自分の立場がお分かりではないようですね。流石にあの男でもこの場所はそうそう見つけられないはず。あまり乱暴にしたくはないので諦めていただきたいのですが、どうしても抵抗するというのなら……」


「お待ちください!」



春幸様がまた手を伸ばしかけた時、そう叫んだのはダリアだ。



「そのような蛮行、我が国が許すとお思いですか!?貴方が将軍になるなどもってのほかです!戦となりますわよ!」


「王女殿下には正式な婚約者がいないと聞いています。あの男もしょせんは非公式の恋仲、あるいは何かの偽装工作でしょう?女を娶ったくらいで戦争を起こすなど正気ではない」


「何を……」



春幸様もダリアも、互いに『何を馬鹿なことを』と言わんばかりの表情だ。

……私は、何となくどちらの言い分も分かってしまった。

当然、私の感覚やグラジオラスの常識からすればダリアの言が正しい。

それこそ正式な婚約も無く、他国の王族に手を出せば戦の元。

しかし、竜胆国には夜這い文化がある。

いつだったかダリアが城下町に用事があると言って参加しなかったお茶会の時に、雪音様が少し話してくれたのだ。

子供がいる場では話しづらい、この国の結婚や婚前交渉の話になった時、夜這いにまで話が及んだ。


昔の日本でも意中の姫の元に通い、結婚前から手を出すことはあった。

流石に合意なく行くのは非常識だったと聞いた気がするけれど、それでも現代の感覚よりはかなり寛容で、男性が強引な手に出て嫁に貰うということはあったそうだ。

親は当然怒るんだけど、他に嫁の貰い手が無くなってしまうので最終的に許すしかないと。

竜胆国における夜這いも似たようなもののようで、この国の滞在中にそういうことが起きないとも限らないと忠告を受けたことがあったのだ。

まさか忠告してくれた雪音様本人に嵌められるとは思わなかったけれど。

こんな文化が古くからあるのならば、これが原因で大きな戦争に発展すると言う発想は本当に春幸様には無いのかもしれない。

言ってしまえば手を出したもん勝ち。

守れない方が悪い。

そして手を出す男が複数いた時、護衛騎士と将軍候補ならば自分の方が身分が上で、自分が優先されると、そう思っているのだ。


一体どこから説得すればいいのか、説得を聞いてくれるのか。

頭痛がしてきた。

しかしダリアの顔を見て春幸様は溜息をつき、踵を返した。



「興が削がれました。よく考えれば貴女は高貴な身分の女性です。このような場所というのはいくらなんでも気の毒でしたね。その娘は見届け人としては不適切のようですし……邪魔者がいない場所を用意しましょう。それまでに覚悟を決めておいてください」



勝手なことを言い残し、春幸様は出て行った。

足音が去っていくのを確認してから、ようやく体の力が抜ける。



「イベリス王女様……!」



抱き着いて来たダリアの目には涙が浮かんでいた。



「ダリア、助けてくれてありがとう。怖い思いをさせってごめんなさいね」



そう言って涙を拭うけれど、次々雫をこぼしながら、ダリアは首を振った。



「お、お逃げください!やはり竜胆国は酷い国でした……イベリス王女様がこのような目に合うなど許されませんわ」



嗚咽交じりに訴える少女の頭を撫でて、溜息をつく。

こんな子供の前でとんでもない話をしてくれたものだ。

逃げたいのはやまやまだけれど、おそらくこの場所は地下。

壁や床の板の向こうは土壁だろう。

天井は普通の建物より低いとはいえ背伸びをしても届きそうにない。

届いたところで開けられるとも思えなかった。

じゃあ扉はというと、流石に私たちのような女性の細腕で開けられるようになってはいないだろう。

体当たりでもすれば何とかなるかもしれないけど……

けれど脱出より先に、人としてすべきことがある。



「ダリア。まずは人命優先よ」



正直、王女としては何を差し置いても逃げ出すべき事態だろう。

けれど私にはそれほど不安は無かった。

胸元のお守りを思い出したおかげで、いくらか冷静になれたのだ。

アルが本当に出し抜かれているはずはない、と。

城内は全て把握したと言っていたアルが、この地下を見逃しているとは思えない。

もし見逃していたとしても、事態は把握できていると思う。

だとすれば、目の前で怪我をしている人をまず治さなければ。



「日野晴様、大丈夫ですか!?」



倒れている彼に駆け寄る。

着物の腹部が真っ赤だ。

手で押さえているあたりが出血元だろう。

そこの治療をしたいけれど、手でがっしり押さえられていて外せない。

意識はろくにないようなのにすごい力だ。



「日野晴様、手を……」


「ひの……はる?」



私の呼びかけを掠れた声で繰り返しながら、うっすら開いた目が私を見る。



「聞こえますか?治療をしますので手を離してください」


「……手を、離せば……血が吹き出すやも知れませぬ」


「それでもずっとこのままと言うわけにはいきません!私は回復魔法が使えます。あまり上手くはありませんが、何もしないよりはマシなはずです」



手の上からでも魔法を使えたら良いんだけど、私の回復魔法は弱い。

アルから指導を受けてだいぶ上手くはなったれどそれでもまだまだ。

患部を直接見ながら魔法を使うことは、効果を高めるために必須だ。

日野晴様は少し迷ったようだけれど、震える手をそっとどけてくれた。

血まみれの着物を急いで脱がせる。



「ひどい……」


「ひっ……」



思わず私はそう声をもらし、後ろでダリアが悲鳴を上げた。

血で真っ赤になっていて分かりにくいけれど、腹部が深い穴が開いている。

これが刀によるものなのだとしたら、もしかしたら貫通しているのかも知れない。

……内臓にまで傷が達しているだろうか。

そうなると私の魔法ではどこまで効果があるか……


この半年、怪我をした騎士達を相手に回復魔法の練習をしてきた。

それでもこれほどまで酷い怪我は見たことがない。

むっとした血の匂いに吐き気が込み上げてくる。

私ですらこれなのだから、血すら見慣れていないはずのダリアは尚更きついだろう。



「ダリア、座っていなさい。気を失うと危ないわ。壁に背を預けて座るのよ」



立ったまま気を失えば頭を強く打つ。

今はダリアの世話まで焼いている余裕がない。

私の言葉におとなしく従い、ダリアはだまって後ずさり、壁のそばにへたりこんだ。

いっそ横になっていた方が安心なんだけど、それはそれで抵抗があるだろう。

あの体勢なら倒れてもまず肩がぶつかるので頭は打ちにくいはず。

このあたりは私が貧血気味だった時にアルに言われた注意事項だ。

下手に椅子に座ると転げ落ちて危ないから地べたの方がいいと。

王女が地べたはダメだとマーヤが反論していたけれど、安全性には変えられないと思う。

ダリアから日野晴様へと視線を戻し、傷口に手をかざした。



「まずは……内臓」



正直この状態で、どこがどう傷ついているのか把握できるほど私は医療に精通していない。

けれど魔法で重要なのはイメージだ。

本当はどの臓器がどう傷ついていて、どう治せばいいのかまでイメージできるのが一番らしいのだけれど、そこまでは難しい。

体の内部の傷ついた臓器、そして特に太い血管を塞ぐよう強くイメージする。

焦ってはダメ。

大きい怪我だからと魔力を広げてもうまく効果は出てくれない。

細い糸を繰り出して、壊れた細胞を繋ぎ合わせるように繊細に。

これほど集中が必要な治療をするのは初めてで、すぐに額から汗が噴き出す。



「……あたたかい」


「もう少しっ……頑張ってくださいね!」



そう声をかけながら魔法をかけ続けた。

時間当たりの回復量は低くても、持ち前の魔力の多さで継続力はそれなりにある。

集中力が必要なのでかなり辛いが、日野晴様の表情は目に見えて和らいでいく。

そしてようやく表面まで塞がり始めた頃には、私の頬にはいく筋もの汗が伝っていた。

髪が頬に張り付いて気持ち悪い。

着物の中も汗だくだ。

冬だというのにここまで汗をかくことになるとは。



「……もう十分です。驚くほど痛みが引きました故」


「でも、まだ表面はほとんど……」


「出血はずいぶん止まりました。これ以上は貴女の方がお倒れになります」



そう言って起き上がると、彼は血で染まった地面に額を擦り付けるようにして平伏した。



「命を助けていただき、ありがとうございました」


「やめてください、まだ怪我も塞がりきってないんですよ!?」



せっかく塞いだ傷が開いたらたぶん怒りを通り越して悲しくなる。

そんな私の気持ちが伝わったか、すぐに立ち上がってくれた。

額にうっすら土と血の跡がついている。

そしてその瞳が険しく釣り上げられた。



「日野晴に礼をせねばなりませぬ」



歯噛みしながらそう言う男性を、しばしポカンと見つめた。

え?



「日野晴って貴方では……」



私の言葉に、今度は彼がポカンとする。

数秒の沈黙の後、苦笑された。



「そういえば先ほども某のことを日野晴と……自己紹介をしておらぬままにございましたな。某の名は春幸と申す」



……え?



「ええ!?じゃあ……あの眼鏡をかけている人は……」


「それが兄の日野晴です」



私は完全に二人を逆に認識していたらしい。

確かに二人とは結局まともに話せておらず、互いに自己紹介もしていない。

アルはどちらの話をしても嫉妬しそうだったのでほとんど話題にしていないし、雪音様やダリアとの会話でもたまに話に上がるだけで私の誤解を解くには至らなかった。



「……日野晴様は武術に長けていると……」


「おっしゃる通りです。某もこの通り鍛えてはおるのですが、兄には敵いませぬ。刀も弓も、兄はこの城で一番の使い手です」



なんという外見詐欺。



「そうなんですか……眼鏡をかけていたのでてっきりあの方は学問の方がお好きなのだと……」


「ああ、兄は目が良すぎるのか、裸眼のまま活動していると情報が多くて疲れるなどと申しまして、普段はああして周囲がぼやける眼鏡をかけているのです。それを外せば遠くの的もよく見えるそうで、狩りの腕も相当なものですよ」



まさかの目が良すぎる側。

と、いうことは目の前の大男が……知力に長けている次男……

じっと見つめると居心地悪そうに視線を逸らされた。



「我らの得手に関する情報のみお持ちだったのであれば、見目で勘違いなさるのも致し方ないこと。ご承知の通り、我が国では長らく武力を重視しておりましたので、某も鍛錬は欠かしておらぬのです。ハッタリには十分だと家臣達は慰めてくれますが」



いや、体格ももちろんそうなんだけど……



「失礼ですが、お年は……」


「年が明ければ二十五に成り申します」



数え年というやつなのだろうか。

どちらにしろ二十代半ば……



「日野晴様は?」


「某とは十離れております」



……春幸様が老けて見えるのは髭の影響が大きいと思うので納得できるけれど、日野晴様は素で若く見えすぎる。

混乱の元だわこんなの。



「日野晴は女顔ですので若く見えますでしょう。しかし本人は気にしておるようですので口にされない方がよろしいかと」



女顔だから若く見えるという謎論理はさておき、人のコンプレックスをいじる趣味はないので心に留めておこうと思う。

ご覧いただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ